2018年2月5日、関節リウマチ治療薬「ケブザラ皮下注150mg・200mgシリンジ」が発売されました
(旭化成ファーマwebサイトより)
販売名 | ケブザラ皮下注150mg・200mgシリンジ |
名前の由来 | 特になし |
一般名 | サリルマブ(遺伝子組換え) |
会社名 | サノフィ(株) 発売元:旭化成ファーマ(株) |
薬効 | 抗IL-6受容体抗体 |
効能・効果 | 既存治療で効果不十分な関節リウマチ |
用法・用量 | 1回200mg 2週間隔で皮下投与 患者の状態により1回150mgに減量 |
薬価 | 150mg1.14mL1筒 45,467円 200mg1.14mL1筒 60,329円 |
販売は旭化成ファーマ
製造販売元はサノフィですが、流通・販売・文献請求は旭化成ファーマです。
旭化成ファーマさんは関節リウマチ領域初参戦ですかね。
でも骨粗鬆症領域のお薬は色々持っているので(テリボンとかリクラストとか)、整形外科へのルートは持っているような気がします。
ちなみにサノフィは一応コ・プロモーションする模様。1)
まだ自己注射はできません
2017年9月にシリンジ製剤とオートインジェクター製剤で承認を取っているのですが、今回発売されるのはシリンジ製剤のみです。
これは14日処方制限解除後に在宅自己注射の対象になるからだと思われます。4)
在宅自己注射の対象薬剤に係る運用基準(平成28年8月24日中医協総会において承認)及び学会からの要望書等を踏まえ、ヒト型抗ヒトIL-6受容体モノクローナル抗体である「サリルマブ(遺伝子組換え)製剤」(中略)について、在宅自己注射指導管理料の 対象薬剤に追加することとしてはどうか。
なお、「サリルマブ(遺伝子組換え)製剤」については、2週間隔で皮下投与を行うものであるため、14日を超える投薬が可能になった後に在宅自己注射指導管理料の対象薬剤に追加することとしてはどうか。
ケブザラ製品サイトのFAQでも、自己注射の対象じゃない旨が記載されています。8)
件名
【ケブザラ】ケブザラは、「在宅自己注射指導管理料」の算定対象薬ですか回答
現在は、本剤は在宅自己注射指導管理料の算定対象ではありません。
作用機序はアクテムラと一緒
個人的には「アクテムラの新しいの出たよー。」と思っています。
違うのは、アクテムラがヒト化抗体なのに対して、ケブザラは完全ヒト型抗体ってところ位ですかねぇ…。
臨床上でどれほど問題になるかはわかりませんが、より安全性の高いクスリが使いたい!という場合は、ケブザラも選択肢に上がるかもしれません。
適応はアクテムラの方が広いので、全面切替は無理ですが…。
ちなみにIgGのサブクラスは、どちらもIgG1でした。
注意すべき有害事象(RMP)
リスク | リスク最小化活動の内容 | |
重要な特定されたリスク | 重篤な感染症 | 添付文書に記載して注意喚起 「医療関係者向け資材」の作成・配布、適正使用に関する納入前の確実な情報提供 |
腸管穿孔 | ||
アナフィラキシー等の重篤な過敏症反応 | ||
間質性肺炎 | ||
B型肝炎ウイルスの再活性化 | ||
好中球減少、白血球減少、無顆粒球症 | ||
血小板減少症 | ||
肝機能障害 | ||
重要な潜在的リスク | 悪性腫瘍 | 添付文書に記載して情報提供 「医療関係者向け資材」の作成・配布、適正使用に関する納入前の確実な情報提供 |
免疫原性 | ||
重要な不足情報 | なし | - |
「重要な特定されたリスク」はアクテムラとほぼ一緒ですね。
肝機能障害の部分だけちょいと違いまして、アクテムラは「潜在的リスク:肝機能異常」なのに対し、ケブザラは「特定されたリスク:肝機能障害」になっています。
なんで違うのかは不明ですが、ケブザラは臨床試験で肝機能検査値異常が認められていることから、「特定されたリスク」としたようです。
「潜在的リスク」は現状ケブザラの方が少ないですが、ゆくゆくは追加されるかもしれないので、アクテムラに記載があるリスクは注意しておいた方が良いかと思います。
