原則禁忌から禁忌への移行が検討されている薬たち(新添付文書対応)

2019年4月1日から添付文書の「原則禁忌」が廃止になります。
(既存薬は経過措置期間あり)

それに伴い、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会で、原則禁忌の取扱いについて議論されています。

この記事では、2019年3月11日に上記調査会で検討された「原則禁忌から禁忌への移行が検討されている薬剤」についてまとめました。

 

原則禁忌が無くなる件のおさらい

なんでなくなるの?

全国の医師・薬剤師に理解度調査を実施したところ、人によって原則禁忌の位置づけの理解が違ったためです。
(半数が「原則禁忌は禁忌と同等」、もう半数が「原則禁忌は慎重投与・併用注意と同等」と回答)1)

そこで今回の改訂にて原則禁忌を廃止し、「禁忌」または「特定の背景を有する患者に対する注意(新設)」等に移行することになりました。1)

具体的にはどうなるの?

1. 「原則禁忌」から「禁忌」に移行するもの

今後「使用上の注意」の改訂通知が発出され、「原則禁忌」から「禁忌」に記載が移行します。2)
新添付文書だけでなく、現状の添付文書でも改訂される予定です。2)

なお、使用上の注意の改訂は、以下の場所へ掲載されます。

参考 使用上の注意の改訂指示通知(医薬品)PMDA

2. 「原則禁忌」から「特定の背景を有する患者に対する注意」に移行するもの

現状の添付文書では「原則禁忌」のままで、新添付文書になる際に「特定の背景を有する患者に対する注意」に記載が移行します。2)

こっちは旧添付文書と新添付文書で記載場所が変わるので注意。

 

「原則禁忌」から「禁忌」への移行が検討されている品目

まだ本決定ではないのであしからず。
決定したら使用上の注意の改訂が通知されると思われます。

一般名〔主な販売名〕 原則禁忌から禁忌に移行する予定の患者群
アモバルビタール
〔イソミタール原末〕

セコバルビタールナトリウム
〔注射用アイオナール・ナトリウム〕

ベントバルビタールナトリウム
〔ラボナ錠〕
急性間歇性ポルフィリン症の患者
バルプロ酸ナトリウム
〔デパケン錠・R錠・シロップ・細粒〕
〔セレニカR錠・R顆粒〕
妊娠又は妊娠している可能性のある婦人
(片頭痛に使用する場合)
ヒドロキシエチルデンプン70000
〔ヘスパンダー輸液〕
〔サリンヘス輸液〕
発疹等過敏症の既往歴のある患者
ペニシラミン
〔メタルカプターゼカプセル〕
骨髄機能の低下している患者
(関節リウマチに使用する場合)
セフェム系抗生物質
ペニシリン系抗生物質
グリコペプチド系抗生物質
ペネム系抗生物質
カルバペネム系抗生物質
本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者

詳細

アモバルビタール、セコバルビタールナトリウム、ベントバルビタールナトリウム

バルビツール酸系催眠鎮静薬3剤は、原則禁忌のうち「急性間歇性ポルフィリン症の患者」が禁忌に移行する予定です。2)

理由 ・海外添付文書で禁忌
・類薬添付文書で禁忌
・ガイドラインで禁忌
関連学会の意見 ・日本精神神経学会:改訂案に対して異議なし
・日本麻酔科学会:適正な判断だと考える

 

バルプロ酸ナトリウム

バルプロ酸の妊婦に対する投与は、一律に禁忌へ移行することに対して日本精神神経学会から意見が出ました。2)
一律に禁忌とすべきでない理由は、以下のとおり。

・諸外国でも一律禁忌とされているわけではないこと。
・てんかん・双極性障害は若年で発症される方が非常に多く、妊娠が判明したからといって急に薬剤を切り替えることが不可能な場合が多いこと。

*例:
FDA(2016):
てんかん・双極性障害についてはカテゴリーD
(強力なリスクがありながらも妊婦に強力な利点があれば受容される)

片頭痛についてはカテゴリーX
(妊婦に対してリスクがいかなる利点を上回る)

EMA(2018):
片頭痛・双極性障害については「妊娠中に使用してはならない」
てんかんについては「妊娠中に使用してはならない。しかしながら、一部のてんかん女性患者においては中止が困難なことがあると認識されており、妊娠中に専門家の適切なケアの下に治療を継続しなければならないことがある」

というわけで、片頭痛に対して使う場合は「禁忌」てんかん等に対して使う場合は「特定の背景を有する患者に対する注意」へ記載が移行するようです。2)

理由 ・海外添付文書で禁忌
関連学会の意見 ・日本てんかん学会:てんかんについて意見に賛同
・日本精神神経学会:「躁病および躁うつ病の躁状態」に対し使用する場合は「禁忌」とすべきでない
・日本神経学会:片頭痛について意見に賛同
・日本頭痛学会:片頭痛について意見に賛同

 

ヒドロキシエチルデンプン70000

ヒドロキシエチルデンプン(HES)70000の「過敏症」の記載は、類薬のHES13000〔ボルベン輸液〕で禁忌に設定されていることから、同様に禁忌へ移行することになりました。2)

理由 ・類薬添付文書で禁忌
関連学会の意見 ・日本麻酔科学会:適正な判断だと考える

 

ペニシラミン

ペニシラミンの「腎機能低下患者」の記載は、類薬のブシラミン〔リマチル錠〕で禁忌に設定されていることから、同様に禁忌へ移行することになりました。2)

理由 ・海外添付文書で禁忌
・類薬添付文書で禁忌
関連学会の意見 ・日本リウマチ学会:意見に賛同する

 

セフェム系・ペニシリン系・グリコペプチド系・ペネム系・カルバペネム系抗生物質

抗生物質の「過敏症」に関する記載は、本剤の成分に関する事項が禁忌へ移行することになりました。2)

類薬についてはどうなるのかわからなかった…。
旧添付文書は「原則禁忌」のままにするようなので2)、「特定の背景を有する患者に対する注意」に移行するのかなぁ。

理由 (一部の薬剤について)
・海外添付文書で禁忌
・類薬添付文書で禁忌
関連学会の意見 ・日本化学療法学会:特に異論なし
・日本感染症学会:問題なし

 

他にも検討中の薬剤があるようなので、議題に上がったら都度更新していく予定です~。

 

参考文献
1)医薬品医療機器等安全性情報No.344, PMDA, https://www.pmda.go.jp/files/000218617.pdf.
2)添付文書記載要領の改正に伴う原則禁忌の取扱いについて(平成30年度第12回安全対策調査会資料), 厚生労働省, https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/000486504.pdf.