敷地内薬局について現状と意見をまとめてみました(修正)

薬剤師業界では賛否両論の敷地内薬局について、調べたことをまとめました。

敷地内薬局とは何か?

敷地内薬局とは、その名のとおり病院の敷地内にある薬局です。
基本的には敷地内のアメニティ施設等の一環として入っていることが多いと思います。

事の発端

事の発端がいつだったかはわかりませんが、議論の俎上に上がったのは2015年3月12日の公開ディスカッションだったかと思います。19)
当時、ツイッターも結構ザワザワしてたような記憶があります。

その後、2015年の第三次答申に薬局の構造基準の見直しが記載され20)、2016年3月31日に通知が改正、2016年10月1日から適用されました。4)

(3)具体的な規制改革項目
1. 医薬分業推進の下での規制の見直し
ウ 保険薬局の独立性と患者の利便性向上の両立【平成 27 年度検討・結論、平成 28年度措置】
医薬分業においては、薬剤師が処方医とは独立した立場で患者に対する薬学的管理を行う必要がある。
このため保険薬局と保険医療機関は、一体的な経営だけでなく、一体的な構造も禁止され、公道等を介さずに専用通路等により患者が行き来する形態であってはならないとされている。
この規制が、車いすを利用する患者や高齢者等に過度な不便を強いているのではないかとの指摘がある。
また、行政相談を受けた総務省行政評価局の厚生労働省へのあっせんにも、同趣旨の考え方が紹介されている。したがって、医薬分業の本旨を推進する措置を講じる中で、患者の薬局選択の自由を確保しつつ、患者の利便性に配慮する観点から、保険薬局と保険医療機関の間で、患者が公道を介して行き来することを求め、また、その結果フェンスが設置されるような現行の構造上の規制を改める。
保険薬局と保険医療機関の間の経営上の独立性を確保するための実効ある方策を講じる。

調剤報酬上の扱い(2018年現在)

2018年度診療報酬改定にて、敷地内薬局に対する特別調剤基本料10点が設定されました。
調剤報酬上は「病院と不動産取引等の関係があって、かつ処方箋の集中率が95%以上の薬局」とみなされているようです。2)

二の二 調剤基本料の注2に規定する厚生労働大臣が定める保険薬局
次のいずれかに該当する保険薬局であること。
(1)病院である保険医療機関と不動産取引等その他の特別な関係を有している保険薬局であって、 当該病院に係る処方箋による調剤の割合が九割五分を超えること。
(2)一の(1)から(4)までのいずれかに適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険薬局以外の保険薬局であること

 

敷地内薬局の一覧(2018.10調査結果)

私がGoogleを駆使して調べた敷地内薬局の一覧です。
といっても、2018年9月時点で33都道府県64施設とのことなので1)、全然足りてません。
タレコミ募集中です!

あと、「ここ敷地内じゃないよ?」って薬局がありましたら、それも教えていただけるとありがたいです。
住所から推定したものもあるので、ちょっと自信ない場所もありにけり。

