新薬雑感:アレサガテープ

まずは基本情報

販売名 アレサガテープ4mg・8mg
名前の由来 特になし
一般名 エメダスチンフマル酸塩
会社名 久光製薬(株)
薬効 ヒスタミンH1受容体拮抗薬
効能・効果 アレルギー性鼻炎
用法・用量 1回4mg 胸部、上腕部、背部又は腹部のいずれかに貼付
24時間毎に貼り替える
症状に応じて1回8mgに増量可能

アレサガってこういうくすり

  • 国内初の経皮吸収型アレルギー性鼻炎治療薬
  • レミカットのテープ剤
  • 1日1回1枚貼付

アレサガは国内初の経皮吸収型アレルギー性鼻炎治療薬です。
1993年に発売されたレミカットと同じ成分のテープ剤で、1日1回貼付します。

貼付部位は、胸部、上腕部、背部または腹部。
腰部は他と比較してCmaxおよびAUCが低い傾向があったので、貼っちゃダメですよ。2)

あと半減期は意外と長いです。
14日間反復貼付後、最終剥離時からのt1/2は4mg剤で15.5±2.4時間、8mg製剤で15.5±1.6時間なので、剥がしてもすぐに効果が無くなるというわけではなさそうです。2)

 

レミカットから四半世紀後、エメダスチンがテープ剤として再登場するとは、誰が予想できただろうか…(オープニング風)

既存薬と違う点は?

レミカットと違う点は?

アレサガはレミカットと比べて…

  • 服薬回数が少ない
  • 朝食後・就寝前投与などの制限がない
  • [注]適応はアレルギー性鼻炎のみ

同じ有効成分のレミカットと比較したアレサガの良い点は、1日の服薬回数が少ないところです。

レミカットが1日2回朝食後・就寝前なのに対し、アレサガは自分の決めた時刻に貼付することができます。
インタビューフォームにも、以下のような記載がありますね。3)

アレサガテープは経皮吸収型製剤であることから、血漿中薬物濃度を維持することが可能であり1日1回の服薬で24時間安定した効果が期待できる。
嚥下能力が低下した患者や誤嚥リスクのある患者へも投与可能であること、患者の服薬状況が家族及び介護者にも目視で確認できること(貼付忘れや過剰投与の防止)、食事による投与タイミングの制限はないこと、及び服薬回数が1日1回であることによる服薬アドヒアランス向上などが期待できる。

なお、成分が一緒なので、慎重投与・相互作用は同じです。
禁忌はアレサガのみ「本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者」の記載があります…が、レミカットに無い理由は不明です。古い薬剤だからかな…?

一方、適応はアレサガの方が狭く、アレルギー性鼻炎のみですにしか使えません。

販売名
(成分名)
アレサガテープ4mg・8mg
(エメダスチン)
レミカットカプセル1mg・2mg
(エメダスチン)
剤形 経皮吸収型製剤 徐放性カプセル剤
適応 アレルギー性鼻炎 アレルギー性鼻炎、蕁麻疹、湿疹・皮膚炎、皮膚そう痒症、痒疹
用法(成人) 胸部、上腕部、背部又は腹部のいずれかに貼付
24時間毎に貼り替える
1日2回 朝食後・就寝前
用法(小児) 適応なし 適応なし
腎機能障害患者への投与 - -
肝機能障害患者への投与 慎重投与 慎重投与
高齢者への投与 - -
自動車運転 禁止 禁止

※眠気を催すことがあるので、本剤使用中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作には従事させないよう十分注意すること。

ザイザルと違う点は?

アレサガはザイザルと比べて…

  • 就寝前投与などの制限がない
  • 高齢者や腎機能低下患者が慎重投与とされていない
  • [注]適応はアレルギー性鼻炎のみ
  • [注]小児適応がない

ザイザルと比較したアレサガの良い点は、投与時刻の制限が無く、腎機能障害患者にも使いやすいところです。

アレサガは貼付後24時間安定して薬剤を放出し、血中濃度を治療域に保つ製剤です。
よって、ザイザルのように就寝前など投与時刻に制限はなく、毎日自分の決めた時刻に貼付することができます。
(とはいってもザイザルの投与時刻は臨床試験の設定に準じただけなので、就寝前じゃないとダメな薬学的理由はないのですが…5)

