エプクルーサ、デムサー等が発売されました

2月26日、新医薬品の薬価収載に伴い、以下の新医薬品が発売されました。

エプクルーサ配合錠

販売名(一般名) 製造販売会社 備考
エプクルーサ配合錠
(ソホスブビル/ベルパタスビル)
ギリアド 適応:・前治療歴を有するC型慢性肝炎又はC型代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善
・C型非代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善


(ギリアドwebサイトより)

参考 ギリアド・サイエンシズ C型慢性肝炎ウイルス感染症の治療薬「エプクルーサ配合錠」(ソホスブビル/ベルパタスビル)を新発売[PDF]ギリアド・サイエンシズ

エプクルーサは、国内初のC型非代償性肝硬変に適応を持つDAA(直接作用型抗ウイルス剤)です。

治療できる患者さんの範囲が広がったのは嬉しいですね。
特に非代償性肝硬変は、2014年から始まったインターフェロンフリーブームに取り残されていた群なので、ようやく治療法ができて本当に良かった。
これで肝臓がんになる人も減ったら、言うこと無いですねぇ。

といっても国内第3相試験では、Child-Pugh分類13点以上の患者さんは除外されているなど、現状、全員に届けられるクスリではなさそうです。4)

肝臓学会からも「治療は専門医にお任せください!」的なリリースが出てますので、もしチャレンジしたい患者さんがいらっしゃったら、何はともあれ肝臓病専門医に受診しましょう。

専門医のリストは、リンク先で紹介されています。

一方、本邦におきましては、C型非代償性肝硬変のDAAによる治療実績はなく、また本剤の国内第3相臨床試験ではChild-Pugh分類で13点以上の患者は除外されております。
従って、本剤による重篤なC型非代償性肝硬変の治療は、診療実績のある肝臓専門医によって注意深く行われることが重要だと考えております。

つきましては、本剤によるC型非代償性肝硬変の治療については、日本肝臓学会肝臓専門医へご紹介いただきますよう、宜しくお願いします。

参考 C型非代償性肝硬変の治療に対する「エプクルーサ配合錠」適正使用へのご協力のお願い日本肝臓学会

エプクルーサの詳細は記事にまとめています。
ご興味ある方はどうぞ。

新薬雑感:エプクルーサ配合錠

 

デムサーカプセル

販売名(一般名) 製造販売会社 備考
デムサーカプセル250mg
(メチロシン)
小野 チロシン水酸化酵素阻害薬
適応:褐色細胞腫のカテコールアミン分泌過剰状態の改善
参考 チロシン水酸化酵素阻害剤「デムサーカプセル250mg」新発売のお知らせ[PDF]小野薬品工業

デムサーは、褐色細胞腫に使う新しい作用機序の薬剤です。

褐色細胞腫は、副腎髄質などから発生する神経内分泌腫瘍です。
副腎髄質がカテコールアミン生成工場なので、その意思を引き継ぐ褐色細胞腫もカテコールアミンをガンガン生成します。
なので、ドパミンやアドレナリンが過剰になってしまう、そんな疾患です。

デムサーは、カテコールアミン生成の律速酵素である「チロシン水酸化酵素」を阻害する薬剤です。
酵素を阻害することで体内のカテコールアミンの生成が抑制され、カテコールアミン過剰に伴う症状を改善します。

というわけで対症療法的なオクスリですね。
今まで使われていた、交感神経受容体遮断薬(αブロッカーとかβブロッカーとか…)で効果不十分な患者さんに対して、原則上乗せで投与します。

個人的にはQOLを改善する薬剤が好きなので、デムサーの活躍にも期待しております!

 

ビラフトビカプセル・メクトビ錠

販売名(一般名) 製造販売会社 備考
ビラフトビカプセル50mg
(エンコラフェニブ)
小野 BRAF阻害剤(メクトビと併用)
適応:BRAF遺伝子変異を有する根治切除不能な悪性黒色腫
メクトビ錠15mg
(ビニメチニブ)
小野 MEK阻害剤(ビラフトビと併用)
適応:BRAF遺伝子変異を有する根治切除不能な悪性黒色腫
参考 BRAF阻害剤「ビラフトビカプセル50mg」およびMEK阻害剤「メクトビ錠15mg」新発売のお知らせ[PDF]小野薬品工業

ビラフトビ&メクトビは、悪性黒色腫に使うBRAF阻害剤とMEK阻害剤です。
あれです。タフィンラー&メキニストと一緒(雑)。

悪性黒色腫薬物療法の手引2017によると、根治切除不能な悪性黒色腫は、BRAF遺伝子変異があるかで治療法が分かれます。
変異がある場合はBRAF阻害剤(+MEK阻害剤)、無い場合は免疫チェックポイント阻害薬(オプジーボとかですね)での治療を考慮します。5)

というわけで、ビラフトビ&メクトビもタフィンラー&メキニストと同様、BRAF変異陽性例での治療選択肢のひとつになると思われます。

 

悪性黒色腫も、C型肝炎と一緒で2014年から治療法がガンガンに変わってますね~。
今思うと、2014年9月の薬価収載って大物ばっかりでした。6)

ダクルインザ&スンベプラ(C型肝炎、インターフェロンフリー療法の幕開け)でしょ、オプジーボ(免疫チェックポイント阻害薬初登場)でしょ、シダトレン(花粉症舌下減感作療法の幕開け)でしょ~。

アレセンサさんとザイティガさんもいらっしゃいましたね。
うむ、この回やっぱすごいな。

やっぱ新薬は資料を見ているだけで心ときめきますね!
これからもステキな新薬を出来る限り紹介していきたいです~。

参考文献
1)ギリアド・サイエンシズ C型慢性肝炎ウイルス感染症の治療薬「エプクルーサ配合錠」(ソホスブビル/ベルパタスビル)を新発売, ギリアド・サイエンシズ(株), https://www.gilead.co.jp/-/media/japan/pdfs/press-releases/02-25-2019/epclusa-launch_190225.pdf?la=ja-jp&hash=B5A9EEBA2705D386BB4C4C528160BB11.
2)チロシン水酸化酵素阻害剤「デムサーカプセル250mg」新発売のお知らせ, 小野薬品工業(株), https://www.ono.co.jp/jpnw/PDF/n19_0226_1.pdf.
3)BRAF阻害剤「ビラフトビカプセル50mg」およびMEK阻害剤「メクトビ錠15mg」新発売のお知らせ, 小野薬品工業(株), https://www.ono.co.jp/jpnw/PDF/n19_0226_2.pdf.
4)C型非代償性肝硬変の治療に対する「エプクルーサ配合錠」 適正使用へのご協力のお願い, 日本肝臓学会, http://www.jsh.or.jp/news/archives/134.
5)悪性黒色腫(メラノーマ)薬物療法の手引 version 1. 2017, 日本皮膚悪性腫瘍学会, http://www.skincancer.jp/tebiki_malignant_melanoma.pdf.
6)新医薬品一覧表(平成26年9月2日収載予定) , 厚生労働省, https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000055583.pdf.