都道府県 病院名
(★は国立大学)
敷地内薬局
北海道 ★北海道大学病院 (詳細不明)
★旭川医科大学病院 アインファーマシーズ(予定)
ナカジマ薬局(予定)
市立釧路総合病院 釧路薬剤師会が設立予定
青森県 盛岡赤十字病院 アイン薬局盛岡南店
岩手県
宮城県 石巻赤十字病院 石巻薬会営薬局(休日・夜間限定)
秋田県 秋田県立脳血管研究センター ファーマックスくぼた薬局
山形県 県立新庄病院 (新庄最上薬剤師会が手上げ予定)
福島県
茨城県 ★筑波大学附属病院 (クオールが入居予定?)
栃木県 獨協医科大病院 (公募開始)
群馬県
埼玉県
千葉県 ★千葉大学医学部附属病院 クオール薬局いのはなテラス店
とまと薬局千葉中央店
日本医科大学千葉北総病院 (詳細不明)
東京都 ★東京大学医学部附属病院 アインファーマシーズ(予定)
竹内調剤薬局(予定)
関東中央病院 日本調剤 用賀中央薬局
日本赤十字社医療センター (詳細不明)
神奈川県 日本医科大武蔵小杉病院 (詳細不明)
新潟県 ★新潟大学医歯学総合病院 アイン薬局 新大前店
しなの薬局 新大前店
佐渡市立両津病院 タカヤク
長岡赤十字病院 エーアンドエム
富山県
石川県 公立能登総合病院 日本調剤 小丸山薬局
市立輪島病院 あおぞら薬局 GreenTerrace輪島店(予定)
福井県
山梨県
長野県
岐阜県 土岐市立総合病院 日本調剤 土岐薬局
市立恵那病院 エイチエムファーマ
国保関ヶ原診療所 なの花薬局 関ヶ原店
静岡県
愛知県 公立陶生病院 (公募開始)
三重県 亀山市立医療センター 日本調剤亀山薬局
滋賀県 ★滋賀医科大学医学部附属病院 日本調剤 滋賀医大前薬局
フロンティア薬局滋賀医大店
京都府 京丹後市久美浜病院 (詳細不明)
大阪府 堺咲花病院 アイン薬局 堺南店
和泉市立総合医療センター ココカラファイン薬局 和泉市立総合医療センター店
すいせん薬局
大阪みなと中央病院 阪神調剤薬局(隣接施設に入居予定)
大阪国際がんセンター (詳細不明)(2018.11.12修正)
兵庫県 加古川中央市民病院 加古川中央市民病院前 さくら薬局
奈良県
和歌山県
鳥取県 鳥取赤十字病院 徳吉薬局日赤前
島根県 ★島根大学医学部附属病院 日本調剤 島大薬局
益田赤十字病院 ファーマシィ薬局益田センター
岡山県 ★岡山大学病院 (詳細不明)
倉敷中央病院 NICHO+くらしき
*保険調剤は実施しない
広島県 安佐市民病院 (公募開始)
山口県 新光総合病院 メディシス連結子会社を選定
徳島県
香川県
愛媛県 記念会HITO病院 クオール薬局四国中央店
高知県 ★高知大学医学部附属病院 (日本調剤が優先交渉権)
福岡県 芦屋中央病院 ローソンミズ 芦屋中央病院前店
佐賀県
長崎県
熊本県 熊本市民病院 (日本調剤が優先交渉権)
大分県
宮崎県
鹿児島県
沖縄県 新八重山病院 リーフ上地薬局いしがき店(予定)

 

敷地内薬局に対する見解

厚生労働省の見解

厚生労働省は「患者のための薬局ビジョン」に沿った薬局を増やすような政策を打ち出していますので、敷地内薬局のことはあまり良く思ってなさそうです。

2016年、災害医療センターが敷地内薬局を誘致しようとしたところ、厚生労働省からストップがかかり中止になりました。3)
その際に厚生労働省が出した見解がこちら。4)

1. 厚生労働省が国立病院機構本部に示した見解について
国立病院機構災害医療センターが、厚生労働省の見解を受けて薬局誘致の公募を中止した件について、
(1)厚生労働省が見解を示すに至った経緯・背景は。
(2)厚生労働省が「望ましくない」と問題視する見解を示した理由・根拠は。
(3)厚生労働省の本件に係る今後の対応方針は。

(回答)
○ 厚生労働省は、かかりつけ薬剤師・薬局を推進することにより、患者本位の医薬分業の実現を目指している。
○ ご指摘の件は、国立病院機構災害医療センターの敷地内に開設する薬局を公募した事案であるが、同センターからの処方箋を集中して応需することが想定される公募条件であったため、厚生労働省所管の独立行政法人が開設する医療機関が、このような薬局の開設を公募することは、かかりつけ薬剤師・薬局を推進する当省の政策の方向性に合致せず、当省所管の独立行政法人として望ましくないと考え、その旨を国立病院機構本部に伝えたものである。
○ 上記の考え方を踏まえ、国立病院機構本部では、最終的に薬局の公募を取りやめることを判断したものと承知している。
○ 厚生労働省としては、「患者のための薬局ビジョン」にしたがってかかりつけ薬剤師・薬局を進めることで、薬局が地域包括ケアの一翼を担う存在となるよう、引き続き取り組んでまいりたい。
(医政局 医療経営支援課)
(医薬・生活衛生局総務課)

