2月の第一・第二部会で審議・報告された品目が適応追加されたようなので、まとめました。
目次
効能等追加品目の一覧
今回承認された効能等追加品目の一覧です。
会社名をクリックすると、各社のニュースリリースに飛びます。
(直PDFのリンクもありますので、ご注意ください。)
効能等追加品目
「腫瘍特異的T細胞輸注療法」はキムリアのことですね。
今回キムリア関連の効能追加がいっぱいあります。
販売名(一般名) | 会社名 | 効能等追加事項 |
ビンダケルカプセル20mg (タファミジスメグルミン) |
ファイザー | 追加適応:トランスサイレチン型心アミロイドーシス(野生型及び変異型) |
フォシーガ錠5mg・10mg (ダパグリフロジンプロピレングリコール水和物) |
アストラゼネカ=小野 | 追加適応:1型糖尿病 |
リウマトレックスカプセル2mg (メトトレキサート) |
ファイザー | 追加適応:局所療法で効果不十分な尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症 *事前評価済み公知申請(2018.11.8より保険適用) |
アクテムラ点滴静注用80mg・200mg・400mg (トシリズマブ(遺伝子組換え)) |
中外 | 追加適応:腫瘍特異的T細胞輸注療法に伴うサイトカイン放出症候群 |
オノアクト点滴静注用50mg・150mg (ランジオロール塩酸塩) |
小野 | 追加適応:生命に危険のある下記の不整脈で難治性かつ緊急を要する場合: 心室細動、血行動態不安定な心室頻拍 |
デュピクセント皮下注300mgシリンジ (デュピルマブ(遺伝子組換え)) |
サノフィ | 追加適応:気管支喘息(既存治療によっても喘息症状をコントロールできない重症又は難治の患者に限る) |
点滴静注用ホスカビル注24mg/mL (ホスカルネットナトリウム水和物) |
クリニジェン | 追加適応:造血幹細胞移植後のヒトヘルペスウイルス6脳炎 |
ハイゼントラ20%皮下注1g/5mL・2g/10mL・4g/20mL (pH4処理酸性人免疫グロブリン) |
CSLベーリング | 追加適応:慢性炎症性脱髄性多発根神経炎の運動機能低下の進行抑制(筋力低下の改善が認められた場合) |
リツキサン点滴静注100mg・500mg (リツキシマブ(遺伝子組換え)) |
全薬=中外 | 追加適応:CD20陽性の慢性リンパ性白血病 |
キロサイドN注400mg・1g (シタラビン) |
日本新薬 | 追加適応:腫瘍特異的T細胞輸注療法の前処置 |
シタラビン点滴静注液400mg・1g「テバ」 | 武田テバファーマ | |
注射用エンドキサン注射用100mg・500mg (シクロホスファミド水和物) |
塩野義 | |
トレアキシン点滴静注用25mg・100mg (ベンダムスチン塩酸塩) |
シンバイオ=エーザイ | |
フルダラ静注用50mg (フルダラビンリン酸エステル) |
サノフィ | |
ベプシド注100mg ラステット注100mg/5mL (エトポシド) |
BMS 日本化薬 |
|
エトポシド点滴静注液100mg「サンド」 エトポシド点滴静注100mg「タイヨー」 エトポシド点滴静注液100mg「SN」 |
サンド 武田テバファーマ シオノケミカル=光 |
留意事項通知・適正使用に関する通知が出ています
ビンダケル:該当の患者要件をレセプトに記載
適切な患者に使用してね~。という旨がつらつら書いてありますね。
レセプトには患者要件のどちらに該当するかを記載すること、とのことです。3)
ビンダケルカプセル20mg
(1)本製剤の効能・効果に関連する使用上の注意において「本剤の適用にあたっては、最新のガイドラインを参照し、トランスサイレチンアミロイドーシスの診断が確定していることを確認すること。」とされていることから、トランスサイレチンアミロイドーシスの診断及び治療に精通した医師のもとで、本剤の投与が適切と判断される症例に使用すること。(2)トランスサイレチン型心アミロイドーシス(野生型及び変異型)
