8月29日、新医薬品が薬価収載されました(更新)

8月22日に開催された中医協で、新医薬品の薬価収載が了承されました。
その後8月28日に告示、8月29日に薬価収載されました。

2018年8月29日収載予定の新医薬品

販売名(一般名) 規格単位 薬価
ジェミーナ配合錠
(レボノルゲストレル/エチニルエストラジオール)
1錠 314.10円
ダフクリア錠200mg
(フィダキソマイシン)
200mg1錠 3,943.80円
スピラマイシン錠150万単位「サノフィ」
(スピラマイシン)
150万国際単位1錠 224.60円
エンタイビオ点滴静注用300mg
(ベドリズマブ(遺伝子組換え))
300mg1瓶 274,490円
シグニフォーLAR筋注用キット10mg・筋注用キット30mg
(パシレオチドパモ酸塩)
10mg1キット(溶解液付)
30mg1キット(溶解液付)
103,034円
260,258円
イミフィンジ点滴静注120mg・500mg
(デュルバルマブ(遺伝子組換え))
120mg2.4mL1瓶
500mg10mL1瓶
112,938円
458,750円
ガザイバ点滴静注1000mg
(オビヌツズマブ(遺伝子組換え))
1,000mg40mL1瓶 450,457円
レフィキシア静注用500・1000・2000
(ノナコグ ベータ ペゴル(遺伝子組換え))
500国際単位1瓶(溶解液付)
1,000国際単位1瓶(溶解液付)
2,000国際単位1瓶(溶解液付)
216,394円
427,968円
846,403円
オデフシィ配合錠
(リルピビリン塩酸塩/テノホビル アラフェナミドフマル酸塩/エムトリシタビン)
1錠 6,043.00円

 

留意事項通知が発出(2018.8.29追記)

薬価収載の告示と同日付で、何品目か留意事項通知が出ています。

オデフシィ:14日投薬期間制限の対象外

今回はオデフシィが対象外です。
抗HIV薬は全例調査が実施されるため、14日間に処方を制限せずとも安全性が担保できることから、14日処方制限の対象外となっています。1)

新医薬品(医薬品医療機器等法第14 条の4第1項第1号に規定する新医薬品をいう。)については、掲示事項等告示第10 第2号(1)に規定する新医薬品に係る投薬期間制限(14 日分を限度とする。)が適用されるが、掲示事項等告示の改正によって、新たにオデフシィ配合錠及びジェミーナ配合錠(ただし、1回の投薬量が30 日分以内である場合に限る。)が当該制限の例外とされた。

ジェミーナ:避妊利用は保険対象外&投薬期間は30日まで

ジェミーナは投与期間が14日ではなく、30日までに制限されます。
理由は2つありまして、まず月経周期に沿った28日1クールの製品なので、14日制限がそぐわないこと。
もうひとつは、ジェミーナの第3相臨床試験でみられた有害事象が、既に発売されている類薬でみられたものであり、安全性が許容可能であることです。

ジェミーナの成分は低用量ピル〔アンジュ、トリキュラー、ラベルフィーユ〕で使われているものと同じなので、確かに14日制限は要らないよねーと思います。

1. 本製剤の効能・効果は、「月経困難症」であること。
2. 本製剤が避妊の目的で処方された場合には、保険給付の対象とはしないこと。
3. 本製剤は、新医薬品(薬事法(昭和35年法律第145号)第14条の4第1項第1号に規定する新医薬品をいう。)として承認されたものであるが、掲示事項等告示第10第2号(1)に規定する新医薬品に係る投薬期間制限(14日間を限度とする。)の適用に当たっては、本製剤の効能・効果に係る疾患の特性や治験の成績を勘案し、特例的に当該の投薬期間制限を14日間ではなく30日間として取り扱うこと

エンタイビオ:注意して使ってね

「3回使ってダメだったら、もう一回考えよ!」とのこと。

本製剤の使用上の注意において、「本剤を3回投与しても治療反応が得られない場合、治療法を再考すること」及び「本剤と他の免疫抑制作用を有する生物製剤の併用について臨床試験は実施していないため、本剤との併用を避けること」と記載されているため、使用に当たっては十分留意すること。

シグニフォー10mg・30mg:在宅自己投与NG&適応確認してね

シグニフォーはおしりに注射するクスリなので、自己投与不可です。
基本筋注は不可だったかと。

また、他の規格(20mg・40mg・60mg)と適応がちょいと違います。
もともと10mg・30mgは、クッシング病のために規格追加された剤形なので妥当。だけどできれば適応は合わせて欲しいなぁ・・・。

