新薬雑感:モビコール配合内用剤

まずは基本情報

販売名 モビコール配合内用剤
名前の由来 特になし
一般名 マクロゴール4000/塩化ナトリウム/炭酸水素ナトリウム/塩化カリウム
会社名 EAファーマ(株)
*持田製薬(株)と共同販売
薬効 浸透圧下剤
効能・効果 慢性便秘症(器質的疾患による便秘を除く)
用法・用量 1日1~3回 水で溶解して経口投与

【2歳以上7歳未満】
初回用量:1回1包 1日1回
増量:2日以上の間隔をあけて行う(増量幅は、1包/日まで)
最大投与量:4包/日(2包/回)
【7歳以上12歳未満】
初回用量:1回2包 1日1回
増量:2日以上の間隔をあけて行う(増量幅は、1包/日まで)
最大投与量:4包/日(2包/回)
【12歳以上】
初回用量:1回2包 1日1回
増量:2日以上の間隔をあけて行う(増量幅は、2包/日まで)
最大投与量:6包/日(4包/回)

 

慢性便秘症ってこういう疾患

  • 本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態
  • 第一選択(強い推奨)は、浸透圧性下剤と上皮機能変容薬
  • 第二選択(弱い推奨)は、消化管運動賦活薬、刺激性下剤、膨張性下剤、漢方薬等

慢性便秘症は「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」です。

治療には生活習慣の改善や薬物療法などがあります。
薬物療法のうち、強く推奨されているのは浸透圧性下剤と上皮機能変容薬です。4)

一方、習慣性のある刺激性下剤などは、一段階低い推奨となっています。

 

慢性便秘症の内服薬による治療4)

種類 主な製品名
推奨度1(強い推奨)
浸透圧性下剤 酸化マグネシウム、ラクツロース
上皮機能変容薬 アミティーザ、リンゼス
推奨度2(弱い推奨)
膨張性下剤 コロネル/ポリフル
刺激性下剤 アローゼン、プルゼニド、ラキソベロン
消化管運動賦活薬 ガスモチン
漢方 大黄甘草湯、麻子仁丸、大建中湯
坐剤 新レシカルボン、テレミンソフト

 

モビコールってこういうくすり

  • 新しい作用機序の慢性便秘症治療薬(浸透圧性下剤:PEG製剤)
  • 効果は用量依存的
  • 日本小児栄養消化器肝臓学会からの開発要請を受けて開発

モビコールは、日本で初めて慢性便秘症に適応を持つ、ポリエチレングリコール(PEG)製剤です。
浸透圧性下剤に分類される薬剤で、腸管内の水分量を増やし、便をやわらかくして排便を促します。3)

効果は用量依存的であり、基本的には飲む量を増やすと便秘改善効果も副作用発現率も上がります。3)
なので、便秘の改善度合いに合わせて、個々人で適切な量に調節します。

PEG製剤は、海外では小児も含めた便秘治療に広く用いられており、欧米のガイドラインでも使用が推奨されています。2)
そのため、日本小児栄養消化器肝臓学会から小児慢性便秘症に対するPEG製剤の開発要請が出され、それを受けて開発が行われました。10)

 

PEGについてもうちょっと詳しく!

  • 幅広い用途で用いられているポリマー
  • 水溶性で、毒性が低い
  • 水に対する溶解性は、電解質の存在によって影響されない

PEG(ペグ:ポリエチレングリコール)は実験から化粧品から医薬品まで、幅広い用途で用いられているポリマー(重合体)です。
医薬品では軟膏基材や坐薬基材、錠剤の滑沢剤などに用いられています。8)
最近だと半減期延長のための「PEG化」に使われることが多いでしょうか。

そんなPEGちゃんの中で、日本薬局方または医薬品添加物規格に収載されたものを「マクロゴール」と呼びます。9)

 

マグコロールじゃないですよ!マグコロール(クエン酸マグネシウム)は塩類下剤!

