10月17日(水)~10月23日(火)は、薬と健康の週間ですね。
もう最終日だった。
というわけ?で、私は「クスリを調べるには、何を見たら良いのか?」について書きたいと思います。
無料かつネットで見られるモノをピックアップしましたので、ご参考まで。
患者さん向け
患者向け医薬品ガイド、ワクチン接種を受ける人へのガイド
患者向け医薬品ガイドとワクチン接種を受ける人へのガイドは「患者等が医療用医薬品を正しく理解し、重篤な副作用の早期発見等に供されるように広く国民に対して提供される」資料です。
メーカーが作成して厚生労働省がチェックし、PMDAで公開されます。
この資料では、そのクスリを飲む患者さんに、特に知っておいて欲しい情報を添付文書から抽出し、わかりやすく記載しています。
一応、高校生程度の文書理解力でわかるように作成されているようです。
添付文書よりも作用機序が丁寧に記載されているので、個人的にははじめましてのクスリを調べるときに重宝してます。
また、飲み忘れた場合の対応や、飲みすぎてしまった場合の対応も書かれているので、手元に置いておくと便利です。
あと、重大な副作用の自覚症状が書いてあるのもありがたいですね。
いつもと違う、気になる症状が出たら、とりあえずこの文書で確認してから医療機関に問合せても良さそうです。
(もちろん、見ないで問合せても大丈夫ですよ!)
添付文書よりも、服用する側の立場に立って書かれているので、患者さんには添付文書よりもこちらの文書をオススメします。
ちなみに記載内容はこんな感じ。
1.記載項目及び記載順序
(1)作成年月又は更新年月
(2)販売名
(3)患者向医薬品ガイドについて
(4)この薬の効果は
(5)この薬を使う前に、確認すべきことは
(6)この薬の使い方は
(7)この薬の使用中に気をつけなければならないことは
(8)この薬の形は
(9)この薬に含まれているのは
(10)その他
(11)この薬についてのお問い合わせ先は
くすりのしおり
くすりのしおりは、くすりの適正使用協議会がまとめている資料です。
こちらもメーカーさんが作成してます。
医療従事者の記載欄があるので、基本的には病院や薬局で患者さんに渡しつつ説明する用だと思いますが、患者さんから薬局に持っていって、薬剤師に埋めてもらっても良いかと思います。
くすりのしおりの特長は、なんといってもA41枚にまとまっているところ。
情報が1枚にまとまっているので、最初に読む文書としては適していると思います。
これで「よく分からないなー」とか、「ここをもうちょっと詳しく知りたい」とか思った場合は、患者向け医薬品ガイドを読むと良いかなと。
あとは英語版があるところも良いですね!
外国人の患者さんが来たときに、これを渡せばどうにかなるはずだ…。
他の言語はGoogle翻訳さんにどうにかしてもらいませう。
ちなみに英語版は、医療英語の勉強にも役立ちます。
お暇なときの勉強にゼヒ。
記載事項はこんな感じ。
・商品名
・この薬の作用と効果について
・次のような方は使う前に必ず担当の医師と薬剤師に伝えてください。
・用法・用量(この薬の使い方)
・生活上の注意
・この薬を使ったあと気をつけていただくこと(副作用)
・保管方法その他
・医療担当者記入欄
重篤副作用疾患別マニュアル(患者・一般の方向け)
「この症状…本当は怖い●●で見たアレじゃないの!?」と思ったときに便利なのが、重篤副作用疾患別マニュアルです。
厚生労働省の依頼を受けて各学会が作成し、日本病院薬剤師会等との議論を通じて取りまとめられます。
クスリはリスクというように、薬剤によっては生命に関わるような重篤な副作用が起こる可能性があります。
そういった薬剤を飲むことにした際に、いち早く副作用の兆候を知るために役立ちます。
1ページ目に「次のような症状がみられた場合には、放置せずに医師・薬剤師に連絡してください。」と典型的な症状が記載されているので、見ておくといざというときに慌てずに済むかと思います。
参考
重篤副作用疾患別マニュアル(患者・一般の方向け)PMDA
医療従事者向け
ここからは医療従事者向けの資料です。
大体PMDAで検索することができます。
といっても添付文書等は誰でも読めるので、患者向けの資料を見て、もっと知りたい!ってなったら読んでも良いかも。
添付文書
添付文書は、法律に記載のある唯一の医薬品資料です。
すべての医薬品情報の元であり、添付文書に記載されているか、添付文書どおりに処方・服薬指導していたかが裁判の争点になることもあります。
(添付文書等の記載事項)
第五十二条
医薬品は、これに添付する文書又はその容器若しくは被包(以下この条において「添付文書等」という。)に、当該医薬品に関する最新の論文その他により得られた知見に基づき、次に掲げる事項(次項及び次条において「添付文書等記載事項」という。)が記載されていなければならない。ただし、厚生労働省令で別段の定めをしたときは、この限りでない。