ちなみにアクテムラにしかない「潜在的リスク」は、「脱髄関連疾患」「心障害・心不全」「胸膜炎」です。
RMPに基づく適正使用資材(適正使用ガイド)は、旭化成ファーマのwebサイトで公開されています。
参考 ケブザラ適正使用ガイド[PDF]旭化成ファーマ(医療従事者用)雑談:新医薬品と在宅自己注射
在宅自己注射の対象薬剤に係る運用基準は、現状以下のとおりです。5)
[在宅自己注射の対象薬剤に係る運用基準]
1. 対象薬剤
補充療法等の頻回投与又は発作時に緊急投与が必要で、かつ、剤形が注射によるものでなければならないもので、以下のいずれも満たすもの。(1)関連学会等のガイドライン等において、在宅自己注射を行うことについての診療上の必要性が確認されているもの
(2)医薬品医療機器法上の用法・用量として、維持期における投与間隔が概ね4週間以内のもの
(3)上記を踏まえ、在宅自己注射指導管理料対象薬剤への追加の要望があるもの2. 対象への追加時期
(1)新医薬品のうち、14日未満の間隔で注射を行う医薬品については、1.の内容を満たす場合は、原則、薬価収載の時期に合わせ対象薬剤に追加することを検討する。(2)新医薬品のうち、14 日以上の間隔をあけて注射を行う医薬品については、原則、投与期間が 14 日間と制限されていることを踏まえ(※)、事実上、14 日以内毎に医療機関を受診することとなるため、14 日を超える投薬が可能になった後に、在宅自己注射指導管理料の対象薬剤に追加することを検討する。
※ 新医薬品については、原則、薬価への収載の日の属する月の翌月の初日から起算して1年が経過するまでの間、投薬期間が14日に制限される
ケブザラは上記2-(2)に該当するので、今回在宅自己注射の対象薬剤への追加は見送られています。
そのため、自己注射用デバイス(オートインジェクター)は薬価収載が延期されたのでした。
オートインジェクターのお目見えは、2018年12月以降になるかと。
ちなみに、自己注射できる薬剤は「保険医が投与することができる注射薬」として定められています。
療担規則及び薬担規則並びに療担基準に基づき厚生労働大臣が定める掲示事項等
第十 厚生労働大臣が定める注射薬等
一 療担規則第二十条第二号ト及び療担基準第二十条第三号トの厚生労働大臣が定める保険医が投与することができる注射薬
法定等データベースで見られるので、気になる方はどうぞ。
http://www.sanofi.co.jp/l/jp/ja/download.jsp?file=771BEBAA-3B46-4A8F-BD89-1D5A19D9B5B5.pdf.
2)審査報告書, PMDA,
http://www.pmda.go.jp/drugs/2017/P20170929001/780069000_22900AMX00958_A100_1.pdf.
3)ケブザラ皮下注150mg・200mgシリンジ, 添付文書, インタビューフォーム.
4)中央社会保険医療協議会 総会(第370回)資料「保険医が投薬することができる注射薬(処方せんを交付することができる注射薬)及び在宅自己注射指導管理料の対象薬剤の追加について(案)」, 厚生労働省, http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000184638.pdf.
5)中央社会保険医療協議会 総会(第335回)資料「在宅自己注射指導管理料の対象薬剤の追加に係る今後の対応について(案)」, 厚生労働省, http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000134415.pdf.
6)RMP, PMDA, http://www.pmda.go.jp/files/000222258.pdf.
7)アクテムラ皮下注162mgシリンジ・オートインジェクター, RMP PMDA, http://www.pmda.go.jp/files/000220542.pdf.
8)ケブザラ製品サイト, 旭化成ファーマ(株), http://www.kevzarahcp.jp.