追加質問
(4)敷地内であっても患者が指定すれば「かかりつけ薬局」になり得るところ、なぜ本件が「かかりつけ薬剤師・薬局を推進する当省の政策の方向性に合致」しないことになるのか。

(回答)
○ 「患者のための薬局ビジョン」では、薬局は、かかりつけ薬剤師・薬局として、かかりつけ医を始めとした他職種・他機関と連携し、地域に溶け込み、地域包括ケアシステムの一員として機能することを目指すこととしている。
○ 本件の場合、災害医療センターは高度急性期病院としての機能を有しており、患者が慢性疾患の治療等も含め当該医療機関を継続的に受診することは基本的に想定されないところ、本件公募では、災害医療センターの院外処方箋平均発行枚数のすべてを処方できる体制を求めるなど、災害医療センターからの処方箋の集中的な応需も可能な要件となっている他、地理的事情からみて、患者が他の医療機関を受診した場合に当該薬局を利用することは想定しがたいため、かかりつけ薬剤師・薬局を推進する当省の政策には合致しないと判断した。
(医政局 医療経営支援課)
(医薬・生活衛生局総務課)

厚生労働省はかかりつけ薬剤師・薬局を推進しているので、いわゆる昔からの門前薬局のように、特定の病院の処方せんを集中的に応需する形態の薬局は、いまの政策の方向性にそぐわないと認識しているようです。
特に災害医療センターのような高度急性期病院は、生涯にわたって受診するようなかかりつけ病院にはなりえないので、敷地内薬局はかかりつけ薬局にはなれないだろう、と思っていると見受けられます。

日本薬剤師会の見解

日本薬剤師会も当然反対の姿勢です。
日薬が公式に発表した文書(で私が見つけられたもの)は以下のとおり。5),6)

日本薬剤師会 平成30年度事業計画

(前略)医薬分業制度については、国の方針として推進していくことが明確にされているが、規制改革実施計画(平成27年6月閣議決定)に基づき一部改正された保険薬局の指定に係る留意事項通知に伴うルール適用(平成28年10月)において、いわゆる敷地内薬局を誘致する動きが散見されている。
患者の薬物療法を安全でより効果的に確保するためには、処方箋の確認と調剤は処方箋を交付する医療機関から独立した薬局において実施されなければならないものである。
保険薬局の指定に当たっては、医薬分業制度の円滑な推進が確保されるよう、留意事項通知が厳格に適用されることを引き続き強く求めていく。
そして、医薬品の一元的・継続的な薬学管理指導と医薬品等の供給と地域包括ケアシステムの中で地域住民の相談役として役割を担う、かかりつけ薬剤師・薬局の普及推進を図るとともに、患者の医療安全確保のため、薬局薬剤師と病院(診療所)薬剤師の連携を一層推進する。

保険薬局の指定に係る留意事項通知の一部改正に伴うルールの適用に当たって(見解) 平成28年9月27日

(前略)しかるに近頃、複数の公的保険医療機関が当該敷地内に保険薬局を積極的に誘致しているとの情報が本会に寄せられています。
もしこうした動向が保険医療機関の経営上の観点から起きているならば、医薬分業の理念を損なうばかりでなく、保険医療機関としての矜恃のほころびも懸念されます。
厚生労働省は昨年10月に「患者のための薬局ビジョン」を公表し、「『門前』から『かかりつけ』、そして『地域』へ」とのサブタイトルの下、将来に向けた薬局再編の姿が明確に示され、本会のこれまでの主張が政策に反映されたものと受け止めておりますが、保険医療機関による無秩序な敷地内への保険薬局の誘致は、患者のための薬局ビジョンの趣旨に逆行するものと言わざるを得ません。
繰り返しになりますが、10月1日以降の保険薬局の指定に当たっては、留意事項通知が厳格に適用され、医薬分業の本旨が損なわれることのないよう強く要請いたします。

