抗HIV薬「ジャルカ配合錠」が承認されました

りんご
2018年11月26日、新医薬品のジャルカ配合錠が承認されました!
みかん
緊急薬価収載(多分来月?)されると予測しています。

製造販売承認品目の一覧

新医薬品

販売名(一般名) 会社名 備考
ジャルカ配合錠
(ドルテグラビルナトリウム/リルピビリン塩酸塩)
ヴィーブヘルスケア
*販売:GSK
*販売提携:塩野義
適応:HIV-1感染症

ジャルカは、テビケイとエジュラントの配合剤です。
この製品のポイントは、国内初の2成分で治療可能な配合剤である点です。

現在の抗HIV治療(レジメン)は、キードラッグ1剤にバックボーン2剤を併用する3剤(場合によっては4剤)併用療法が主流です。2)

3~4剤を併用する理由は、薬剤耐性ウイルスの出現を減らすためです。
これまでも2剤レジメンは挑戦されてきましたが、既存レジメンと同等の成績を示すことが出来ていませんでした。2)

今回、ようやく既存レジメンに劣らない2剤レジメンが出てきた!という点では、ジャルカは結構画期的な薬剤かなと思います。

 

ジャルカの対象患者は?

ジャルカは第一選択薬ではありません。
長期に投与している患者さんで、何らかの理由で「この成分止めたいな~。」という際に、選択肢にあがる薬剤です。

具体的には、ウイルス学的抑制が得られた患者(=治療が成功している患者)に対し、既存治療からの変更で使われます。1)

効能又は効果に関連する使用上の注意
1. 本剤は、ウイルス学的失敗の経験がなく切り替え前6ヵ月間以上においてウイルス学的抑制(HIV-1 RNA量が50copies/mL未満)が得られており、本剤の有効成分に対する耐性関連変異を持たず、本剤への切り替えが適切であると判断される抗HIV薬既治療患者に使用すること(「臨床成績」の項参照)。

欧州ガイドラインでは、ジャルカは「ウイルス学的抑制が得られた陽性社における治療変更」の「クラススペアリング戦略」の項に記載されています。4)
(まだ日本のガイドラインには掲載されていません。収載されたら追補出してくれるはず!)

クラススペアリング戦略(レジメン)は、特定の薬物による有害事象を回避するために使用する戦略です。5)
「治療はうまく行ってるけど、この薬の副作用がツライな~」ってときに、その薬だけ取り除く。というイメージですかね。
(ちょっとこの辺自信が無いので、専門家のツッコミ待ちです!)

治療変更の適応もまとめてくださってるので、ご参考まで。4)
日本語版があるって素晴らしいですね。

適応
1.レジメンに含まれている1種類以上の抗レトロウイルス薬によって引き起こされる既知の毒性
これらの副作用による治療変更の例:
脂肪萎縮(d4T、AZT)、中枢神経系の有害事象(EFV)、下痢(PI/r)および黄疸(ATV)、
近位尿細管障害、および低骨塩密度(TDF)。

2.長期毒性の予防。
これらの積極的な治療変更の例:
d4TまたはAZTの投与を受けている陽性者における脂肪萎縮の予防およびTDFによる近位尿細管障害予防。

3.重篤な薬物相互作用の回避

4.妊娠の予定

5.高齢化や合併疾患により、現行レジメンの薬剤がCVDのリスク、代謝パラメータなどに悪影響を及ぼす可能性がある場合

6.簡便化:服薬錠剤数による負担の軽減、食事制限の調節およびアドヒアランスの改善を目的とする

7.薬物相互作用がある場合のHCV治療の開始については、DAAとARV薬の薬物相互作用を参照のこと

服用する薬が増えると副作用も増えますし、ライフステージによって許容できる副作用も変わりますからね。
今回、いつもの抗HIV薬とはちょっと違う位置づけの薬剤が出たことで、治療をもっと楽に進められる人が増えると良いなぁと期待しています!

実際どのレジメンから切り替えたのか、については、多分インタビューフォームに記載されているかと~。(まだ出てなかった。)

 

参考文献
1) ジャルカ配合錠, 添付文書.
2)抗HIV治療ガイドライン(2018年3月発行), HIV感染症及びその合併症の課題を克服する研究班, https://www.haart-support.jp/guideline.htm.
3)Guidelines for the Use of Antiretroviral Agents in HIV-1-Infected Adults and Adolescents, https://aidsinfo.nih.gov/contentfiles/lvguidelines/adultandadolescentgl.pdf.
4)EACS Guidelines日本語版, European AIDS Clinical Society, http://www.eacsociety.org/guidelines/eacs-guidelines/eacs-guidelines.html.
5)Hiv関連障害を治療するための方法及び組成物, GooglePatents, https://patents.google.com/patent/JP2017520610A/ja.