 

で、マクロゴールは分子量によって性質がかなり異なります。
たとえば、マクロゴール400は常温で液体ですが、マクロゴール4000は常温で固体です。9)

物質としてのマクロゴール4000の特長は、水に極めて溶けやすいことです。
日本薬局方では、「溶質1gまたは1mLを溶かすに必要な溶媒量が1mL未満」であることを極めて溶けやすいと定義しています。
なので、理論的にはモビコール1包(マクロゴール4000を6.5625g含有)は水が10mLもあれば溶けるってことですよね。すごい!(添付文書上は「1包60mLの水に溶解」です。)

また、溶解性が電解質に影響されません。9)
なので、人が飲める範囲の液体であれば、粉末入れたけど全然溶けない!ということは無いかと思います。
(極端に高濃度の酸やアルカリは、影響を受ける可能性あり)

 

有効成分はモビプレップに類似

モビプレップは、経口の腸管洗浄剤です。5)
大腸内視鏡検査の前に飲んで、腸管をキレイにする作用を持っています。

そんなモビプレップとモビコール、実は有効成分がほとんど一緒です。
腸管内の浸透圧を増加するマクロゴールと、電解質バランスを維持するための無機塩が含まれています。

大きな違いはアスコルビン酸の有無ですかね。
モビプレップは、さらに腸管内の浸透圧を高めるためにアスコルビン酸を入れてますが、モビコールは入っていません。

また、モビコールは炭酸水素ナトリウムが入っていますが、モビプレップは硫酸ナトリウムが入っています。
これは、炭酸水素ガスをアスコルビン酸を共存させると炭酸ガスが発生してしまうため、モビプレップでは炭酸水素ナトリウムの使用を避けたためです。6)
ニフレックは炭酸水素ナトリウムを使っているので、たぶん炭酸水素ナトリウムの方がメジャー。

モビコールの場合は腸管をピカピカにする必要はないので、あえてアスコルビン酸を加えることはしなかったのかなーと思います。
すっぱくなりそうですしね。

販売名 モビコール配合内用剤 モビプレップ配合内用剤
有効成分 1包(6.8523g)中
マクロゴール4000:6.5625g
塩化ナトリウム:0.1754g
炭酸水素ナトリウム:0.0893g
塩化カリウム:0.0251g
1袋(244.212g)中
【大室(A剤)】
塩化ナトリウム:5.382g
塩化カリウム:2.03g
無水硫酸ナトリウム:15.0g
マクロゴール4000:200.0g
【小室(B剤)】
アスコルビン酸:9.4g
L-アスコルビン酸ナトリウム:11.8g
効能・効果 慢性便秘症(器質的疾患による便秘を除く) 大腸内視鏡検査、大腸手術時の前処置における腸管内容物の排除

 

既存薬と違う点は?

マグミットと違う点は?

モビコールはマグミットと比べて…

  • 小児適応がある
  • 慎重投与・併用注意が少ない
  • [注]水に溶解する必要がある
  • [注]先発品扱い(だと思う)

マグミットと比べたモビコールの良いところは、小児適応がある点です。
知ってました?カマ(って酸化マグネシウムのこと、最近はカマって言わないのかな…)って実は小児適応ないんですよ。7)
(注:小児慢性機能便秘症ガイドラインでは、適応外ではあるものの使用が推奨されています。)

なので、日本小児栄養消化器肝臓学会が開発要請を出したのかなーと推察します。

また、マグミットは吸着作用・制酸作用があるため、他の薬剤の吸収・排泄に影響を与える場合があります。
抗菌薬(テトラサイクリン・ニューキノロン等)やビスホスホネート、活性型ビタミンD3製剤と併用注意なのは、ご承知のとおりかと思います。
一方、モビコールは併用禁忌・併用注意の薬剤はありません。薬剤師的にはありがたい!

ちょっとめんどくさい点としては、モビコールは水に溶解してから飲まないといけません。
1包あたり60mLの水に溶解なので、1回4包だと240mLの水に溶解。
あんまり水を飲む習慣が無い人にはちょっとツライかも?
(ちなみに溶かすのは水じゃなくても良さそうです。→雑談:モビコールは水以外に混ぜても良いの?

あと、これは患者さんには関係ありませんが、モビコールは先発医薬品です。
一方、マグミットは後発医薬品です。
もし全面切り替えになると、後発医薬品使用割合が結構変わる可能性があるのでご注意ください。

販売名 モビコール配合内用剤 マグミット錠・細粒
効能・効果 慢性便秘症(器質的疾患による便秘を除く) ・下記疾患における制酸作用と症状の改善:胃・十二指腸潰瘍、胃炎(急・慢性胃炎、薬剤性胃炎を含む)、上部消化管機能異常(神経性食思不振、いわゆる胃下垂症、胃酸過多症を含む)
・便秘症
・尿路蓚酸カルシウム結石の発生予防
用法
(緩下剤として)
1日1~3回 1日3回食前または食後、または就寝前1回
適応年齢 2歳以上の小児、成人 成人
慎重投与 1. 腎障害のある患者
2. 心機能障害のある患者
3. 下痢のある患者
4. 高マグネシウム血症の患者
5. 高齢者
併用注意 テトラサイクリン系抗生物質
ニューキノロン系抗菌剤
ビスホスホネート系薬
ジギタリス製剤
活性型ビタミンD3製剤
大量の牛乳、カルシウム製剤 他
定期的な検査
(特に記載なし)
長期投与又は高齢者へ投与する場合には定期的に血 清マグネシウム濃度を測定するなど特に注意すること。

 

注意しておきたいことは?