日本薬剤師会は、薬局の独立性が脅かされる点を一番気にしているのかなと思いました。
あとは厚生労働省の見解と一緒。

日本病院薬剤師会の見解

公式な発表は見つけられなかったのですが、業界紙を見るに、基本的には反対の姿勢のようです。
2016年の副会長の見解では、「病院の敷地内に薬局があり、そこがかかりつけ薬局のような状態になってしまうと、日常的な身体の不調でも外来を訪れるようになってしまう」と懸念を表明されています。7)

参考 敷地内薬局、病診薬連携に悪影響‐日病薬・川上副会長薬読

これは確かに仰るとおりだな、と思いました。
わざわざ遠くのクリニックで受診してから大病院の敷地内薬局行くくらいだったら、最初っから大病院受診するよね。
大病院の超近所に住んでます!ってわけでないなら、クリニックの待ち時間+移動時間≒大病院の待ち時間位でしょうし。

その他の会の見解

日本保険薬局協会と日本チェーンドラッグストア協会の見解は見つかりませんでした。
でも会員薬局がガンガン敷地内に出展しているので、協会として全面反対はしてないんじゃないかなぁという印象です。
情報求む。

日本医師会、日本病院会、全日本病院協会等の医師系の会も、公式見解は出してないような気がします。
病院側&医師側のデメリットはあんまりないので、気にしてないのかなーと思ったり。
病院は公募している側ですしね。

日本医師会にいたっては、そもそも副会長が医薬分業自体を疑問視してるくらいなので9)、敷地内とか敷地外とかいう次元の問題は持ってない気がします。

 

わたしの意見

敷地内薬局に対する2018年10月現在の私の意見を、備忘録的にまとめました。

注意
自分のことを棚っちゅーかビルの屋上くらいに上げて意見言ってます~。
「じゃあお前は出来るのか!?」と言われたら「出来ません。」って言う感じです。すみません。皆様のご意見も知りたいので、Twitter等で呟いていただけると喜びます。
あとは「こんな取り組みしてるぜ!」とかも募集中。

患者からみた敷地内薬局誘致の是非

  • 薬局を選ぶ際の選択肢が増える
  • 行くのが楽
  • 支払うお金が安くすむ可能性あり

患者さんにとっては、単純に選択肢が増えるのでメリットしかないと思います。
敷地内がイヤなら敷地外薬局使えば良いですし。

敷地内薬局は何より楽ですよね。
わざわざ遠い薬局に行かなくて済みますし、特に歩行が困難だったり付き添いの人が薬局に来たりする場合は、近いほうが断然楽だと思います。

あと処方箋集中率が高い場合は調剤基本料が安いので、支払うお金が安く済む可能性があります。

 

デメリットをひねり出すならば、敷地内薬局の方が病院に対する忖度が発生する可能性が大きいことでしょうか。
でもそれは患者さんもわかっているでしょう。
というか、病院と薬局で経営母体が一緒だと思う患者さんも多そうです。

 

敷地内薬局の台頭で周りの薬局が潰れたりすると、長期的には薬局を選ぶ際の選択肢が減ってしまう可能性はあるかな~とは思います。

 

病院からみた敷地内薬局誘致の是非

  • 長期に渡って家賃収入が得られる
  • 薬薬連携がスムーズに進みそう

病院経営面では、敷地内薬局はメリットが多いと思います。

まず一番大きいのが、長期に渡って家賃が得られるところ。
筑波大学のようにBOT方式*で貸与するなら、費用はほとんど発生せずに患者さんへ利便性が提供できるので、金銭的にはメリットしかないですよね。

*BOT(Build Operate Transfer)方式:民間事業者(この場合は薬局)が、公共施設の建設を行い、維持・管理・運営し、事業終了後に施設所有権を国や自治体(この場合は病院)に譲渡する事業方式。BOTという用語は、Build(建て)、Operate(管理し)、Transfer(譲渡する)の頭文字に由来。11)

次に、病院薬剤部との薬薬連携がスムーズに進みそうなところ。
恐らく敷地内薬局と病院薬剤部は顔が見える関係になっていると思うので、敷地内薬局に患者が集中的に流れるのであれば、病院側は疑義照会を受けるのが楽になると思います。
全然知らない面薬局等から疑義を受けるよりは敷地内薬局からの疑義の方が、勝手がわかる分対応も素早く正確にできそうです。
なんなら「ちょっと薬剤部までお伺いします!」という手段も取れますし。