1. 本製剤は、医科点数表区分番号「C101」在宅自己注射指導管理料の厚生労働大臣が定める注射薬の成分であるソマトスタチンアナログに該当するが、専用分散液に用時懸濁して用いる製剤であり、また、用法が臀部筋肉内に注射するものであることなどから、医科点数表区分番号「C101」在宅自己注射指導管理料は算定できないこと。
2. シグニフォーLAR筋注用キット10mg及び同30mgは、先端巨大症・下垂体性巨人症の適応を有さないため、使用に当たっては十分留意すること。

ガザイバ:レセプトに検査実施日記載

こちらは抗体製剤に良くある留意事項ですね。
●●陽性を検査したら、レセプトに検査実施日を書く!

1. 本製剤は、緊急時に十分に対応できる医療施設において、造血器悪性腫瘍の治療に対して、十分な知識・経験を持つ医師のもとで、本製剤の投与が適切と判断される症例についてのみ投与すること。
2. 本製剤の使用上の注意において、「フローサイトメトリー法等により検査を行い、CD20抗原が陽性であることが確認された患者に使用すること」と記載されているため、診療報酬明細書の摘要欄に、CD20抗原が陽性であることを確認した検査の実施年月日について記載すること。
なお、当該検査を実施した月のみ実施年月日を記載すること。ただし、本剤の初回投与に当たっては、必ず実施年月日を記載すること。

レフィキシア:在宅自己投与OK&手術時に使った場合は理由書いてね

レフィキシアは遺伝子組換え型血液凝固第9因子製剤なので、在宅自己投与OKです。

1. 本製剤は遺伝子組換え型血液凝固第Ⅸ因子製剤であり、本製剤の自己注射を行っている患者に対して指導管理を行った場合は、医科点数表区分番号「C101」在宅自己注射指導管理料を算定できるものであること。
2. 本製剤は針及び注入器付の製品であるため、医科点数表区分番号「C101」在宅自己注射指導管理料を算定する場合、医科点数表区分番号「C151」注入器加算及び「C153」注入器用注射針加算は算定できないものであること。
3. 手術時における血液凝固第Ⅸ因子製剤の使用に当たっては、術前に予想される投与回数を考慮した上で適切な製剤を選択することとし、本剤を手術時に使用した場合には、その理由を摘要欄に記載すること。

 

薬価の決めかた

ジェミーナ:ルナベルULDと薬価合わせ

ジェミーナは、同じノーベルファーマの月経困難症治療薬「ルナベルULD」の1日薬価に合わせて算定されました。
算定方式は類似薬効比較方式(I)。

ジェミーナ配合錠:314.10円(1日薬価:235.60円)
ルナベル配合錠ULD:314.10円(1日薬価:235.60円)

1錠薬価より1日薬価が低いのは、休薬期間を考慮しているからです。
28日周期(21日投与、7日休薬)に沿うと、
314.10円×21日/28日≒235.60円/日 となりますね。

ジェミーナのもうひとつの周期(84日1周期)は、無視された模様。

ダフクリア:アネメトロと薬価合わせ【加算あり】

ダフクリアは、同じクロストリジウム・ディフィシル感染症治療薬「アネメトロ点滴静注液」の1日薬価に合わせて算定されました。
算定方式は類似薬効比較方式(I)。

ちなみにアネメトロの成分名は、メトロニダゾールです。

ダフクリア錠200mg:3,943.80円(1日薬価:7,887.60円)
アネメトロ点滴静注液500mg:1,252円(1日薬価:3,756円)

すんごい1日薬価が違うのは、外国平均価格調整のせいです。
1錠200mg:1,878.00円(1日薬価:3,756.00円)からスタートし、有用性加算(II)で5%UPして1,971.90円。
そこに外国平均価格調整でドーンと引き上げられて、2倍位のお値段となりました。

ちなみにこれでも外国価格(1錠:約9,000~19,500円)よりはかなりお安めです。
ただ、アネメトロに比べて2倍の価値はあるのかが、ちょっと謎。

なお、有用性加算は、新規作用機序である点が評価されて5%加算されました。
新規作用機序の抗菌薬は貴重!