注意
ショック・アナフィラキシー(重要な特定されたリスク)

ショック・アナフィラキシー

海外で使われているMOVICOLのSmPC※1にアナフィラキシーの記載があること、モビプレップで重篤なアナフィラキシーの報告があること3)から、重要な特定されたリスクに設定されました。
※1:SmPC(Summary of product characteristics):製品特性概要、添付文書的なモノ

添付文書には、以下のように記載。

【添付文書記載事項】
禁忌(抜粋):
1. 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者

重大な副作用:
ショック、アナフィラキシー(頻度不明)
ショック、アナフィラキシーがあらわれることがあるので、観察を十分に行い、血圧低下、蕁麻疹、呼吸困難、顔面浮腫等の異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。

 

まとめ

本剤投与が有用な患者像

  • 適応があえば誰でも
  • 長期にわたって便秘薬を飲んでいる患者
りんご
第一選択で使えるのでは。

個人的には、欧米にならって第一選択薬になるんじゃないかな、と思っています。

刺激性下剤に比べて、浸透圧性下剤の方が推奨度が高い点は医療従事者全体の共通認識だと思いますが、「じゃあ浸透圧性下剤って何があるんだ」となった際に、今まで酸化マグネシウムしか選択肢がなかったのですね。

今回、モビコール(とラクツロース製剤のラグノス)が登場することで、浸透圧性下剤の中でも患者に合わせて薬剤を選択できる時代がようやく来るな!という実感です。

で、「じゃあ浸透圧性下剤の中での優先順位は、どうやって決めるんだ」となると、PEG製剤や糖類下剤の方が、一歩先んじているかなと。

(ちょっと古いですが)米国の消化器学会(AGA)のガイドラインでは、PEG製剤のNNT※2は2.4(Quality of Evidence※3:High)。11)
ACGのガイドラインではPEG製剤のNNTが3(Quality of Evidence:High)、ラクツロース製剤が4(Quality of Evidence:Low)です。12)
(ちなみに刺激剤下剤はそれぞれ3(Quality of Evidence:High)11)と3(Quality of Evidence:Moderate)12)

※2:NNT(Number Needed to Treat):治療必要数。1人に効果が現れるまでに何人に介入すれば良いかを示す数字。小さい方が良い治療。
 野球でいうと、何球来たらヒットが一本打てるかみたいな感じ(ざっくり)。
※3:Quality of Evidence:エビデンスの質。その評価にどれだけ強固な裏づけがあるかを示す。Highの方が確信が強い。

PEG&ラクツロース製剤が刺激性下剤とほぼ同等のNNTであり、マグネシウム製剤が高齢者の高マグネシウム血症に注意しろだの定期的に血液検査しろだの言われている点13)を鑑みると、安全性の面でも前者の方が良いのかな、という印象です。

【高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)記載事項】
K.緩下薬
便秘の原因となる薬剤(表1を参照)を使用している場合は、原因となる薬剤の変更・中止を検討する。水分制限がある疾患でなければ、水分摂取を促し、食物繊維を取り入れた食事療法と適度な運動で改善を図る。

高齢者の特性を考慮した薬剤選択:
マグネシウム製剤(酸化マグネシウム)は浸透圧下剤として用量調節しやすく、頻用されているが、高齢者は腎機能が低下しており、高マグネシウム血症に注意が必要である。
ルビプロストン[アミティーザ]は、クロライドチャネルアクチベーターであり、血清中電解質に影響なく便をやわらかくさせるため、硬便のため排便困難となっている症状に使用を検討する。
ナルデメジン[スインプロイク]は、オピオイド誘発性の難治性便秘であれば使用を検討する。

