販売情報提供活動ガイドラインの研修会に行ってきました

先日、医薬品医療機器レギュラトリーサイエンス財団のセミナーに行ってきたので、講義のメモを起こしてみました。

参考 医療の現場が必要としている情報をいかに伝えるか -販売情報提供活動ガイドライン施行に向けて-医薬品医療機器レギュラトリーサイエンス財団

ご講演は、厚労省の磯部先生、慶応義塾大学の望月先生、がん研有明の濱先生、ファイザーの片山先生です。

講義メモ

注意
講義を聴いたメモを元に作成しておりますので、間違っている部分があるかもしれません。
文責はわたし、小石まり子にあります。
間違っている部分を発見されましたら、ツイッターや当ブログの問合せページ等にて、ご指摘いただけると幸いです。

医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドラインが示すもの

・広告と情報提供の違い…一番のポイントは「顧客誘引性」があるかどうか。
(このクスリはこういう風に良いんです。このクスリはこういう人に良いんです。etc)
医療用医薬品の広告活動監視モニター事業(平成29年度)…疑義報告があった医薬品等の情報入手方法は、企業の製品説明会(34.6%)、口頭説明(30.8%)etc

・未承認薬の情報提供…FDAのドラフトガイダンスを参考に作成した。
提供する情報は化学的/客観的な情報に基づく必要がある。個人の考え・自験例等は×。
・未承認薬の症例報告の提供…チャンピオンデータだけ出さない。
・社内体制等…アメリカやフランスは、プロモーション資材はすべて行政チェックが入る。日本はそこまでしたくなかったので、社内チェックで始めることとした。
・某医療情報サイトに「これば無いよねー的な広告が結構ある…。」とつぶやいてらっしゃいました。

医療の現場が求めている情報とは何か・アカデミアの立場から

医療現場が求めている情報(特に新薬):
・新規性と特徴(薬理学的・製剤学的)
・作用機序
・臨床試験結果(Head to Head)
・製剤の利点/留意点
・薬物動態
・効能効果(今後の見通しも含む)
・用法用量(増減の具体的方法、患者毎の用量設定、投与タイミング、投与速度)
・禁忌とその理由
・重要な基本的注意(目標/指標、時期/頻度etc)
・副作用(発現時期/対処法、初期症状/経過、リスク因子etc)

患者向けの資材:
・病気・治療法全体の理解を助ける資材
・吸入・自己注射等の資材・動画
・適正使用を促す資材

不良品・欠品:
・原因と人体への影響
・供給再開の見通し
・代替品候補

医療の現場が求めている医薬品を適正かつ効果的に使用するための情報とは何か・医療の立場から

適応外資料の審議:
・あまり問題にならない…公知申請、希少疾病/小児に対する使用
・文献を集めて判断…海外承認済の薬剤、学会GLで推奨されている薬剤
・かなり議論する…慣習的に使用されている薬剤、症例報告に基づく使用

・企業が提供するwebサイトのメンテナンスが散見される。販売促進を期待するものではなく、薬物療法の解説を意図して開設されたサイトの場合は適応外使用情報が含まれていても閉鎖する必要はないのではないか…?
・現場が求めているのは「薬物治療実施の可否を臨床判断するときに参考となる、幅広い情報」。必ずしも正確な情報だけでは無い。根拠が乏しい場合は「エビデンスが乏しい」という情報をつけて提供して欲しい。

医療の現場が必要としている情報をいかに伝えるか

・プロモーション活動…承認範囲内で自社製品の適正使用を促す、処方に影響を及ぼすことを意図した活動
・プロモーションの基本…承認範囲内、正確かつバランスが取れている、科学的根拠が明らかな最新の情報に基づく
→本社で承認されたプロモーション資材のみ使用(論文提供も、MRは不可)
・非プロモーション活動…自社製品の使用奨励を意図していない活動。メディカルアフェアーズ部が担当。

総合討論

・自社の講演会で、他社製品のオフラベル情報の提供は×。
・症例報告をどう活用するかは、受け手側の責任が大きい。(メーカーがこういってたから!と責任転嫁するのはちょっと…)
・企業からの情報提供を、質も含めて評価できる人材育成が大事。大学教育や卒後教育が重要。
・未承認/適応外は、効いた症例の情報も大事だが、効かなかった症例の事例収集も必要。問合せ回答後のフォローが大事。(あの症例は、その後いかがでしたか?)
・MRはリアクティブな対応がメイン。「新しい論文が出ました!」と持って行くのはリスクが高い。
・GLが出来た背景&理由の啓発も必要。

 

感想

  • 質問力大事!
  • もらった情報の活用責任は、医療機関側にある!
  • 審査報告書読もう♪

医療従事者側が、積極的に動く時代が来たなーと感じました。

いままでは勉強会の開催から情報提供まで、メーカーさんが発信してくれるのを待つだけでも情報収集できていたかもしれません。
しかし、ガイドライン施行後は、医療従事者側から行動しないと、情報が集まらなりそうです。

多分ふんわりと「●●の情報ちょうだい~。」「●●の勉強会開催して~。」と言うだけだと、添付文書の読み合わせ会になる可能性が高い…。

逆に質問さえすれば色々答えてくれそうなので、添付文書や論文読んで疑問に思った点はガシガシ質問しましょう。
質問しないと情報がもらえない時代が到来するのだ…。

 

あとはもらった情報を活用した場合の責任の所在ですね。
これは今までもそうだと思いますが、もちろん医療機関側です。メーカーさんではない。
というか、メーカーさんを責めると、もう添付文書外の情報は提供してくれなくなるよね…。

白黒はっきりしない情報をどう臨床適用するかは、実臨床で患者さんと直接接する医療資格者が判断すべきだと思うのです。

ただ、DI室が無い施設だと難しい点もあると思うので、施設内の情報提供体制の整備が必要かもしれませんねぇ…。
ひとりで全責任を負う、みたいなことになると精神的にキツそう。
地域のDIセンターとか、一緒に考えてくれる場所があると良いのですが。

 

あとは審査報告書ね!
セミナーの中でも「審査報告書は国内唯一の第三者評価書」と言われていました。

なので、とりあえず審査報告書読もう!
読んだら疑問が色々出てくるので、それをメーカーさんにぶつけるべし。
そこまでしなくても、審査報告書を読んでPMDAが疑問に思った点を知っておくと、後々役に立つかも。

なお、PMDAのメディナビに登録していれば、審査報告書が公開されたタイミングでメールが来るので便利です(宣伝)。
使用上の注意の改訂等も当日中に連絡来ますので、まだ登録していない人はゼヒゼヒ登録してみてくださいませ!

参考 医薬品医療機器情報配信サービス(PMDAメディナビ)の利用についてPMDA