ノバルティスの免疫抑制剤「サンディミュンカプセル」が販売中止になります。
(ノバルティスファーマwebサイトより)
中止時期はいつ?
2018年6月以降、在庫がなくなり次第出荷終了となります。
なお、内用液と点滴静注液は販売継続されます。
サンディミュンってどんなくすり?
販売名 | サンディミュンカプセル25mg・50mg |
名前の由来 | サンドファーマ社(現ノバルティス ファーマ社;スイス)で開発された免疫抑制剤(SANDOZ IMMUNOSUPPRESSANT) |
一般名 | シクロスポリン |
会社名 | ノバルティスファーマ(株) |
薬効 | 免疫抑制剤(カルシニューリンインヒビター) |
適応 | 1.下記の臓器移植における拒絶反応の抑制 腎移植、肝移植、心移植、肺移植、膵移植 2.骨髄移植における拒絶反応及び移植片対宿主病の抑制 3.ベーチェット病(眼症状のある場合) 4.尋常性乾癬(皮疹が全身の30%以上に及ぶものあるいは難治性の場合)、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症、関節症性乾癬 5.再生不良性貧血(重症)、赤芽球癆 6.ネフローゼ症候群(頻回再発型あるいはステロイドに抵抗性を示す場合) |
販売開始時期 | 1991年1月10日 |
サンディミュンは、いわずとしれた免疫抑制剤「シクロスポリン」の先発品です。
海外では1982年にスイス、1983年にアメリカやイギリスで承認され、それまでのステロイドとアザチオプリンのみの免疫抑制療法と比較して、臓器移植による生着率の大幅な上昇をもたらしました。2)
日本では、サンディミュン注射剤および内用液が1986年2月に、カプセル剤が1991年1月に発売されています。1)
なんで中止になったの?
例によってメーカーからのお知らせでは「諸般の事情」としか記載されていなかったのですが、日本移植学会のお知らせに掲載されてました。
サンディミュンカプセル25mgおよびサンディミュンカプセル50mgの販売中止の経緯
本剤はノバルティスファーマ社(旧サンドファーマ社)で開発された免疫抑制剤であり、国内ではカプセル剤が 1990年6月に承認された。
しかしながら、同社より安定してシクロスポリンが吸収されるように開発されたネオーラルカプセルの販売を開始し、また、シクロスポリン製剤のジェネリック医薬品の登場に伴い、全世界で本剤の需要が減少したため、ノバルティスファーマ社は本剤の販売を中止することを決定した。
ネオーラルもあるし後発品もあるからもう要らないっしょ!ってことみたいですね。
NDBデータを見てみたところ、ネオーラルが年間4900万カプセル以上使われているのに対し、サンディミュンは記載すらありませんでしたので、かなり切り替わってきているのかなーと思いました。
販売名 | 薬価 | 総計 |
ネオーラル10mgカプセル | 119.3 | 8,949,774 |
ネオーラル25mgカプセル | 252.2 | 18,993,191 |
ネオーラル50mgカプセル | 438.0 | 21,410,122 |
(厚労省 第2回NDBオープンデータより、外来と入院の合計、診療年月:H27年04月~H28年03月)
参考 サンディミュンカプセル25mgおよびサンディミュンカプセル50mg販売中止に伴う留意点日本移植学会代替品はあるの?
同じシクロスポリン製剤のネオーラルと、ネオーラルの後発品があげられていました。
販売名 | 会社名 | 薬価 |
ネオーラル10mgカプセル | ノバルティス | 107.10 |
シクロスポリンカプセル10mg「TC」 | 東洋カプセル=沢井 | 76.00 |
シクロスポリンカプセル10mg「BMD」 | ビオメディクス=日本ジェネリック=富士製薬 | 76.00 |
シクロスポリンカプセル10mg「ファイザー」 | マイラン=ファイザー | 76.00 |
シクロスポリンカプセル10mg「トーワ」 | 東和薬品 | 49.20 |
シクロスポリンカプセル10mg「日医工」 | 日医工 | 49.20 |
ネオーラル25mgカプセル | ノバルティス | 227.50 |
シクロスポリンカプセル25mg「TC」 | 東洋カプセル=沢井 | 132.40 |
シクロスポリンカプセル25mg「日医工」 | 日医工 | 132.40 |
シクロスポリンカプセル25mg「BMD」 | ビオメディクス=日本ジェネリック=富士製薬 | 132.40 |
シクロスポリンカプセル25mg「ファイザー」 | マイラン=ファイザー=ポーラファルマ | 132.40 |
シクロスポリンカプセル25mg「トーワ」 | 東和薬品 | 94.20 |
ネオーラル50mgカプセル | ノバルティス | 394.50 |
シクロスポリンカプセル50mg「TC」 | 東洋カプセル=沢井 | 238.60 |
シクロスポリンカプセル50mg「BMD」 | ビオメディクス=日本ジェネリック=富士製薬 | 238.60 |
シクロスポリンカプセル50mg「ファイザー」 | マイラン=ファイザー=ポーラファルマ | 238.60 |
シクロスポリンカプセル50mg「トーワ」 | 東和薬品 | 173.40 |
シクロスポリンカプセル50mg「日医工」 | 日医工 | 173.40 |
適応はネオーラルの方が広いので、適応については特に問題なく切り替えられるかと思います。
(サンディミュンカプセル25mg・50mgインタビューフォームより)
代替品切り替え時は血中濃度等の測定を!
ただしネオーラルおよびその後発品と、サンディミュンは生物学的に同等ではありません。
(ネオーラルの方がバイオアベイラビリティが向上しています。)
参考 サンディミュン(経口製剤)とネオーラルの違いは?ノバルティスファーマ(医療関係者向け)サンディミュン(経口製剤)とネオーラルの違いは?
ネオーラルはサンディミュンを製剤的に改良した製剤です。
サンディミュンは油をベースとした製剤であり、消化管吸収において胆汁分泌量や食事の影響を受けやすく、吸収にばらつきが大きいという問題がありました。この点を改善するため改良を加えたのがネオーラルで、水に触れるとマイクロエマルジョンを形成し、水溶性の性質を呈します。
その為、ネオーラルは吸収が速やかで、胆汁酸分泌量や食事の影響による吸収の変動が少なく、より安定した吸収が得られる製剤となっています。
そのため、切替え前後で血中濃度や臨床検査の実施が望まれます。
詳細は日本移植学会の「サンディミュンカプセル 25mgおよび サンディミュンカプセル 50mg販売中止に伴う留意点」に書かれていますので、ご参考までです。
2)審査報告書, PMDA,
http://www.pmda.go.jp/drugs/2001/P200100016/30024200_16000MZY00301_110_1.pdf
3)「サンディミュンカプセル」販売中止のご案内, ノバルティスファーマ,
https://drs-net.novartis.co.jp/siteassets/common/pdf/discontinued_list/an_sim_cap_201801.pdf
4)サンディミュンカプセル25mgおよびサンディミュンカプセル50mg販売中止に伴う留意点, 日本移植学会,
http://www.asas.or.jp/jst/news/doc/info_20171121.pdf