カイプロリスの用法等が追加されました(2019年11月22日)

10月の第一・第二部会で審議・報告された品目が適応追加されたようなので、まとめました。

効能等追加品目の一覧

今回承認された効能等追加品目の一覧です。
会社名をクリックすると、各社のニュースリリースに飛びます。
(直PDFのリンクもありますので、ご注意ください。)

効能等追加品目

販売名(一般名) 会社名 効能等追加事項
エムプリシティ点滴静注用300mg・400mg
(エロツズマブ(遺伝子組換え))
BMS 追加用法:ポマリドミドおよびデキサメタゾンとの併用療法
カイプロリス点滴静注用10mg・40mg
(カルフィルゾミブ)
小野 追加用法:週1回投与(デキサメタゾン併用)
ソリリス点滴静注300mg
(エクリズマブ(遺伝子組換え))
アレクシオン 追加適応:視神経脊髄炎スペクトラム障害
テセントリク点滴静注1200mg
(アテゾリズマブ(遺伝子組換え))
中外 追加用法:他の抗悪性腫瘍剤との併用(化学療法未治療の扁平上皮癌を除く非小細胞肺癌)
トルツ皮下注80mgシリンジ・オートインジェクター
(イキセキズマブ(遺伝子組換え))
リリー 追加適応:強直性脊椎炎
ルセンティス硝子体内注射液10mg/mL
(ラニビズマブ(遺伝子組換え))
ノバルティス 追加適応:未熟児網膜症

 

留意事項通知・適正使用に関する通知が出ています

ソリリス:抗アクアポリン4抗体陽性・確定診断実施後のみ投与すること

2 効能・効果等の一部変更承認に伴う留意事項の一部改正について
(1)「使用薬剤の薬価(薬価基準)等の一部改正について」(平成22年6月11日付け保医発第0611号1号)の記の3の(4)に3及び4を加える。

(4)ソリリス点滴静注300mg
3 全身型重症筋無力症(免疫グロブリン大量静注療法又は血液浄化療法による症状の管理が困難な場合に限る)
本製剤の効能・効果に関連する使用上の注意において「本剤は、抗アセチルコリン受容体抗体陽性の患者に投与すること。」とされているので、抗アセチルコリン受容体抗体陽性の患者のみに投与すること。

4 視神経脊髄炎スペクトラム障害(視神経脊髄炎を含む)の再発予防
本製剤の効能・効果に関連する使用上の注意において「本剤は、抗アクアポリン4抗体陽性の患者に投与すること。」及び「視神経脊髄炎スペクトラム障害(視神経脊髄炎を含む)の患者に使用すること。」とされているので、抗アクアポリン4抗体陽性で、視神経脊髄炎スペクトラム障害の確定診断が行われた場合にのみ投与すること。

なお、個別の留意事項通知も出ています。
全例調査&髄膜炎菌感染症に注意、とのことです。4)

(前略)エクリズマブ(遺伝子組換え)製剤(販売名:ソリリス点滴静注 60mg)(以下「本剤」という。)については、本日、「視神経脊髄炎スペクトラム障害(視神経脊髄炎を含む)の再発予防」を効能又は効果として追加する、製造販売承認事項一部変更承認(以下「本承認」という。)したところですが、本剤については、髄膜炎菌感染症の発症のリスクが高まることが懸念されること等から、その使用に当たっては、特に下記の点につきご留意いただくよう貴管下の医療機関へのご周知方よろしくお願いします。

1.本剤については、本承認に際し、製造販売業者による全症例を対象とした製造販売後調査等の実施、適正な流通管理の実施等を承認条件として付しましたので、その実施にご協力をお願いします。
(略)

2.本剤の使用上の注意における、警告欄の記載は以下のとおりであり、髄膜炎菌感染症の発症のリスクには特段の留意をお願いします。
本剤の投与に伴う髄膜炎菌感染症の発症のリスクを低減させるための方策の一つとして、髄膜炎菌ワクチンの接種が有用であると考えられます。
特に視神経脊髄炎スペクトラム障害患者には、本剤投与前の治療により免疫抑制状態となっている懸念のある患者が存在すると考えられますので、このような懸念のある患者へ本剤を投与する場合は、必要に応じて髄膜炎菌に対するワクチンの追加接種を考慮してください。
その他の使用上の注意についても別添の添付文書を参照いただき、本剤を適正に使用していただくようお願いします。
(略)

テセントリク:最適使用推進ガイドライン改訂

テセントリクは、適応追加に伴い、最適使用推進ガイドラインが改訂されています。5), 6)
なお、新規格が11/26に発売されたので、その部分も改訂がかかってます。