京都大学でやってるような「疑義照会簡素化プロトコル」12)も、敷地内薬局ならすぐに導入できそうですよね。

また、敷地内薬局が地域薬局とのハブ的な役割をしてくれるのであれば、病院と地域薬局との薬薬連携もスムーズに進みそうですよね。
例えば、大病院に通ってた患者さんが地域の診療所に転院する際に、敷地内薬局から地域の薬局へ情報連携をするとか。
(地理的に遠い等で)退院時カンファレンスに出られないかかりつけ薬剤師の代わりに、敷地内薬局の薬剤師が出席して、後でかかりつけ薬剤師にフィードバックする等も良さそうです。

 

病院薬剤師からみた敷地内薬局誘致の是非

経営層ではない病院薬剤師については、メリットとデメリット両方あるかと。

メリットは、今まで院内処方だった場合は院外処方になるので業務量が減ります。
今まで院外処方だった場合も、敷地内薬局に処方箋が行く確率が高くなるので、疑義照会の手間が減る可能性があります。
これは敷地内薬局のレベルにもよりますが…たぶんその辺も加味して選定しているかと思います。

また、日本調剤さん限定かもしれませんが、人員不足時に応援が頼める可能性があります。

日本調剤さんは、病院薬剤師が産休・育休中に薬剤師を派遣する事業をスタートしています。13)
なので、敷地内に日本調剤さんがいれば、病院薬剤師の産休・育休が取りやすくなると期待できます。

日本調剤さんは病院研修も積極的に実施されてるので14)、もしかしたら交換留学的な感じで薬局業務を経験できる可能性もありますよね。
一施設に所属しながら他の施設の業務が経験できるのは、とっても良い経験になるかと思います。

 

デメリットは、長期的には薬剤部の業務のほとんどが、敷地内薬局に委託・または敷地内薬局からの派遣・出向によって実施される可能性があることでしょうか。

一応、医療法施行令にて外部委託できる業務が規定されており、現状調剤業務は入っていません。
でも今でも老健施設が調剤業務を外部委託しているケースは良くあると思いますので、それが病院にも適用される可能性はあると思います。
なにせ政令ですしね。法律よりも改定はカンタン。

医療法 第十五条の二
病院、診療所又は助産所の管理者は、病院、診療所又は助産所の業務のうち、医師若しくは歯科医師の診療若しくは助産師の業務又は患者、妊婦、産婦若しくはじよく婦の入院若しくは入所に著しい影響を与えるものとして政令で定めるものを委託しようとするときは、当該病院、診療所又は助産所の業務の種類に応じ、当該業務を適正に行う能力のある者として厚生労働省令で定める基準に適合するものに委託しなければならない。

医療法施行令 第四条の七
法第十五条の二に規定する政令で定める業務は、次のとおりとする。
一 人体から排出され、又は採取された検体の微生物学的検査、血清学的検査、血液学的検査、病理学的検査、寄生虫学的検査又は生化学的検査の業務
二 医療機器又は医学的処置若しくは手術の用に供する衣類その他の繊維製品の滅菌又は消毒の業務
三 病院における患者、妊婦、産婦又はじよく婦の食事の提供の業務
四 患者、妊婦、産婦又はじよく婦の病院、診療所又は助産所相互間の搬送の業務及びその他の搬送の業務で重篤な患者について医師又は歯科医師を同乗させて行うもの
五 厚生労働省令で定める医療機器の保守点検の業務
六 医療の用に供するガスの供給設備の保守点検の業務(高圧ガス保安法(昭和二十六年法律第二百四号)の規定により高圧ガスを製造又は消費する者が自ら行わなければならないものを除く。)
七 患者、妊婦、産婦若しくはじよく婦の寝具又はこれらの者に貸与する衣類の洗濯の業務
八 医師若しくは歯科医師の診療若しくは助産師の業務の用に供する施設又は患者の入院の用に供する施設の清掃の業務