1)本製剤の効能・効果に関連する使用上の注意において「NYHA心機能分類III度の患者では、NYHA心機能分類I・II度の患者より相対的に本剤の有効性が低い可能性があるので、本剤の作用機序、及び臨床試験で示唆されたNYHA心機能分類と有効性の関係を十分に理解し、患者の状態を考慮した上で、本剤投与の要否を判断すること。」及び「NYHA心機能分類IV度の患者における有効性及び安全性は確立していない。」とされているので、使用に当たっては十分留意し、本剤の初回投与に当たっては、NYHA心機能分類I~III度の患者を対象とすること。2)本製剤を「トランスサイレチン型心アミロイドーシス(野生型及び変異型)」の効能・効果に使用する場合、本製剤の薬剤料については、次の1又は2のすべての要件を満たした場合に算定でき、いずれに該当するかを診療報酬明細書の摘要欄に記載すること。(「患者要件1」又は「患者要件2」と記載)
1. 野生型の場合
ア 心不全による入院歴又は利尿薬の投与を含む治療を必要とする心不全症状を有すること
イ 心エコーによる拡張末期の心室中隔厚が12mmを超えること
ウ 組織生検によるアミロイド沈着が認められること
エ 免疫組織染色によりTTR前駆タンパク質が同定されること
2. 変異型の場合
ア 心筋症症状及び心筋症と関連するTTR遺伝子変異を有すること
イ 心不全による入院歴又は利尿薬の投与を含む治療を必要とする心不全症状を有すること
ウ 心エコーによる拡張末期の心室中隔厚が12mmを超えること
エ 組織生検によるアミロイド沈着が認められること
アクテムラ:使用に当たっては十分留意すること
アクテムラは、「使用時には最新の情報を参考にしてね!」と記載。3)
まぁキムリアを使うような高度な病院でしたら、もちろん最新のガイドラインを参照されると思います~。
(3)アクテムラ点滴静注用80mg、同200mg 及び同400mg
(略)
3. サイトカイン放出症候群の治療の場合
本製剤の使用上の注意に、「本剤の投与にあたっては、学会のガイドライン等の最新の情報を参考に適応患者を選択し、その他の対症療法の実施とともに使用すること。」と記載されているので、使用に当たっては、腫瘍特異的T細胞輸注療法に関するガイドラインを含む最新の情報を参考にするよう十分留意すること。
リツキサン:CD20陽性の検査実施年月日をレセプトに記載
リツキサンは抗体製剤の良くある追記。
CD20陽性の慢性リンパ性白血病の場合も、CD20陽性の検査実施日をレセプトに書いてね~、と追記されました。3)
(9)リツキサン点滴静注100mg 及び同500mg
2. 診療報酬請求上の取扱い
CD20陽性のB細胞性非ホジキンリンパ腫、CD20陽性の慢性リンパ性白血病及び免疫抑制状態下のCD20陽性のB細胞性リンパ増殖性疾患に用いる場合は、診療報酬明細書の摘要欄に、CD20陽性を確認した検査の実施年月日について記載すること。
なお、当該検査を実施した月のみ実施年月日を記載すること。
ただし、本剤の初回投与に当たっては、必ず実施年月日を記載すること。
デュピクセント:施設要件と患者要件をレセプトに記載
デュピクセントはアトピー性皮膚炎のときと同じような感じですね。
気管支喘息では、施設要件と患者要件をレセプトに記載することが求められています。4)
2 抗 IL-4受容体αサブユニット抗体製剤留意事項通知の記に次のように加える。
(3) 気管支喘息
本製剤の投与開始に当たっては、次の事項を診療報酬明細書の摘要欄に記載すること。
1) 次に掲げる医師の要件のうち、本製剤に関する治療の責任者として配置されている者が該当する施設(「施設要件ア」から「施設要件ウ」までのうち該当するものを記載)
ア 医師免許取得後2年の初期研修を修了した後に、3年以上の気管支喘息に関する呼吸器科診療の臨床研修を含む4年以上の臨床経験を有していること。
イ 医師免許取得後2年の初期研修を修了した後に、3年以上の気管支喘息に関するアレルギー診療の臨床研修を含む4年以上の臨床経験を有していること。
ウ 医師免許取得後2年の初期研修を修了した後に、3年以上の小児科診療の臨床研修かつ3年以上の気管支喘息に関するアレルギー診療の臨床研修を含む4年以上の臨床経験を有していること。2) 本製剤投与前の長期管理薬による治療の状況及び投与理由(「患者要件ア」又は「患者要件イ」と記載)
ア 高用量吸入ステロイド薬(ICS)とその他の長期管理薬(長時間作用性β2刺激薬、長時間作用性ムスカリン受容体拮抗薬(成人のみ)、ロイコトリエン受容体拮抗薬、テオフィリン徐放製剤)を併用してもコントロール不良で、かつ全身性ステロイド薬の投与等が必要な喘息増悪を年に1回以上きたしている。
