5月22日、新医薬品が薬価収載されました

5月15日開催の中医協にて、新医薬品の薬価収載が了承されました。
5月21日告示、薬価収載日は5月22日です。

2019年5月22日収載の新医薬品

同時期に承認されたフェインジェクトは、収載見送りになりました。

販売名(一般名) 規格単位 薬価
ビバンセカプセル20mg・30mg
(リスデキサンフェタミンメシル酸塩)
20mg1カプセル
30mg1カプセル
674.80円
747.70円
ロスーゼット配合錠LD・HD
(エゼチミブ/ロスバスタチンカルシウム)
LD1錠
HD1錠
177.00円
177.00円
スマイラフ錠50mg・100mg
(ペフィシチニブ臭化水素酸塩)
50mg1錠
100mg1錠
1,741.00円
3,379.90円
アーリーダ錠60mg
(アパルタミド)
60mg1錠 2,281.90円
アセレンド注100μg
(亜セレン酸ナトリウム)
100µg2mL1瓶 1,618円
レブコビ筋注2.4mg
(エラペグアデマーゼ(遺伝子組換え))
2.4mg1.5mL1瓶 846,349円
スキリージ皮下注75mgシリンジ0.83mL
(リサンキズマブ(遺伝子組換え))
75mg0.83mL1筒 239,374円
リサイオ点滴静注液100mg
(チオテパ)
100mg2.5mL1瓶 189,816円
ラビピュール筋注用
(乾燥組織培養不活化狂犬病ワクチン)
1瓶(溶解液付) 11,867円
ピリヴィジェン10%点滴静注5g/50mL・10g/100mL・20g/200mL
(pH4処理酸性人免疫グロブリン)
5g50mL1瓶
10g100mL1瓶
20g200mL1瓶
39,718円
78,580円
155,468円
テリルジー100エリプタ14吸入用・30吸入用
(フルチカゾンフランカルボン酸エステル/ウメクリジニウム臭化物/ビランテロールトリフェニル酢酸塩)
14吸入1キット
30吸入1キット
4,107.40円
8,692.80円

 

留意事項通知が発出(2019.5.22追記)

薬価収載の告示と同日付で、何品目か留意事項通知が出ています。

ロスーゼット、テリルジー:14日投薬期間制限の対象外

中医協でも議論されたとおり、配合剤2種は14日処方制限の対象外です。

2.掲示事項等告示の一部改正について
新医薬品(医薬品医療機器等法第14条の4第1項第1号に規定する新医薬品をいう。)については、掲示事項等告示第10第2号(1)に規定する新医薬品に係る投薬期間制限(14日分を限度とする。)が適用されるが、掲示事項等告示の改正によって、新たにロスーゼット配合錠LD、同配合錠HD、テリルジー100エリプタ14吸入用、同30吸入用が当該制限の例外とされた。

ビバンセ:留意事項通知に基づいて使用

ビバンセは留意事項通知に注意してね~という記載。
適正流通管理システムによる流通管理をするってことですね。

留意事項通知については、承認の記事でちょこっとまとめたのでご参考までです。

新医薬品等の製造販売が承認されました(2019年3月)

3.薬価基準の一部改正に伴う留意事項について
(1)ビバンセカプセル20mg及び同カプセル30mg
本製剤の使用に当たっての留意事項については、別添のとおり、「リスデキサンフェタミンメシル酸塩製剤の使用に当たっての留意事項について」(平成31年3月26日付け薬生総発0326第1号・薬生薬審発0326第1号・薬生安発0326第8号・薬生監麻発0326第50号厚生労働省医薬・生活衛生局総務課長・医薬品審査管理課長・医薬安全対策課長・監視指導・麻薬対策課長通知)により通知されたところであるので、十分留意すること。

スマイラフ:既存薬の効果不十分時に使用

これは類薬のオルミエントと同じ内容です。
第一選択薬じゃ無いよ~という記載。

3.薬価基準の一部改正に伴う留意事項について
(2)スマイラフ錠50mg及び同錠100mg
本製剤の効能・効果に関連する使用上の注意において「過去の治療において、メトトレキサートをはじめとする少なくとも1剤の抗リウマチ薬等による適切な治療を行っても、疾患に起因する明らかな症状が残る場合に投与すること。」とされているので、使用に当たっては十分留意すること。

ラビピュール:狂犬病の発病阻止(曝露後免疫)に限り算定可

これは、予防に使った場合は保険適用外ですよってことですね。

3.薬価基準の一部改正に伴う留意事項について
(3)ラビピュール筋注用
本製剤は、狂犬病の発病阻止(曝露後免疫)の目的で使用した場合に限り算定できるものであること。