また、ザイザルは腎排泄される薬剤なので、腎機能が低下している人や高齢者は、慎重投与となっています。4)
一方、エメダスチンは主に肝臓で代謝を受ける薬剤なので、腎機能障害患者や高齢者は慎重投与とされていません。

ただしアレサガの適応はザイザルよりも狭く、皮膚疾患への適応も小児適応もありません

販売名
(成分名)
アレサガテープ
(エメダスチン)
ザイザル錠・シロップ
(レボセチリジン)
適応 アレルギー性鼻炎 成人:アレルギー性鼻炎、蕁麻疹、湿疹・皮膚炎、痒疹、皮膚そう痒症
小児:アレルギー性鼻炎、蕁麻疹、皮膚疾患(湿疹・皮膚炎、皮膚そう痒症)に伴うそう痒
用法(成人) 胸部、上腕部、背部又は腹部のいずれかに貼付
24時間毎に貼り替える
1日1回 就寝前
用法(小児) 適応なし 6ヵ月以上1歳未満:1日1回
1歳以上15歳未満:1日2回 朝食後及び就寝前
腎機能障害患者への投与 - 慎重投与(重度腎機能障害は禁忌)
肝機能障害患者への投与 慎重投与 慎重投与
高齢者への投与 - 慎重投与
自動車運転 禁止 禁止

※眠気を催すことがあるので、本剤使用中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作には従事させないよう十分注意すること。

参考)第2世代抗ヒスタミン薬まとめてみた

現在使える第2世代の抗ヒスタミン薬(内用剤のみ)をまとめてみました。6),9)~12)

第2世代抗ヒスタミン薬は、系(骨格)によって薬理作用などが似通っているとされており、ひとつの系で改善がみられないときは、別の系に変更すると効果がみられることがあります。9)

なので、もし三環系、ピペラリジン/ピペラジン系の薬剤で症状の改善がみられなかった場合は、エメダスチンを使ってみても良いかと思います。
(アレサガじゃなくてレミカットでも良いのですが…)

主な第2世代抗ヒスタミン薬(内用剤)の一覧(2019年2月現在)

成分名 代表販売名(初収載年) 後発品 OTC医薬品
三環系
ケトチフェン ザジテン(1983年) あり 第2類
アゼラスチン アゼプチン(1986年) あり 第2類
エピナスチン アレジオン(1994年) あり 第2類
オロパタジン アレロック(2001年) あり -
ロラタジン クラリチン(2002年) あり 要指導
デスロラタジン デザレックス(2016年)  - -
ルパタジン ルパフィン(2017年)  - -
ピペリジン/ピペラジン系
オキサトミド セルテクト(1987年) あり -
エバスチン エバステル(1996年) あり 第2類
セチリジン ジルテック(1998年) あり 第2類
フェキソフェナジン アレグラ(2000年) あり 要指導(小児)・第2類
ベポタスチン タリオン(2000年) あり 要指導(未発売)
レボセチリジン ザイザル(2010年) - -
ビラスチン ビラノア(2016年) - -
その他
メキタジン ゼスラン/ニポラジン(1983年) あり 第2類
エメダスチン レミカット(1993年) あり -

 

注意しておきたいことは?

注意
傾眠(重要な特定されたリスク)

注意すべき有害事象(RMP)(2019.2.21追記)

リスク リスク最小化活動の内容
重要な特定されたリスク 傾眠 添付文書(重要な基本的注意、副作用)、患者向医薬品ガイドで注意喚起
重要な潜在的リスク なし -
重要な不足情報 なし -

傾眠

本剤は比較的眠気を催しやすい薬剤であることから、添付文書の重要な基本的注意に以下のように記載されています。

  • 眠気を催すことがあるので、本剤使用中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作には従事させないよう十分注意すること。
  • 日常生活に支障がみられる場合があるので、本剤使用に際してはこのことを患者に十分説明しておくこと
  • 4mg使用時と比べ、8mg使用時に眠気の発現率が高い傾向があるため、眠気等の発現に特に注意すること。
 臨床試験 傾眠の有害事象発現数3)
第3相投与試験
対象:季節性アレルギー性鼻炎患者
投与期間:2週間
本剤4mg投与群(384例):傾眠(13例)
本剤8mg投与群(381例):傾眠(18例)
第3相長期投与試験
対象:通年性アレルギー性鼻炎患者
投与期間:12週間以上(最長52週間)
本剤4mg投与群(124例):傾眠(8例)
本剤8mg投与群(124例):傾眠(13例)

