肺がん向上委員会のセミナーでePROの今を学ぶ。 | ぼうそう医薬情報室

肺がん向上委員会のセミナーでePROの今を学ぶ。

先日、肺がん向上委員会のセミナーに行ってきたので、講義のメモを起こしてみました。

参考 「がん領域におけるePROなどITの進歩について」肺がん医療向上委員会

セミナーはなんと無料!ありがたい~。
しかも1~2ヵ月したらビデオも公開されるよ。

ご講演は、東京大学の宮路先生です。

講義メモ

注意
講義を聴いたメモを元に作成しておりますので、間違っている部分があるかもしれません。
文責はわたし、小石まり子にあります。
間違っている部分を発見されましたら、ツイッターや当ブログの問合せページ等にて、ご指摘いただけると幸いです。

PRO(Patient Reported Outcome)とは

PROの定義と種類

・PRO(患者報告アウトカム)は、「患者の回答について、臨床医や他の誰の解釈も介さず、患者から直接得られる患者の健康状態に関するすべての報告」
・例:症状、有害事象、QOL、満足度など
・臨床アウトカム評価には、PROを含め4種類ある

評価者
PRO 患者 MD Anderson Symptom Inventory: MDASI
EORTC QLQ-C30
CliRO 医療従事者 ECOG Performance Status
Common Terminology Criteria for Adverse Events
ObsRO 看護師、患者家族など pittsburgh sleep quality index
Edmonton Symptom Assessment System Revised: ESAS-r
PerRO -(パフォーマンスを測定) 6分間歩行

・症状評価の一般的な尺度としては、NRSやVASが使われる。

・症状特異的な尺度としては、以下のものがある。
・Brief Fatigue Inventory (簡易倦怠感尺度):がん患者の倦怠感を評価
・PRO-CTCAE:がん患者の有害事象を評価
・health-related quality of life(EORTC、FACIT):QOLを評価

参考 Brief Fatigue Inventory (簡易倦怠感尺度)[PDF]国立がん研究センター 参考 PRO-CTCAE™(version 1.0)JCOG

・臨床試験にPROを用いるには、Validity(妥当性)が必要
(質問内容が妥当か、再現性があるか、症状に応じてスコアが変化するか等)

PROが重視される背景

・医療者は、患者の主観的症状(痛み、不安、倦怠感等)を過小評価する傾向がある

下の表は、CTCAE(医療従事者による評価)で有害事象なしと評価された患者の、患者自身の評価(PRO-CTCAE)から重症度を抜粋したもの。
医療者が問題なしと判断した患者の半数以上が、倦怠感や不眠を感じているのがわかる。


(出展:Kawaguchi et al. The Japanese version of the National Cancer Institute’s patient-reported outcomes version of the common terminology criteria for adverse events (PRO-CTCAE): psychometric validation and discordance between clinician and patient assessments of adverse events, Journal of Patient-Reported Outcomes (2018) 2:2. [PMID: 29757309])

・ASCO 2017のプレナリーセッションでも、ePROの利用により全生存期間(OS)が約5ヵ月延長したことが示された。
⇒今後は日常診療でも、PROを活用しようという気運が高まっている。

参考 様々ながん種の転移性患者にタブレット型電子患者日誌を導入することで生存期間を延長~ITはがん医療を変える?~ ASCO2017&JAMAオンコロ

・PROの利用には、臨床的意義のある差(MID:Minimal Importance Difference、ある治療が有効であると解釈できる治療群間の差や変化量)を考える必要がある。

りんご
がん患者のOSを5ヵ月延長って、ヘタな新薬よりも効果が高いよね。
みかん
副作用への早期対処によって、重症化の軽減と治療完遂率が向上し、OS延長に結びついたのでは?と考察されています。

PROの測定

PRO-CTCAEの事例

・CTCAEは、医療従事者による、世界共通の有害事象の評価尺度
・PRO-CTCAEは有害事象評価の質の向上を目的に導入された
・PRO-CTCAEは、CTCAEとの併用を前提に開発された
・78症状を124項目で評価
・評価は5段階評価(リッカート尺度)
・National Cancer Institute(NIH)からダウンロード可能
・成人のがん患者が対象(海外では16歳以上なら評価可能という認識)
・患者が直接読んで回答するため、面と向かって聞きにくい質問も聞ける(性生活や月経周期等)