 

薬価の決めかた

ビバンセ:コンサータと薬価合わせ【加算あり】

ビバンセは、同じ中枢神経刺激薬のコンサータ錠の1日薬価に合わせて算定されました。
算定方式は類似薬効比較方式(I)

ビバンセカプセル30mg:747.70円(1日薬価:747.70円)
コンサータ錠27mg:374.30円(1日薬価:712.10円)

1日薬価がちょっと高いのは、小児加算が5%ついてるからです。
コンサータは小児加算を受けてなかったらしい。

ちなみに30mgカプセルの外国のお値段は、イギリス303.70円、アメリカ1,038.80円(NADAC)。
日本はちょうど真ん中位ですねぇ…。

ロスーゼット:ゼチーアと薬価合わせ(配合剤の特例)

ロスーゼットは、アトーゼットと同様「ゼチーアの薬価の0.8倍+ロスバスタチン後発品の最低薬価」で算定されました。
新医療用配合剤の特例で算定

ロスーゼット配合錠LD:177.00円(1日薬価:177.00円)
ゼチーア錠10mg:177.00円(1日薬価:177.00円)
ロスバスタチン錠2.5mg「DSEP」他:21.70円(1日薬価:21.70円)

具体的には、まずゼチーア錠10mgの薬価0.8掛けに、ロスバスタチン錠2.5mg「DSEP」等を足した価格でまず算定。
計算結果がゼチーアの薬価を下回ったため、ゼチーアと同額で落ち着きました。

計算式はこんな感じ。
177.00円×0.8+21.70円=163.30円
163.30円≦177.00円
∴ ロスーゼットの価格は177.00円

結局アトーゼットと同額になりました。
なので、スタチンの好みで使い分ける感じですかねぇ。

スマイラフ:オルミエントと薬価合わせ

スマイラフ錠は、同じJAK阻害薬のオルミエント錠の1日薬価に合わせて算定されました。
算定方式は類似薬効比較方式(I)

スマイラフ錠50mg:1,741.00円(1日薬価:5,223.00円)
オルミエント錠4mg:5223.00円(1日薬価:5,223.00円)

特にいうことは無いですね。
強いて言えば、150mg(通常1回投与量)の規格が欲しかったなーと。

アーリーダ:イクスタンジと薬価合わせ

アーリーダは、同じアンドロゲン受容体シグナル伝達阻害薬のイクスタンジの1日薬価に合わせて算定されました。
算定方式は類似薬効比較方式(I)

アーリーダ錠60mg:2,281.90円(1日薬価:9,127.60円)
イクスタンジ錠80mg:4,563.70円(1日薬価:9,127.40円)

外国平均価格は1錠4,169.80円なので、世界に比べるとかなり安い。
ありがたいことです。

アセレンド:原価計算方式で算定【減算&加算あり】

低セレン血症治療薬のアセレンドは、類薬が無いため原価計算方式で算定されました。

ブログ書き始めてから初めての減算品目です。
セレン製剤がすでに院内製剤として使われていることから、革新性が低いとして減算対象になりました。
ただし、開発公募品目であること、小児適応があることから、減算率は5%に留まりました。

ついでに小児加算が5%入ってますね。
加算係数は1.0。素晴らしい。

院内製剤が医薬品になったといえば、直近(ってほどでもないけど…)だとロゼックスゲル(メトロニダゾール軟膏)ですかねぇ。
でもロゼックスのときは減算なかったよ?2)
こんなところでも薬価算定が渋くなってるのを感じます。

個人的には、開発公募品の減算はちょっと可哀想かな~と思います。

レブコビ:原価計算方式で算定【加算あり】

アデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損症治療薬のレブコビは、類薬が無いため原価計算方式で算定されました。
予測投与患者数は、ピーク時で8人。ウルトラオーファンです。

国内初のADA欠損症治療薬であり、造血幹細胞移植までの期間の全身状態を安定させうることから有用性加算が5%
希少疾病用医薬品であることから市場性加算が10%ついてます。
加算係数は0.2。内資なんだからもうちょっとがんばって!

スキリージ:トレムフィアと薬価合わせ

スキリージは、同じ抗IL-23p19抗体製剤のトレムフィアの1日薬価に合わせて算定されました。
算定方式は類似薬効比較方式(I)

スキリージ皮下注75mgシリンジ0.83mL:239,374円(1日薬価:5,699円)
トレムフィア皮下注100mgシリンジ:319,130円(1日薬価:5,699円)

特にいうことなしです。

リサイオ:原価計算方式で算定【加算あり】

小児悪性固形腫瘍に用いるリサイオは、類薬のメルファラン・ブスルファンが薬価収載後10年を経過しているため原価計算方式で算定されました。
予測投与患者数は、ピーク時で33人。少ない!