薬剤師が一番よく読む資料ですよね。
フォーマットが頭に叩き込まれている人も多いと思います。私だ。
なので、ネットより紙の方が情報見つけるのが早いっちゅうね。
そろそろ電子媒体に慣れていきたい今日この頃。
インタビューフォーム
インタビューフォームは、日本病院薬剤師会がメーカーに依頼して作成された資料です。
もともとは病院のDI室がMRに聞いて(インタビューして)作成していたので、インタビューフォームというらしい。
内容は添付文書よりももうちょっと突っ込んだ内容で、開発の経緯や各条件化の安定性、臨床試験の詳細や薬理試験の詳細等が記載されています。
これも薬剤師は必読です。
逆に薬剤師以外には細かすぎるかも。医師や看護師も見てるんでしょうか。
新医薬品の使用上の注意の解説
これはメーカーが作成している資料ですね。
新薬の使用上の注意について、もっと突っ込んで記載しています。
なんで禁忌なのか、なんで定期的な検査が必要なのか等が書いてあるので、こちらも薬剤師は必読。
これは各メーカーの医療従事者用サイトに掲載されてます。
総合製品情報概要
総合製品情報概要は、いわゆるパンフレットです。
添付文書・インタビューフォーム・使用上の注意の解説の内容が、大抵フルカラー&ビジュアル重視な感じで掲載されています。
ビジュアル重視なのでとっても読みやすいのですが、多少メーカーの恣意的部分が出ていることがあるので注意して読む必要があります。
個人的には、総合製品情報概要でメーカー側のアピールポイントをさらって、審査報告書を読んでPMDAとどう折り合いをつけたかを知る。という流れでみてます。
総合製品情報概要もメーカーサイトに掲載されてますねぇ。
他の資料よりも掲載が遅い印象があります。
審査報告書
審査報告書は、医薬品の承認審査時のPMDAとメーカーの議論の記録です。
PMDAが作成しています。
添付文書の記載がなぜそのようになったのか、新薬の臨床的位置付けをPMDAとメーカーはどう考えているのか等がわかりやすく書かれているので、新薬情報を調べる際には必須の情報源です。
私もよく活用してます。
個人的にオススメなのは「臨床的位置付けについて」の項目と「審査報告(2)」です。
臨床的位置付けは、メーカーの主張をPMDA側が論破してるのを見るのが楽しい(ゲスい)。
まぁ、直接比較試験もしてないのに「第一選択薬になると思います!」って言ってもね。そりゃ論破されるよね。
審査報告(2)は、PMDAと専門協議の議論の記録です。
一転、PMDAがメーカーの(っていうかメーカーとPMDAで結論付けた内容の)擁護をしている感じになるので、専門家にビシバシに突っ込まれるPMDAをお楽しみください(ゲスい)。
基本あんまり揉めませんけどね。
具体的な活用方法は、日本病院薬剤師会さんが出してくれています。
参考
病院薬剤師業務への審査報告書の利活用について[PDF]日本病院薬剤師会
RMP
RMPは注意しなければならない薬の副作用や、まだわかっていないリスクをまとめた資料です。
メーカーが作成してます。
基本的には、メーカーさんが知りうる限りの有害事象について、こうやって情報収集します!こうやって情報提供します!ということを書いた資料です。
が、医療従事者側も、結構使える内容だと思います。
私も資料作成に活用してます!
特に気にしておきたいのが重要な潜在的リスクと重要な不足情報です。
この2つ、なんと添付文書に記載されていないことがあります。
なので、RMPを見ていないと気づかないんですね。
あとは特定使用成績調査の実施についても記載されているので、例えば高齢者を対象に使用成績調査をする医薬品は「高齢者に処方されたら注意しなきゃな~。」と考えることができます。
医薬品の有害事象に一番詳しくあるべき薬剤師には、必読の資料かと考えています。
こちらも、具体的な活用方法を日本病院薬剤師会さんが出してくれています。
参考
病院薬剤師業務への医薬品リスク管理計画の利活用について[PDF]日本病院薬剤師会
日本薬剤師会も説明資料出しております。
クスリのことは薬剤師に聞こう!
患者向けから医療従事者向けまでつらつらあげてみましたが、いかがでしょうか。
もし「調べるのめんどくさいな…。」と思ったときは、ぜひかかりつけ薬剤師にご相談ください。
患者さんがより正しく、より安全にクスリを使う手助けをするのが薬剤師の役割です。
クスリと上手く付き合っていくために、薬剤師を上手く使っていただければと思います。
2)くすりのしおり作成基準, くすりの適正使用協議会, https://www.rad-ar.or.jp/siori/sioriclub/pdf/shiori_manual_20180401.pdf.