派遣・出向はすぐにでも出来そうです。
たぶん病院経営側としては、薬剤部で働いている薬剤師が病院所属だろうが薬局所属だろうが気にしないと思うんですよね。

「好きな業務ができるなら、所属は気にしないぜ!」という意見もあると思うので、人によって受け取り方は違うかもですねぇ。
薬局準拠なら給料も上がるかもしれませんし。

(2018.11.06追記)
すでに日病薬の副会長から、薬剤調製の外部委託が提案されておりました。
この構想自体はもっと大規模なセンターを想定されていると思いますが、敷地内薬局かSPD(院内物流管理)とのコラボが良さそうです。

同センターは内服薬や注射薬を個人単位で取り揃えて再包装し、病院や薬局などに配送する。薬剤師は、対物業務の一部である薬剤調製を自ら実施するのではなく、それを管理する役割へと移行し、対人業務に注力する。医薬品の在庫負担からも解放されるという。

敷地内薬局とのコラボなら、翌日配送分はパッケージセンター、緊急用は敷地内薬局で調剤が相乗効果が得られそうです。
こっちは自社物流を持っているような大手チェーン調剤がやりそう。

SPDとのコラボなら、RFID使って完全機械化ですかね。
こっちは医薬品卸がやりそう。
分割販売と同じようなシステムで出来そうですし。

参考 薬剤調製、外部委託の検討を‐日病薬・土屋副会長が提案薬事日報

 

敷地内薬局からみた是非

敷地内薬局側はメリットがあるから出店していると思います。

一番大きいのは病院とコネができることですかね。
大病院は地域医療の中心になる存在だと思うので、その薬局の地域での存在感を高めるためには、病院と話せる関係になることが必須。
今後展開される(と思う)フォーミュラリーも、当該地域の大病院のフォーミュラリーに準じる地域が多くなると予測されます。

特に薬剤部とは顔が見える関係になる(ハズ)ですし、大病院の情報をいち早く入手できる敷地内薬局は、地域包括ケアシステムの中でも中心的な役割を果たせると考えています。

あとは、病院と人材交流ができる可能性があることもメリットかと。
病院の研修会とか参加させてくれそう(希望)。

 

地域薬局からみた敷地内薬局誘致の是非

地域薬局は、長期的にはデメリットが大きいと思います。
一番の理由は、高い調剤基本料を受け取る根拠が無くなることです。

現在、調剤基本料1が41点、敷地内薬局限定の特別病剤基本料が10点です。
つまり、調剤基本料1を取得している薬局は、敷地内薬局の4倍以上の患者さん側のメリットがあるから、それだけもらえているということになります。

なのに「敷地内薬局の方が便利だね。安心だね。」という論調が進むと、もはや敷地内薬局よりも高い調剤基本料を受けとる理由がなくなっちゃうんですよね。
たぶん、中医協では絶対指摘されると思います。
いまでも調剤基本料が高い高い言ってますし。

そしてすべての薬局の調剤報酬が、敷地内薬局並みとなったとすると、立ち行かない薬局が多いのではないでしょうか。

大手チェーンは『「病院との連携に取り組みやすい上に、高度薬学管理が必要な患者の処方箋は単価も高い。たとえ調剤基本料が0点であったとしても出店したい」(大手チェーン幹部)』15)という考えて出店しているようです。
調剤基本料0点になったら、チェーン以外の薬局は太刀打ちできないと思います…。

そんなわけで調剤報酬上配慮されている過疎地域の薬局以外は、大手チェーンだけになってしまう可能性があります。

 

ポスト敷地内薬局時代に備えて、必要なことってなんだろう

敷地内薬局(特に大手)に対抗するために、必要なことを考えてみました。
なんかちょっと上から目線になっちゃった感じがします。すみません。
自分はできないことをつらつら書いて恐縮ですが、備忘録ということでご容赦ください。

病院薬剤部

なにはなくとも病院内の政治力です。
「病院内の薬剤の何かを決めるときには、絶対に薬剤部に聞かないとね。」「薬剤部がダメって言ったらしょうがないね。諦めよう。」ってなるような政治力が無いと、大手チェーンには立ち向かえなさそうです。
なにせ彼らはシンクタンクを持っているのだ…。