イ 中用量ICSとその他の長期管理薬(長時間作用性β2 刺激薬、長時間作用性ムスカリン受容体拮抗薬(成人のみ)、ロイコトリエン受容体拮抗薬、テオフィリン徐放製剤)を併用してもコントロール不良で、かつ全身性ステロイド薬の投与等が必要な喘息増悪を年に1回以上きたしている。3) 2)で「患者要件イ」に該当する場合は、ICSを当該用量以上に増量することが不適切であると判断した理由
気になるのは…
フォシーガ:スーグラに続き、1型糖尿病の適応追加
2018年12月に適応追加があったスーグラに続いて、フォシーガも1型糖尿病の適応を取得しました。
使い方と注意点は、ほぼスーグラと一緒です。
臨床試験でのインスリンの推奨減量基準がちょっと違う程度(スーグラは15%、フォシーガは20%以内)。
追加になったからといってバーッと使われるような適応ではありませんが、注意点が多いので薬剤師的には要チェックです。
少しでも1型糖尿病患者さんの負担が少なくなると良いなぁ。
デュピクセント:気管支喘息の適応追加
抗IL-4/13受容体抗体製剤のデュピクセントに、気管支喘息の適応が追加になりました。
これで喘息に使う抗体製剤は4剤目(ゾレア、ヌーカラ、ファセンラ、デュピクセント)ですかね。
適応は12歳以上で、自己投与可能。
ベースラインの血中好酸球数やFeNO、総IgE濃度が高い方が、効き目が良い傾向があるみたいです。2)
(なお、臨床試験ではベースラインの血中好酸球数が1,500/μL超の患者が除外。理由はわかりませんでしたが、ファセンラ&ヌーカラの方が適切だからかな…?)
(2019.3.28追記)
自己投与はまだダメでした!
添付文書案を見て早まりました…。
その注射が在宅自己投与可能かどうかは、運用基準に基づいて中医協で議論され、可否が決定します。6)
デュピクセントの場合は、まだ中医協の議題に上がっていません(見落としてたら申し訳なし)。
なので、学会から要望等があれば4月の中医協で議題に上がって、5月1日付で自己投与可能になるんじゃないかなぁと思います。
[在宅自己注射の対象薬剤に係る運用基準]6)
1. 対象薬剤
(1)対象薬剤の要件 補充療法等の頻回投与又は発作時に緊急投与が必要で、かつ、剤形が注 射によるものでなければならないもので、以下のいずれも満たすもの。
(ア)関連学会等のガイドライン等において、在宅自己注射を行うこと についての診療上の必要性が確認されているもの。
(イ)医薬品医療機器法上の用法・用量として、維持期における投与間 隔が概ね4週間以内のもの。
(ウ)上記を踏まえ、在宅自己注射指導管理料対象薬剤への追加の要望 があるもの。 なお、学会からの要望書については、下記1~4までの事項が記 載されているものであること。
1 自己注射の安全性の確認
2 自己注射の対象となる患者の要件
3 使用にあたっての具体的な留意点(廃棄物の適切な処理方法を 含む使用法の指導、病状の確認頻度、予想される副作用への対応 等)
4 頻回投与や長期間の治療が必要になる理由
(エ)発作時に緊急投与が必要な薬剤及び補充療法に使用する薬剤以外 の薬剤については、上記(ア)~(ウ)に加え、要望書を提出した 学会以外の学会の意見を確認する等、診療上の必要性について十分 な確認がなされていること。2 対象への追加時期(略)
(2)新医薬品のうち、14日以上の間隔をあけて注射を行う医薬品については、原則、投与期間が 14日間と制限されていることを踏まえ(※)、事実上、14日以内毎に医療機関を受診することとなるため、14日を超える投薬が可能になった後に、在宅自己注射指導管理料の対象薬剤に追加することを検討する。※ 新医薬品については、原則、薬価への収載の日の属する月の翌月の初日から起算して1年が経過するまでの間、投薬期間が14日に制限される
最適使用推進ガイドラインに記載の患者選択は、以下のとおり。4)
【患者選択について(成人)】
投与の要否の判断にあたっては、以下に該当する患者であることを確認する。
1. 喘息予防・管理ガイドラインを参考に、気管支喘息の確定診断がなされている。
2. 中用量又は高用量のICSとその他の長期管理薬(LABA〔配合剤を含む〕、LAMA、LTRA、テオフィリン徐放製剤)を併用してもコントロール不良で、かつ全身性ステロイド薬の投与等が必要な喘息増悪を年に1回以上きたす場合。