投与量、使用方法に関する注意:
マグネシウム製剤を使用する場合は、低用量から開始し、高用量の使用は避ける。定期的に血清マグネシウム値を測定し、高マグネシウム血症の症状である悪心・嘔吐、血圧低下、徐脈、筋力低下、傾眠などの症状がある場合はマグネシウム製剤の中止と受診をすすめる。
刺激性下剤は長期連用により耐性が生じて難治性便秘に発展することがある。また、センナなどに含まれるアントラキノン誘導体は大腸運動異常や偽メラノーシスを引き起こす。刺激性下剤の使用は頓用にとどめるべきである。

他の薬効群の薬剤との相互作用に関する注意:
マグネシウム製剤は、フルオロキノロン系・テトラサイクリン系抗菌薬などの吸収を低下させるため、これらの薬剤との服用間隔を2時間程度空ける必要がある。

あと、すでに長期間便秘薬を飲んでいる方は、試しにスイッチしても良さそうですね。
本当に浸透圧性下剤の選択肢が増えてありがたい…!

 

類薬の投与を検討すべき患者像

  • 薬剤費を抑えたい患者
みかん
酸化マグネシウムは安い!

とはいえ、酸化マグネシウムは安いです。
モビコールの薬価にもよりますが、1円でも安くしたい場合は、引き続き酸化マグネシウムが選択肢に入ってくるかなぁと思います。

モビコール安くなれ…!目指せ最低薬価…!

あとは短期間の使用だったり、腎機能が悪くない患者さんだったり、特に併用薬がなかったりする場合は、酸化マグネシウムでも悪くはなさそうです。

 

雑談:モビコールは水以外に混ぜても良いの?

メーカーからの公式回答はまだですが、いけそうです。

インタビューフォームの最後に「各種飲料との配合変化試験結果」が掲載されており、いずれの飲料に溶解しても、水に溶解した場合と同程度かそれより少し高い浸透圧上昇と示したと記載されています。3)

ここで上げられている飲料は以下のとおり。

・オレンジジュース(なっちゃん)
・リンゴジュース(なっちゃん)
・スポーツドリンク(ポカリスエット)
・緑茶(おーいお茶)
・烏龍茶(烏龍茶)
・麦茶(ミネラル麦茶)
・紅茶(午後の紅茶 ストレートティー)

これOKなら大体いけるでしょ…!

内視鏡検査するわけじゃないので、モビプレップのように透明な飲料でなくても大丈夫かと思います。

問題は果たして美味しいのかどうかですね。
詳細はメーカーさんから患者さん用指導箋が出るはず(願望)なので、それを待ちたいと思います!

 

参考文献
1)慢性便秘症治療薬「モビコール配合内用剤」国内製造販売承認取得のお知らせ, EAファーマ(株), https://www.eapharma.co.jp/.
2)審査報告書, PMDA, http://www.pmda.go.jp/drugs/2018/P20180928001/111890000_23000AMX00821_A100_1.pdf.
3)モビコール配合内用剤, 添付文書, インタビューフォーム, 新医薬品の使用上の注意の解説.
4)日本消化器病学会関連研究会 慢性便秘の診断・治療研究会編, 慢性便秘症診療ガイドライン2017, 南江堂.
5)モビプレップ配合内用剤, 添付文書, インタビューフォーム,
6)モビプレップ配合内用剤 審査報告書, PMDA, http://www.pmda.go.jp/drugs/2012/P201200145/11189000_22400AMX01481000_A100_1.pdf.
7)マグミット錠・細粒, 添付文書, インタビューフォーム.
8)薬学用語解説 マクロゴール, 公社)日本薬学会, https://www.pharm.or.jp/dictionary/wiki.cgi?%E3%83%9E%E3%82%AF%E3%83%AD%E3%82%B4%E3%83%BC%E3%83%AB.
9)医薬品添加物 マクロゴール, 三洋化成工業(株), https://www.sanyo-chemical.co.jp/products/pickup/pickup4/top.html.
10)未承認薬・適応外薬の要望 ポリエチレングリコール, 厚生労働省, https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11120000-Iyakushokuhinkyoku/0000052874.pdf.
11)Bharucha AE, American Gastroenterological Association Technical Review on Constipation, https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3531555/pdf/nihms-426668.pdf.
12)Ford AC et al, American College of Gastroenterology Monograph on the Management of Irritable Bowel Syndrome and Chronic Idiopathic Constipation, https://gi.org/wp-content/uploads/2014/08/IBS_CIC_Monograph_AJG_Aug_2014.pdf.
13)高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)について, 医政安発0529第1号, 薬生安発0529第1号, 平成30年5月29日.