特に日本調剤さんが敷地内薬局、かつ、院内でフォーミュラリーの策定をしていない場合は、日本調剤さん主体で進んじゃう可能性があります。
なにせ元聖マリ・現日本医薬総合研究所の増原先生がいらっしゃいますからね。
日本調剤さんから「フォーミュラリー策定のお手伝いしますよ!」って言われたら、政治力の無い薬剤部の出る幕は無いですよね。
怖い。

大病院の薬剤部はしっかりされてると思うので、当面は大丈夫だと思いますが、地域の中小病院にも敷地内薬局の波が来るとヤバそうな気がします。
薬剤師同士で業務の食い合いをするのは避けたいところですねぇ…。

 

薬局

相手は「調剤基本料は要らねぇ」と言っている大手チェーンなので、いっそ保険調剤以外の収入源を確保した方が良いかもしれません。
OTCとか薬剤相談とか。

他の職種の方を雇って栄養相談とか健康ヨガとかリハビリとか始めても良いかも。
ベビーフード売ってるドラッグストアなら、メーカーとコラボして乳幼児栄養相談(オススメベビーフードつき)なんかも良さそうですね。
同じようなことが経口栄養剤でも出来そうです。

ヨガやリハビリは、場所取るのが難点ですが…。いっそ駐車場でやるとか。
こういうのはドラッグストアや大手スーパーに入ってる薬局が得意そうですね。

有料って難しいですけど、占いに15分5,000円かける人もいるのでやり方次第な気もします。

現に日本調剤さん(もうこの記事日本調剤さんしか出てこないな…)は「NICHO+(にっちょうぷらす)」という処方箋受付機能の無い薬局…薬局?ヘルスケア専門店?を開設してますし、それくらいやらないと厳しい時代になってきたのかなぁ~と思います。

保険調剤で戦うならば、「うちはこんな良いことを地域へ提供してます!」というエビデンスを構築できれば、多分厚生労働省が守ってくれると思います。
例えば、その地域だけ健康寿命が長いとか、救急受診患者が少ないとか、医療費が安いとか。
あとは地域支援体制加算の要件を満たすとか。

特区だったらSociety5.0に向けてオンライン服薬指導やドローン配送に挑戦するのも良さそうです。
これはもう規制改革推進会議の方向性をガッツリ注視して、その方向性に舵を切るのがベターだと思います。

 

薬剤師個人で出来ることは、勝ち組薬局に乗れるように、個人の成績を上げておくとかですかねぇ…。
ちょっと前に話題になった「かかりつけ患者さん1,000人オーバー」の人のように、「この人を雇えば経営的価値がある!」となれば、どこでも雇ってもらえると思います。
なんなら独立もできそうです。

営業さんが転職する際の手土産的な感覚になっちゃいますが、「あなたの服薬指導が受けたい!」という人がいっぱいいる、のが数値で表れているのは、かなり強いかなーと思います。
私には絶対出来ないので、うらやましいです。

 

結語:個人的にはパパママ薬局にがんばって欲しい

個人的には、薬局のあるべき姿は個人経営だと思います。
ドイツの薬局16),17)が理想。

m3.com ドイツの薬局・薬剤師レポート
ドイツでは薬局は営利目的のためだけに経営されるべきでないという理念から、薬局開設者は薬剤師の資格が必要で、他資本や外国資本によるチェーン店経営を許可していません。

医薬分業推進政策の評価と課題
ドイツの薬局はチェーン店がなく(一人4店まで)基本的に独立店である。
ほぼ100%の医薬分業で、入院調剤も院外である。

なので、個人薬局の経営を脅かす敷地内保険薬局には反対しております。

とはいってももう出来ちゃってますからねぇ…。
大病院以外に拡大しないことを祈るばかりでございます。

 

