トラディアンス、ローブレナ、フィラジルが発売されました

11月20日、薬価収載と同日付で3製品が発売されています。

トラディアンス配合錠

販売名(一般名) 会社名 備考
トラディアンス配合錠AP・BP
(エンパグリフロジン/リナグリプチン)
日本ベーリンガー
コ・プロ:リリー
ジャディアンスとトラゼンタの配合剤
適応:2型糖尿病(ただし、エンパグリフロジン及びリナグリプチンの併用による治療が適切と判断される場合に限る。)

  
(日本ベーリンガーwebサイトより)

カナリア、スージャヌに続く、国内3つ目のDPP-4阻害薬とSGLT2阻害薬の配合剤です。
今回はトラゼンタとジャディアンス。

トラゼンタの良いところ(腎機能低下患者にも使える!)がガッツリ潰されてる気がしなくもない組合せですが、どちらも繁用されている薬剤なので切り替えは多そうです。

個人的にはミカムロ&ミコンビから連綿と続くAP・BPをそろそろ止めて欲しい。
みんなLD・HDに統一したらどうや…!

参考 2型糖尿病治療剤「トラディアンス配合錠AP/BP」発売のお知らせ ~DPP-4阻害剤「トラゼンタ錠」とSGLT2阻害剤「ジャディアンス錠」との配合剤~日本ベーリンガーインゲルハイム

 

ローブレナ錠

販売名(一般名) 会社名 備考
ローブレナ錠25mg・100mg
(ロルラチニブ)
ファイザー ALK阻害薬
適応:ALKチロシンキナーゼ阻害剤に抵抗性又は不耐性のALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌
*条件付き早期承認制度対象品目


(ファイザーwebサイトより)

錠剤の写真しかなかったのですが、実際は在庫管理にやさしい10錠包装(100mg)です(25mgは40錠包装)。

2017年のBest of ASCO in Japanでは、「ローブレナとザーコリとアレセンサは得意な耐性変異が違うから、ローブレナが承認されたら薬剤のローテーションが出来るかもね~。」みたいなディスカッションがありました。

アレセンサ一強時代のALK肺がん業界で、使いどころは限られそうですが、実は重要な薬剤なのかも。

参考 第三世代のALK陽性非小細胞肺がん治療薬「ローブレナ錠25㎎、同100㎎」本日発売ファイザー

 

フィラジル皮下注シリンジ

販売名(一般名) 会社名 備考
フィラジル皮下注30mgシリンジ
(イカチバント酢酸塩)
シャイアー 適応:遺伝性血管性浮腫の急性発作

ダウンロードできそうな製剤写真が無かった。
フツーのプレフィルドシリンジ製剤に見えます。

フィラジルは遺伝性血管性浮腫(HAE)という、遺伝疾患の薬剤です。3)
患者さんは国内に約2,500人と推定されていますが、治療している患者さんは450人程にとどまっています。3)

身体のさまざまな場所が腫れる疾患で、顔や唇が腫れて別人のようになったり、消化管が腫れて激しい腹痛や嘔吐・下痢などを発症したりします。4)
症状は2~5日程度で収まりますが、繰り返し出現し、喉が腫れた場合は呼吸困難や窒息を起こす可能性もあります。4)

また、発作がいつ起こるかわからないため、患者さんは常に不安を抱えており、毎年20~100日分の社会的活動を損失しているとも言われています。5)

治療薬として、いままではベリナートPという静注製剤がありました。
しかし静注製剤なので、発作時にその場で投与するというわけにはいかず、都度病院を受診しなければなりませんでした。
メチャメチャおなか痛い&顔が腫れてるのに、病院に行くってツライですよね…。

 

というわけで今回出たフィラジルは、急性発作時におうちで自己投与できる製剤です。
個人的にはエピペンくらいのブレイクスルーだと思います!
発作時にその場で治療できるって素晴らしいですよね!

「発作時にイチイチ病院に行くヒマなぞ無いわ!」という方でも、使いやすい製剤ではないでしょうか。
いや、ホントに自己投与可能になって良かった。ナイス学会&厚生労働省。5)
願わくば、エピペン的なデバイスにしていただけるともっと嬉しい!

 

ただし、フィラジルはHAEの診断がついていないと処方してもらえません。
HAEは医師の間でも認知度が低い疾患で、アンケート調査では半数以上の医師が知りませんでした。6)
なので、近所のお医者さんはHAEを知らない可能性があります。

HAEの診断や治療が出来るのは、ほとんどが大学病院の専門のお医者さんです。
下記のHAE情報センターに診断・治療可能な医療機関のリストがありますので、「もしかしてあの症状はHAE…!?」と思った方は、見てみてはいかがでしょうか。

参考 HAE情報センターCSLベーリング

患者会もありますので、こちらもご参考までです。

参考 くみーむ 遺伝性血管性浮腫患者会NPO法人血管性浮腫情報センター

 

参考 シャイアー・ジャパン 遺伝性血管性浮腫(HAE)の新規治療薬 「フィラジル皮下注30㎎シリンジ」を発売シャイアー

 

参考文献

1)2型糖尿病治療剤「トラディアンス配合錠AP/BP」発売のお知らせ ~DPP-4阻害剤「トラゼンタ錠」とSGLT2阻害剤「ジャディアンス錠」との配合剤~, 日本ベーリンガーインゲルハイム(株), https://www.boehringer-ingelheim.jp/press-release/20181120_01.
2)第三世代のALK陽性非小細胞肺がん治療薬「ローブレナ錠25㎎、同100㎎」本日発売, ファイザー(株), https://www.pfizer.co.jp/pfizer/company/press/2018/2018_11_20.html.
3)シャイアー・ジャパン 遺伝性血管性浮腫(HAE)の新規治療薬 「フィラジル皮下注30㎎シリンジ」を発売, シャイアー(株), https://www.shire.co.jp/newsroom/2018/november/azmh9x.
4)HAEを理解する HAE情報センター, CSLベーリング(株), http://www.hae-info.jp/about/about.html.
5)イカチバント(欧米での販売名:FIRAZYR)の在宅医療における自己注射保険適用の要望書, 厚生労働省, https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000400324.pdf.
6)あまり知られていないHAE HAE情報センター, CSLベーリング(株), http://www.hae-info.jp/about/unknown.html.