抗HIV薬「アイセントレス錠600mg」が承認されました

りんご
2018年5月14日、新医薬品のアイセントレス錠600mgが承認されました!
みかん
おそらく緊急薬価収載されると予測しています。

製造販売承認品目の一覧

会社名をクリックすると、ニュースリリースに飛びます。

新医薬品

販売名(一般名) 会社名 備考
アイセントレス錠600mg
(ラルテグラビルカリウム)
MSD HIVインテグラーゼ阻害薬
適応:HIV感染症

アイセントレス錠の新規格がひっそりと承認されました。
既存の400mg錠が1日2回なのに対し、600mg錠は1日1回でOKです。ただし1回2錠だ。
というわけで1日用量は800mgから1,200mgに増えています。

ひとつ注意点がありまして、例によって600mg錠×2と400mg錠×3は同等ではありません
以下、理由をインタビューフォームから引用します。2)

外国人健康成人を対象とした第1相臨床試験(290試験)において、400mg錠×3によるラルテグラビル1,200mg1日1回経口投与では、600mg錠×2によるラルテグラビル1,200mg1日1回経口投与と比較して、ラルテグラビルの曝露量は低く、食事内容によっては食後投与により更にラルテグラビルの血漿中曝露量を低下させることがあるため、600mg錠×2の代替として 400m 錠×3を投与すると、安定した良好な有効性が得られない可能性が示唆された。
また、海外の抗HIV薬の治療経験がない患者を対象にした第3相臨床試験(ONCEMRK)では、ラルテグラビル400mg錠(3錠)による1,200mg1日1回経口投与の検討は行なっていないことから、ラルテグラビルとして1,200mgを1日1回経口投与する際に、ラルテグラビルの600mg錠(2 錠)の代替として400mg錠(3 錠)を用いないよう注意すること。

 

ガイドラインによると、アイセントレスを含む推奨の組み合わせは「アイセントレス+デシコビ」です。3)
しかし、1日1回1錠のゲンボイヤやトリーメクがある現状、あまり2剤併用の薬剤の出番は無さそうです…。

(2018.6.20追記)
アイセントレスの位置づけについて、ご指摘いただきました!

日本でのHIV感染妊娠例数は、1995年以降、年間約30~40例前後で横ばいに推移しています。5)
HIVは血液・体液・母乳などを介して感染するため、治療も対策もしない場合の母子感染率は15~30%と言われています。4)
しかし、近年HIV治療と予防の進歩により、母子感染率は0.6%以下まで抑制可能になっています。4)

「HIV感染妊娠に関する診療ガイドライン」によると、アイセントレスは未治療のHIV感染妊婦に対する推奨薬のひとつに位置づけられています。4)
上であげたゲンボイヤは「データ不十分」、トリーメクは「代替」と位置づけられているため、両剤の妊婦に対するデータがそろうまでは、アイセントレスの出番はありそうです。

そろそろツルバダの後発品も出そうですし、アイセントレスも1日1回1錠の配合剤作らないのかなぁ。

 

参考文献
1)HIVインテグラーゼ阻害剤「アイセントレス錠600mg」の製造販売承認を取得, MSD(株),
http://www.msd.co.jp/newsroom/msd-archive/2018/product_news_0514.xhtml.

2)アイセントレス錠600mg, 添付文書, インタビューフォーム.
3)抗HIV治療ガイドライン 2018年3月, HIV感染症及びその合併症の課題を克服する研究班, http://www.haart-support.jp/pdf/guideline2018.pdf.
4)HIV感染妊娠に関する診療ガイドライン, HIV感染妊娠と母子感染予防 , http://hivboshi.org/manual/guideline/2018_guideline.pdf.
5)平成28年度HIV母子感染全国調査研究報告書, API-Net, http://api-net.jfap.or.jp/library/MeaRelDoc/01/images/h28_HIVhoukoku.pdf.