参考文献

1)敷地内薬局は33都道府県64施設に 日薬が都道府県薬の協力を得て調査, 日経DI, 2018年9月27日, https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/di/trend/201809/557981.html.
2)特掲診療料の施設基準等の一部を改正する件(告示), 厚生労働省, https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000196317.pdf.
3)災害医療センター、敷地内薬局の誘致計画を中止, 日経DI, 2016年10月21日, https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/di/trend/201610/548752.html.
4)第14回医療・介護・保育ワーキング・グループ資料 医薬分業推進の下での規制の見直しについて, 厚生労働省, 平成29年4月17日, http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/suishin/meeting/wg/iryou/20170417/170417iryou01.pdf.
5)日本薬剤師会 平成30年度事業計画, 日本薬剤師会, https://www.nichiyaku.or.jp/about/summary/publicationPlan.html.
6)「保険薬局の指定に係る留意事項通知の一部改正に伴うルールの適用に当たって(見解)」の件, 日本薬剤師会, https://www.nichiyaku.or.jp/assets/uploads/pr-activity/20160928pressrelease.pdf.
7)敷地内薬局、病診薬連携に悪影響‐日病薬・川上副会長, 薬読, 2016年11月25日, https://pharma.mynavi.jp/contents/yakuyomi/industry_news/%E6%95%B7%E5%9C%B0%E5%86%85%E8%96%AC%E5%B1%80%E3%80%81%E7%97%85%E8%A8%BA%E8%96%AC%E9%80%A3%E6%90%BA%E3%81%AB%E6%82%AA%E5%BD%B1%E9%9F%BF%E2%80%90%E6%97%A5%E7%97%85%E8%96%AC%E3%83%BB%E5%B7%9D%E4%B8%8A/.
8)【日病薬】敷地内薬局、認識は変わらず‐木平会長「好ましいものではない」, 薬事日報, 2018年8月3日, https://www.yakuji.co.jp/entry66492.html.
9)「医薬分業自体を見直す時期」、中川日医副会長, m3.com, https://www.m3.com/news/iryoishin/613778.
10)筑波大学附属病院アメニティモール整備運営事業, 筑波大学附属病院, http://www.hosp.tsukuba.ac.jp/wp-content/uploads/2017/06/20170621_2.pdf.
11)BOT, 建設・設備求人データベース, https://plant.ten-navi.com/dictionary/cat06/3778/.
12)「院外処方せんにおける疑義照会簡素化プロトコル」の運用について, 京都大学医学部附属病院, https://www.kuhp.kyoto-u.ac.jp/~yakuzai/yakkyoku/20150625.html.
13)病院向け「産休・育休代替薬剤師派遣サービス」を開始~常用型派遣として日本調剤の薬剤師を派遣~, 日本調剤(株), https://www.nicho.co.jp/corporate/info/19434/.
14)病院実務研修, 日本調剤(株), https://www.nicho.co.jp/career/educational/hospitaltraining.html.
15)敷地内に基本料10点でも出るワケ, 日経DI, 2018年5月17日, https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/di/feature/f180501/201805/555926.html.
16)ドイツの薬局・薬剤師レポート, m3.com, 2015年12月28日, https://www.m3.com/news/iryoishin/387132.
17)堀川 泰清, 医薬分業推進政策の評価と課題, http://www.u-hyogo.ac.jp/mba/pdf/SBR/2-1/225.pdf.
18)厚労省 薬局の「基本的な機能」で医師との連携で継続的な服薬指導求める “調剤”のみは淘汰へ, ミクスonline, 2018年10月19日, https://www.mixonline.jp/Article/tabid/55/artid/65493/Default.aspx.
19)平成27年3月12日規制改革会議公開ディスカッション(テーマ2:医薬分業における規制の見直し), 内閣府, http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kaigi/meeting/2013/discussion/150312/gidai2/agenda.html.
20)規制改革に関する第3次答申~多様で活力ある日本へ~(平成27年6月16日), 内閣府, http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kaigi/publication/150616/item1.pdf.

更新履歴
2018.11.6 公開
2018.11.12 大阪国際がんセンターの敷地内薬局名を「(詳細不明)」に修正。
(大阪阪神調剤薬局 大阪がんセンター店、あい薬局 大阪がんセンター店は門前薬局とのことです。ご指摘ありがとうございました!)