スピラマイシン「サノフィ」:原価計算方式で算定【加算あり】

スピラマイシンは類薬がないので、原価計算方式で算定です。

海外の標準治療薬であることから有用性加算(II)が10%。
希少疾病用医薬品のため市場性加算(I)も10%つきました。
ただし加算係数が0.6なので、結局12%の加算でした。

エンタイビオ:ヒュミラと薬価合わせ【加算あり】

エンタイビオは、同じ潰瘍性大腸炎治療薬「ヒュミラ皮下注」の1日薬価に合わせて算定されました。
算定方式は類似薬効比較方式(I)。

エンタイビオ点滴静注用300mg:274,490円(1日薬価:4,902円)
ヒュミラ皮下注40mgシリンジ0.4mL:62,384円(1日薬価:4,456円)

臨床的意義のある新規作用機序の医薬品ということで、有用性加算(II)が10%入っております。

シグニフォー10mg・30mg:規格間調整

シグニフォーは、すでに薬価収載されている規格(20mg・40mg・60mg)があるため、既収載品との規格間調整で算定されました。

ちなみにシグニフォー10mg・30mgは3/23に承認されたので、収載を1回スキップしていました。

イミフィンジ:テセントリクと薬価合わせ【加算あり】

イミフィンジは、同じ抗PD-L1抗体「テセントリク点滴静注」の1日薬価に合わせて算定されました。
算定方式は類似薬効比較方式(I)。

イミフィンジ点滴静注500mg:458,750円(1日薬価:32,768円)
テセントリク点滴静注1200mg:625,567円(1日薬価:29,789円)

規格間比で調整が入った後に有用性加算が10%加算されたため、ちょっとお高め。
といってもイミフィンジは他の免疫チェックポイント阻害薬と適応が違うので、薬価の違いが売上に響くことはないかと。

有用性加算(II)は、国内外のガイドラインで初の標準治療として推奨されている点が評価されたようです。
確かにステージ3に使える免疫チェックポイント阻害薬はイミフィンジだけなので、画期的ですよね!

ガザイバ:原価計算方式で算定【加算あり】

ガザイバは類薬がない・・・?ので、原価計算方式で算定です。

海外のガイドラインで標準治療として推奨されていること、リツキシマブよりも有意な効果が得られていることから、有用性加算(II)が20%ついています。
(ただし加算係数0.2なので、結局4%の加算)
その後、外国平均価格調整で4,000円ほど引きあがっております。

 

ちなみに、ガザイバってリツキサンと同じ抗CD20抗体なんですよ。
なので、初見「なんでリツキサンとの類似薬効比較方式じゃないんじゃい!」と思いましたが、資料に書いてありました。

ザックリ言うと、「リツキサンは収載されたの10年以上前(2001年収載)だし、もう後発品も収載されてるから類似薬にはならないよねー。」とのこと。
一応新薬の薬価算定で使う類似薬は「当該新薬が承認を受けた日の前日から起算して過去10 年間に薬価収載されたものであって、当該新薬算定最類似薬に係る後発品が薬価収載されていないもの」と規定されているので2)、リツキサンは類似薬にはなれないのでした。
前回のアジレクト&エフピーと同じ理屈ですね。

レフィキシア:イデルビオンと薬価合わせ

レフィキシアは、同じ血友病B治療薬(第9因子製剤)「イデルビオン静注用」の1日薬価に合わせて算定されました。
算定方式は類似薬効比較方式(II)。

レフィキシア静注用2,000:846,403円(1日薬価:120,915円)
イデルビオン静注用2,000:677,122円(1日薬価:120,915円)

レフィキシアは、今血友病業界でハヤリの長時間作用型製剤です。
既存薬と同じような感じなので、薬価合わせは妥当かと。

オデフシィ:エジュラント+デシコビと薬価合わせ

オデフシィは、同成分のエジュラント&デシコビの1日薬価に合わせて算定されました。
算定方式は類似薬効比較方式(I)。

オデフシィ配合錠:6,043.00円(1日薬価:6,043.00円)
エジュラント錠25mg:2,108.70円(1日薬価:2,108.70円)
デシコビ配合錠HT:3,934.30円(1日薬価:3,934.30円)

あれ?新医療用配合剤の特例で算定されないの?と思ったら、ちゃんと注釈がありました。2)

5 新医療用配合剤の薬価算定
(1)特例の対象となる新医療用配合剤
本号の対象となる新医療用配合剤は、次の全ての要件に該当するものとする。
ただし、抗HIV薬並びに臨床試験の充実度又は臨床上のメリットが明らかな注射用配合剤及び外用配合剤を除く。

 

参考文献
1)中央社会保険医療協議会 総会(第398回) 医薬品の薬価収載について, 厚生労働省, https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000212500_00005.html.
2)薬価算定の基準について(通知), 保発0207第1号, http://www.mhlw.go.jp/file.jsp?id=514228&;name=file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000193793.pdf.