非推奨の使い方
・有効性の指標として使用(緩和ケアや支持療法の臨床試験にて)
・痛みに使用(NRS、VASを用いるべき)

参考 PRO-CTCAE™(version 1.0)JCOG

PRO測定の注意点

・妥当性が保証された調査票、調査方法を利用
・勝手に文面を変えない
・患者の負担にならない質問量にする(ベースラインは20分、定期評価は15分以内に答えられる量)
・直接計測できない項目に対してのみ使用する
・使用前に開発者に連絡し、ライセンスの確認をする(勝手に使って論文発表すると訴訟になったりする)

 

ITの進歩

・臨床試験の効率化、品質向上を目的に、さまざまなプロセスで電子化が進んでいる

ePRO(electronic Patient Reported Outcome)

・ePROは、直接・電子的にPROを収集するシステム
・スマートホンやタブレットを併用するのが一般的
・タイムスタンプ機能があるため、患者日誌よりも「まとめ書き」のリスクが少ない
(夏休み最終日に日記40日分書く的なね・・・)
・デバイス提供方法:BYOD型(患者本人のデバイスを使用)/中央配布型(デバイスをレンタルする)
・データ保存/送信方法:デバイス保存型/Web保存型
・商品化されているPRO:medidata、REDCap、Viedoc、accelight、medrio
(商品化されているPROは、規制要件に準拠して開発されている)
・健康アプリなどは規制要件に準拠していないことが多く、臨床試験には使えないものもある

mHealth(mobile Health)

・モバイルやワイヤレスを使用して健康データを収集するシステム
・装着可能型(ウェアラブル)デバイス、ゲーム、アプリ、埋め込み型など
・mHealthによって患者がデータにアクセスできる、不要な入院が減る、患者中心の臨床試験が出来るなどのメリットが享受できる
・とはいえ技術は発展途上、規制などもまだ整備されていない

eIC(electronic Informed Consent)/eConsent

・eConsentとは、マルチメディア(ビデオ、絵、理解度テストなど)を用いたインフォームドコンセント
・自宅でも電子署名によって同意が取れる
・現状、臨床試験参加患者の54%が試験の目的を理解、50%がランダム化を理解、47%が参加は自由意思であることを理解しているとされる(メッチャ少ない!)
・eICを用いることで、患者の理解度上昇、同意取得プロセスの標準化、理解度の記録が残せる、患者と医療者のコミュニケーションの記録を残せる(メール/チャットなど)の利点が得られる

りんご
最近の新薬って作用機序が難しいから、紙で説明されるより動画の方がわかりやすいよね。
みかん
今の臨床試験参加者の理解度の低さが衝撃だった。
eICなら自分のペースで何度でも説明が見られるから、理解度向上に役立ちそう。

 

感想

昨年、今年とBest of ASCO in japanでePROが取り上げられているように、がん領域ではePROの効果が注目されています。

特に上でも書いたePROでOS延長という報告は、私の中で結構衝撃でした。
だってOS延長5ヵ月って!すごくないですか!?新薬でもなかなか無いよ!

で、今回セミナーに参加した感想。「ePROの時代来るな・・・!」。
そして「ePROの推進に薬剤師の力が必要なのでは!?」と思いました。

もともと有害事象の管理は、薬剤師の得意とするところだと思います。
特にがんの外来化学療法中はクスリの副作用との戦いなので、ePROを利用すれば有害事象の早期対応が効率的に進むのではないかな、と考えました。

患者目線で考えても、私みたいなコミュ障&忘れっぽいタイプは、その場では「あーまぁ大丈夫ですー」と言って帰り道で後悔しがちなので、ePROを見ていただいた方が的確に管理してもらえそうな気がします。

私の場合は、自分のスマホにアプリ入れる形式が良いですね。
そうしたら通勤時間とかスキマ時間とかにちょろっと記載できますし。
紙の患者日誌?うーん、夏休みの宿題になりそうだなぁ・・・。

 

とはいえ、まだまだ普及していないePRO。
当面はメーカーさんが開発している副作用管理アプリ(大体無料)等を活用して、今のうちに電子機器による副作用管理のエビデンスを構築するのが良いかもしれないですね。