小児加算が5%ついてます。
加算係数は0.6

リサイオは、2011年3月に経過措置が終了したテスパミンと同じチオテパ製剤です。
テスパミンの経過措置時の薬価は5mg1管207円だったようなので3)、100mg分だと4,140円。
リサイオ点滴静注液100mgは189,816円。うん高い。
トレリーフを思い出させる高さです。

といってもイギリスでも107,456円、アメリカに至っては792.000円(AWP)なので、世界的にはそこまでボッタクリ価格ではないんですよね。
まぁ、ピーク時患者数が33人だと、高くなっちゃうのは致し方ないところ。

ラビピュール:組織培養不活化狂犬病ワクチンと薬価合わせ【加算あり】

ラビピュールは、同じ狂犬病ワクチンの組織培養不活化狂犬病ワクチンの1日薬価に合わせて算定されました。
算定方式は類似薬効比較方式(I)

ちなみに効能・効果は「狂犬病の予防及び発病阻止」ですが、保険適用になるのは「発病阻止」のみです。

ラビピュール筋注用g:11,867円(1治療薬価:71,202円)
組織培養不活化狂犬病ワクチン:11,302円(1治療薬価:67,812円)

比較薬が小児加算を受けていないため、小児加算が5%ついてます~。

なにげにピーク時予測投与患者数が430人なのが怖い。
狂犬病の予防じゃなくて、発病阻止のために投与する患者数が430人ですよね。
ということは狂犬病疑惑の動物に噛まれる人がこんくらいいるだろうってこと。
日本国内に対象患者が1日1人以上と考えると、狂犬病って結構身近な病気なんだな…と思います。

ペットの狂犬病ワクチン大事。

ピリヴィジェン:献血グロベニン-Iと薬価合わせ

ピリヴィジェンは、同じ免疫グロブリン製剤の献血グロベニン-Iの1日薬価に合わせて算定されました。
算定方式は類似薬効比較方式(I)

ピリヴィジェン10%点滴静注20g/200mL:155,468円(1日薬価:155,468円)
献血グロベニン-I静注用5000mg:38,867円(1日薬価:155,468円)

外国平均価格が196,378円なので、そこまで高くない…のか…?
ちなみに一番高いのはアメリカじゃ無くてドイツでした。ドイツ254,054円。

テリルジー:アノーロと薬価合わせ【加算あり】

テリルジーは、同じCOPD治療用配合吸入薬のアノーロの1日薬価に合わせて算定されました。
算定方式は類似薬効比較方式(I)

テリルジー100エリプタ30吸入用:8,692.80円(1日薬価:289.80円)
アノーロエリプタ30吸入用:7,924.70円(1日薬価:264.20円)

吸入ステロイド分のお値段がざっくり無視されている代わりに(?)、2剤配合吸入剤と比べて効果と利便性が高いため有用性加算が10%ついてます。

ちなみに3成分配合の降圧薬のミカトリオ配合錠は、新医療用配合剤の特例で算定されております。4)
なんでテリルジーは特例で算定されないんだろう~?と思ったら、外用配合剤は新医療用配合剤の特例の対象外でした。5)
まーキット代の扱いとか難しそうですもんね…。

ちなみにテリルジーちゃん、費用対効果の評価対象品目だそうです。

 

余談:バランス良き収載?

今回の薬価収載、特に特徴が無いかなーと思います。
内用薬4成分、注射薬6成分(うちワクチン1成分)、外用薬1成分とバランスも良い。

算定も原価計算3つ、類似薬効1が7つと至って普通。
強いて言えば小児加算対象品目が多い気がする。

小児の臨床試験は実施が難しいと聞くので、臨床試験してくれる製品が多いのはありがたいですね。

余談2:オプジーボ、また薬価が下がる(8/1適用)

オプジーボちゃん、また薬価下がるみたい…。
適用日は2019年8月1日。

費用対効果の評価をした結果、ちょっぴり下がるみたいです。
このちょっぴり下がる薬価と、薬価改定に伴う各社のゴタゴタを勘案すると、果たしてコストが見合っているのかとっても謎です。
10月?の消費税増税に伴う薬価改定と一緒で良かったんでないの…?