ただし、併用するICSが中用量の場合には、医師によりICSを当該用量以上に増量することが副作用等により困難であると判断された場合に限る。【患者選択について(小児)】
投与の要否の判断にあたっては、以下に該当する患児であることを確認する。
1. 小児気管支喘息治療・管理ガイドラインを参考に、気管支喘息の確定診断がなされている。
2. 中用量又は高用量のICSとその他の長期管理薬(LABA、LTRA、テオフィリン徐放製剤)を併用してもコントロール不良で、かつ全身性ステロイド薬の投与等が必要な喘息増悪を年に1回以上きたす場合。【患者選択について(成人・小児共通)】
本剤投与前の2型炎症に関連するバイオマーカー(血中好酸球数、FeNO、血清中総IgE 等)の値が高い場合は本剤の有効性が大きい傾向にある一方で、低い場合には本剤の有効性が十分に得られない可能性が示唆されている。
現時点では、本剤が適応となる患者を選択するためのバイオマーカーの基準値は存在しないが、本剤による治療開始に当たって、当該バイオマーカーを1つ以上測定し、その値と臨床成績を考慮した上で、適応するにふさわしいと考える患者にのみ投与すること。【投与の継続にあたって(成人・小児共通)】
本剤の臨床試験における有効性評価機関(投与開始後52週間)を踏まえ、投与開始後1年程度を目安に効果の確認を行い、効果が認められない場合には漫然と投与を続けないようにすること。
効果の確認までの期間の目安は、アトピーに使う場合は16週でしたが、喘息に使う場合は1年です。1), 4)
アクテムラ、化学療法剤:キムリア関連の適応追加
キムリアの承認に合わせて、適応追加が何個か。
まずはアクテムラ。
キムリアにほぼ必発*の、サイトカイン放出症候群対策に使います。
*2つの国際共同第2相試験で、それぞれ77%、58%に出現
サイトカインとは、細胞間のメッセージ物質のようなものです。
免疫細胞が異物(がんや病原体など)を見つけると、サイトカインを放出して様々な免疫反応を引き起こします。5)
代表的なサイトカインはインターフェロンやインターロイキンで、免疫系を活性化して異物を排除する働きを持っています。5)
サイトカイン放出症候群(サイトカインストーム)は、サイトカインが過剰に放出されることで発生する、キムリアの重大な副作用のひとつです。1)
多くは軽度~中等度のインフルエンザ様症状(発熱、悪心、悪寒、筋肉痛など)がみられる程度ですが、一部の患者さんでは重度の低血圧、頻脈、呼吸困難をきたし、死亡することもあります。1)
アクテムラはインターロイキン6受容体抗体製剤です。
インターロイキンの作用を阻害することでサイトカイン放出症候群の症状を軽減することが臨床試験で示され、今回承認に至りました。
キムリアの添付文書案には「特にサイトカイン放出症候群の緊急時に備えて、トシリズマブ(遺伝子組換え)の在庫を本品投与前に確保すること。」と記載されています。
次に各種化学療法剤。
キムリアの前処置に用います。
キムリアの添付文書案によると、「末梢血中の白血球数が1,000/μL超の場合、移植細胞の生着促進等の目的で、DNA合成阻害作用等の殺細胞作用、あるいはリンパ球減少に伴う免疫抑制作用を有する化学療法剤を投与し、本品の投与を行う。」そうです。
確定版の添付文書、早く出ないかな…!
2)各製品添付文書
3)医薬品医療機器等法上の効能・効果等の変更に伴う留意事項の一部改正等について, 保医発0326第1号, 平成31年3月26日, https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T190327S0030.pdf.
4)抗IL-4受容体αサブユニット抗体製剤に係る最適使用推進ガイドラインの策定に伴う留意事項の一部改正について, 保医発0326第3号, 平成31年3月26日, https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T190327S0050.pdf.
5)健康用語の基礎知識 サイトカイン, ヤクルト中央研究所, https://institute.yakult.co.jp/dictionary/word_5443.php.
6)在宅自己注射指導管理料の対象薬剤に係る運用基準, 厚生労働省, https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000400322.pdf.