田辺三菱製薬のパーキンソニズム治療薬「パーキン糖衣錠(10)・(50)、散10%」が販売中止になります。
(協和発酵キリンwebサイトより)
中止時期はいつ?
2019年3月末日、在庫終了をもって販売中止になるとのことです。
経過措置期間は、2019年3月31日までの予定。
パーキンってどんなくすり?
販売名 | パーキン糖衣錠(10)・(50)、散10% |
名前の由来 | 不明 |
一般名 | 【錠】プロフェナミン塩酸塩 【散】プロフェナミンヒベンズ酸塩 |
会社名 | 製造販売元:田辺三菱製薬(株) プロモーション提携:吉富薬品(株) |
薬効 | 中枢性抗コリン薬 |
効能・効果 | 【錠】特発性パーキンソニズム、その他のパーキンソニズム(脳炎後、動脈硬化性)、薬物性パーキンソニズム 【散】向精神薬投与によるパーキンソン症候群 |
販売開始時期 | 1962年2月 |
まさかのインタビューフォームが無かった・・・!(衝撃)
調べた限りと妄想で語ります。違ってたら教えてください・・・。
抗コリン薬とパーキンソン病の関わりは古く、19世紀にはベラドンナアルカロイドが治療に用いられていました。2)
その後、中毒作用が少ない合成抗コリン薬であるトリヘキシフェニジル〔商品名:アーテン、1953年発売〕が発見され、以後レボドパによる治療が開始される1972年まで、パーキンソン病治療で重要な役割を果たしていました。
パーキンが生まれたのは、ちょうど三共化成工業(株)でレボドパの合成に成功した1962年です。3)
当時はまだレボドパが発売されていなかったため、主に抗コリン薬での対症療法(運動症状の改善)が試みられていました。4)
その後、レボドパ、ドパミンアゴニスト、MAO-B阻害薬などが発売され5)、パーキンソン病治療に多種多様な薬剤が選べる時代となったのは、ご承知のとおりです。
なんで中止になったの?
「諸般の事情」とのことです。
時代の流れですかね・・・。
現在、抗コリン薬は、若年で認知機能低下がない症例で有用な薬剤に位置付けられています。2)
しかし、認知機能障害や、排尿障害、転倒などを起こしうることから、高齢者では使用を控えることとされており2)、第一選択薬の座はすでに後進に譲っています。
ガイドラインでも抗コリン薬の項で言及されている薬剤はトリヘキシフェニジル〔商品名:アーテン〕とビペリデン〔商品名:アキネトン〕であり2)、現状この2剤で事足りているのかなぁという印象です。
メチキセン〔商品名:コリンホール〕は2014年に薬価削除になったし、ピロヘプチン〔商品名:トリモール〕はめっちゃ身売りされてるし。
代替品はあるの?
パーキンの販売中止をもって、プロフェナミン製剤は国内から姿を消します。
今後はアーテンやアキネトン(とその後発品)を使うことになりそうです。
1962年生まれといれば、今年で56歳。
ちょっと早い退職ですが、発売当初は考えられないくらい充実したパーキンソン病治療薬達に見送られて勇退するパーキンに、「お疲れさま」と言いたいです。
2) 日本神経学会編, パーキンソン病診療ガイドライン2018, 医学書院.
3) ドパストンカプセル, インタビューフォーム.
4) 長谷川一子, パーキンソン病内科治療の最近の動向, https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcns/21/10/21_758/_pdf.
5) パーキンソン病研究史, 一社)全国パーキンソン病友の会, https://sites.google.com/site/jpdaorg/parkinsonsdisease/pdhistory.
6)パーキン(10)・(50)・散, 添付文書.
7) アーテン錠(2mg), インタビューフォーム.