 

まとめ

本剤投与が有用な患者像

  • 水分摂取量を出来る限り減らしたい患者
  • 服薬状況を目で見て確認したい患者
  • 薬を飲むのが嫌いな患者
りんご
家族や介護者が服薬管理している患者には有用かも。

正直有効成分には特に魅力を感じないので、メリットは剤形から来るものかと思います。
経皮吸収型製剤のメリット・デメリットには、以下のようなものがあります。13)

■ メリット

  • 薬物成分は皮膚からゆっくり吸収されて持続的に効果を発揮する
  • 薬物のバイオアベイラビリティ(生物学的利用率)が高められる
  • 安定的な有効血中濃度領域を長時間維持できる
  • 効果の変動が起きにくく副作用の軽減が期待できる
  • 注射剤のような専門的手技を必要としないので使用が簡便
  • 目で見て服薬を確認できる

■ デメリット

  • 人によって皮膚のかぶれなどの皮膚症状を発症することがある
  • 剥がし忘れることがある

これを勘案すると、例えば腎臓が悪い人や誤嚥リスクがある人など、OD錠を嚥下する水分をも減らしたいような場合は、テープ剤の意義はあるかなぁと思います。

また、テープ剤は「今」使っているかが誰の目から見てもわかるため、くすりを飲むのを忘れがちな人や、患者以外の人が服薬管理をしている場合は有用かもしれません。

薬を飲むのが嫌いな人でもテープ剤ならOKな場合もあるので、試してみる価値はあるかもです。
個人的な経験では、アリセプトを服薬拒否していた人で、リバスタッチならOKという方がいらっしゃいましたねぇ。
良くも悪くもテープは薬感が少ないので、活用できるところでは活用したいところです。

類薬の投与を検討すべき患者像

  • 上記以外の場合
みかん
むしろOTC薬で良いんじゃないかな。

もうアレグラもアレジオンもエバステルもクラリチンもザジテンもジルテック(セチリジン)もOTCになってますし、アレルギー性鼻炎と診断されている人は、個人的にはOTC薬が第一選択で良いと思います。

主な第2世代抗ヒスタミン薬(OTC医薬品)の一覧(2018年2月現在)

成分名 主な販売名 リスク区分
三環系
ケトチフェン ザジテンAL鼻炎カプセル 他 第2類
アゼラスチン スカイナーAL錠、ムヒAZ錠 他 第2類
エピナスチン アレジオン10 他 第2類
ロラタジン クラリチンEX・OD錠 要指導
ピペリジン/ピペラジン系
エバスチン エバステルAL 第2類
セチリジン ストナリニZ・ジェル、コンタック鼻炎Z 第2類
フェキソフェナジン アレグラFX 他
アレグラFXジュニア
第2類
要指導(小児)
ベポタスチン タリオンR、タリオンAR(未発売) 要指導
その他
メキタジン ポジナールM錠、ストナリニ・ガード 他 第2類

花粉症初期とインフルエンザのシーズンがかぶっているので、インフルじゃない花粉症患者が医療機関を受診するのって、そこそこ感染リスクがあると思うんですよね。
しかも病院も薬局も混んでいますし。
OTCで事足りるなら、OTCを使うのも一案です。

いつも病院でもらっている成分のOTCがあるならそれでも良いし、無い場合は薬剤師に相談したら一緒に選んでくれるはず!

 

というわけで、がんばってひねり出してみました。
アレサガの評価はさておき、久光さんの「テープですべてを解決する」スピリットは個人的にとても好きです。
高齢社会の折、薬剤師として提案できる薬剤の幅が広がりますしね。
海の向こうではシクレストのテープ剤も開発中のようですし14)、この調子で全薬効色々取りそろえてくれたら面白いことになりそうですね!