販売名(一般名) 現行薬価 改定薬価
オプジーボ点滴静注20mg
オプジーボ点滴静注100mg
オプジーボ点滴静注240mg
35,766円
173,768円
410,580円
35,407円
172,025円
406,463円

余談3:キムリアも薬価収載

同日付で、再生医療等製品のキムリアも薬価収載されます。

お値段3349万3407円!
これでも外国よりは安いのよ…!(イギリスが4117万2000円)

加算は、有用性加算が35%、市場性加算が10%ついてます。
有用性加算は、新規作用機序であること、既存治療で効果不十分例に対し有用性が示されているため。
市場性加算は希少疾病用医薬品なのでついておりますね。

あと最適使用推進ガイドラインが出る予定です。出ました。(2019.5.24追記)
B-ALLは、26歳以上の患者は投与対象外なんですね。

参考 最適使用推進ガイドライン チサゲンレクルユーセル(販売名:キムリア点滴静注)~B細胞性急性リンパ芽球性白血病及びびまん性大細胞型B細胞リンパ腫~[PDF]PMDA

キムリアの留意事項通知:レセプトに検査実施日、施設要件記載

キムリアは薬価基準掲載の留意事項通知と、最適使用推進ガイドラインの留意事項通知の2種類が出ています。
薬価基準の方は、レセプトに検査実施日を書くことと、算定時の注意点。
最適使用推進ガイドラインの方は、レセプトに施設要件を記載する旨が通知されています。

3.薬価基準の一部改正に伴う留意事項について
(4)キムリア点滴静注
1 本製品の効能、効果又は性能に関連する使用上の注意において「CD19抗原が陽性であることが確認された患者に使用すること」と記載されているため、診療報酬明細書の摘要欄に、CD19抗原が陽性であることを確認した検査の実施年月日について記載すること。
2 本製品の原料採取に伴い、患者から末梢血単核球を採取した場合は、診療報酬の算定方法(平成20年厚生労働省告示第59号)別表第一医科診療報酬点数表(以下「医科点数表」という。)区分番号「K921」造血幹細胞採取(一連につき)の2(末梢血幹細胞採取)のロ(自家移植の場合)を算定できるものであること。なお、本算定は原則として1回までとする。
3 本製品を患者に投与した場合は、医科点数表区分番号「K922」造血幹細胞移植の2(末梢血幹細胞移植)のロ(自家移植の場合)を算定できるものであること。なお、本算定は原則として1回までとする。

(1)キムリア点滴静注については、最適使用推進ガイドラインに従い、有効性及び安全 性に関する情報が十分蓄積するまでの間、本製品の恩恵を強く受けることが期待される患者に対して使用するとともに、副作用が発現した際に必要な対応をとることが可能な一定の要件を満たす医療機関で使用するよう十分留意すること。
(2)本製品の投与開始に当たっては、次に掲げる施設のうち、該当するものを診療報酬明細書の摘要欄に記載すること。(「施設要件ア」又は「施設要件イ」と記載)
ア 日本造血細胞移植学会が定める移植施設認定基準の全ての項目を満たす診療科(認定カテゴリー1)を有する施設
イ 認定カテゴリー1に準ずる診療科(認定基準のうち、移植コーディネーターの配置に係る基準以外を満たす診療科)を有する施設

 

資料に「令和」って書いてあると、「新年号始まったんだな~!」感が強くなりますね!
うちのPCちゃんも、そろそろ一発変換で「令和」を出してくれたらどうや…(例話と零和しか出ない)
という文面を書いてたら、令和出るようになった!PCちゃん優秀!

 

参考文献
1)中央社会保険医療協議会 総会(第414回) 医薬品の薬価収載等について, 厚生労働省, https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000212500_00025.html.
2)中央社会保険医療協議会 総会(第291回) 医薬品の薬価収載について, 厚生労働省, https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000074277.html.
3)2010.3.5 経過措置医薬品告示情報 (経過措置期限 2011.3.31)(211件), データインデックス(株), http://www.data-index.co.jp/news/?p=1001.
4)中央社会保険医療協議会 総会(第338回) 医薬品の薬価収載について, 厚生労働省, https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000141863.html.
5)薬価算定の基準について(通知), 保発0329第1号, https://www.mhlw.go.jp/content/000497468.pdf.
6)使用薬剤の薬価(薬価基準)の一部改正等について, 保医発0521第4号, 2019年5月21日.
7)チサゲンレクルユーセル製剤に係る最適使用推進ガイドラインの策定 に伴う留意事項について, 保医発0521第5号, 2019年5月21日.
更新履歴:
2019.5.15 公開
2019.5.22 留意事項通知の内容を追記
2019.5.24 キムリアの最適使用推進ガイドラインのリンクを、案から正式版に更新