雑談:第3相試験でのザイザルの位置づけについて考える

アレサガの第3相試験結果を見る際に注意したいところは
「レボセチリジン群とは、優越性も非劣性も検証されていない」
という点です。

インタビューフォームのP.11~12あたりに記載されているのですが、レボセチリジン塩酸塩錠5mg群はあくまで「参照薬」なんですよね。
なので、統計学的な比較対照群ではありません。

なのに審査報告書では「レボセチリジン塩酸塩と比較して有効性が大きく異なる傾向は示唆されなかった。(7.R.1 有効性について)」と記載が。
安全性についても「レボセチリジン群と比較して、本剤群の傾眠の発現率は高い傾向が認められている。(7.R.2 安全性について)」と記載されています。

某脂質異常症治療薬に比べて、PMDAの審査官が優しい気がするのは、私の気のせいでしょうか…。
それとも「示唆」や「傾向」という表現は、直接比較せずとも使って良いのでしょうか。
個人的にはとってもモヤモヤします。

この辺詳しい方にご教示いただきたいです…!
「アレサガはザイザルと同じくらい効きます~」と言うのはNGですよね。きっと。

抗うつ剤は参照薬を設定することもあるようですが15)、抗アレルギー剤で直接比較せずに参照薬を設定する意義が、私にはわかりませんでした。
もしメーカーさんに会えたら「なんでレボセチリジンを比較薬ではなく参照薬に設定したんですか?」と聞こうと思います。

他の薬剤師さんは、アレサガのことどう思ってるの?

おまえの意見はわかった。他の意見が知りたい。という方は、こちら!
スーパーステキ薬剤師さんがアレサガについてブログに書かれています。
とてもわかりやすいのでゼヒゼヒご覧くださいませ。
これであなたもアレサガマスター!

 

参考文献
1)経皮吸収型アレルギー性鼻炎治療剤「アレサガテープ(開発コード:HP-3060)」の国内製造販売承認取得のお知らせ, 久光製薬(株), http://www.hisamitsu.co.jp/company/pdf/news_release_180119.pdf.
2)審査報告書, PMDA, http://www.pmda.go.jp/drugs/2017/P20171204001/650034000_23000AMX00001_A100_1.pdf.
3)アレサガテープ4mg・8mg, 添付文書, インタビューフォーム.
4)ザイザル錠5mg・シロップ0.05%, 添付文書.
5)ザイザル錠5mg 審査報告書, PMDA, http://www.pmda.go.jp/drugs/2010/P201000063/34027800_22200AMX00949_A100_1.pdf.
6)浦部昌夫他編, 今日の治療薬2017, 南江堂.
7)ベポタスチンベシル酸塩錠10mg「タナベ」, インタビューフォーム.
8)要指導医薬品一覧, 厚生労働省, http://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/ippanyou/newyoushidou.html.
9)黒野祐一, 鼻アレルギー診療ガイドライン-通年性鼻炎と花粉症-2016年版(改訂第8版)-抗ヒスタミン薬使用のポイント-, https://www.jstage.jst.go.jp/article/arerugi/65/8/65_982/_pdf.
10)ビラノア錠20mg 第2部(モジュール2):CTDの概要(サマリー), PMDA,
http://www.pmda.go.jp/drugs/2016/P20161025003/400107000_22800AMX00690000_H100_1.pdf.pdf.
11)ニポラジン錠・小児用シロップ・小児用細粒, インタビューフォーム.
12)ルパフィン錠10mg, インタビューフォーム.
13)経皮吸収型製剤使用マニュアル, トーアエイヨー(株), http://med.toaeiyo.co.jp/contents/tape-manual/index.html.
14)経皮吸収型統合失調症治療剤(HP-3070)の米国第3相臨床試験結果のお知らせ, 久光製薬(株),
http://www.hisamitsu.co.jp/company/pdf/news_release_180131.pdf

15)「抗うつ薬の臨床評価方法に関するガイドライン」について, 平成22年11月16日薬食審査発1116第1号, https://www.pmda.go.jp/files/000208191.pdf.

2018.2.27 公開
2019.2.21 RMPの内容を追記、主な第2世代抗ヒスタミン薬(内用剤)の一覧を改訂