参考 最適使用推進ガイドライン最新版PMDA

トルツ:20週以内に効果が出なかった場合、投与継続を考慮

トルツを強直性脊椎炎に使う場合、20週以内に治療反応が得られなかったら治療継続を慎重に再考する必要があります。3)
乾癬も20週なので一緒ですね。

2 効能・効果等の一部変更承認に伴う留意事項の一部改正について
(2)「療担規則及び薬担規則並びに療担基準に基づき厚生労働大臣が定める掲示事項等の一部改正等について」(平成29年11月30日付け保医発1130第3号)の記の3の3及び4を次のように改める。
3 掲示事項等告示及び特掲診療料の施設基準等の一部改正に伴う留意事項について
トルツ皮下注80mgオートインジェクター、同皮下注80mgシリンジ
(略)

4 強直性脊椎炎
本製剤の用法・用量に関連する使用上の注意に「20週以内に治療反応が得られない場合は、本剤の治療計画の継続を慎重に再考すること。」と記載されているので、使用に当たっては十分留意すること。

ルセンティス:開始前に重症度を考慮ほか

ルセンティスは軽症例と重症例に対する投与意義が3)

1 効能・効果等の一部変更承認に伴う留意事項について
ルセンティス硝子体内注射液10mg/mL
本製剤の用法及び用量に関連する使用上の注意に、未熟児網膜症の場合「自然治癒が期待できる軽症例及び外科的手術の適応となる重症例における本剤の投与意義が明確ではないことから、本剤による治療を開始するに際し、患者の状態や病変の位置、病期、病型による重症度等を考慮し、本剤投与の要否を判断すること。」及び「本剤投与後早期に治療反応が得られない場合は、他の治療への切替えを考慮すること。」と記載されているので、使用に当たっては十分留意すること。

審査報告書をチラ見した感じ、現在レーザー光凝固療法を実施している患者に対して新しい選択肢となるようです。7)

現行の標準治療であるレーザー光凝固療法は専門的技術を必要とし、患児の身体的負担も大きいため、当該療法と比較すると患児の身体的負担が小さい本剤はStage1~3のROPの治療選択肢の一つとして有用である。

しかし患者の身体的負担が軽減する一方で、再発割合が高いというデータもあるため、どっちの治療を選ぶのかはケースバイケースなのかなぁと思います。7)

7.R.2.3 ROPの再発割合について
申請者は、ROPの再発割合について次のように説明している。
申請者は、H2301試験及びH2301E1試験におけるROPの再発割合は表15のとおりであり、本剤0.2mg群と0.1mg群で同程度であったが、本剤群はレーザー群と比べて高かったことを説明した。
また申請者は、本剤の初回治療後、治療開始24週までに本剤の再治療を受けた被験者は、本剤0.2mg群及び本剤0.1mg群でそれぞれ21.9%(16/73例)及び22.4%(17/76例)である一方で、レーザー群で初回治療後に再度レーザー光凝固療法を受けた被験者は18.9%(14/74例)であり、本剤群はレーザー群と比べて再治療を実施した被験者の割合も高かったことを説明した。
この理由について申請者は、レーザー光凝固療法は、網膜周辺部を破壊するためROPの再発リスクを最小化できる治療法と考えられるため、本剤より再発割合が低かったと考えられる旨を説明した。
その上で申請者は、本剤は再治療を必要とする被験者が一定数いるものの、レーザー光凝固療法と異なり網膜は破壊されず、レーザー群に比較し不良な形態学的転帰が認められた被験者の割合は少ないため(表14)、長期的には視力予後が期待できると考えることを説明した。

機構は、以下のように考える。
長期的な視力予後への影響については、製造販売後に引き続き情報収集していく必要があるが、現時点まで得られている情報を基にした申請者の説明は理解可能である。
また、本剤におけるROPの再発割合については、医療従事者向けの資材等で適切に情報提供する必要がある。

 

ゾレアの適応追加はまだです

同じタイミングで部会を通過した、ゾレアのアレルギー性鼻炎の適応は、今回承認されませんでした。

参考 ノバルティス ゾレアの季節アレルギー性鼻炎の効追取得を留保 最適使用推進GL周知に力ミクスOnline

最適使用推進ガイドラインと留意事項通知の案は、中医協で了承されています。
にしても、レセプト記載事項がものすごい多い…。

参考 中央社会保険医療協議会 総会(第432回)資料厚生労働省

ゾレアの承認見送りと承認時期に関する考察(雑談?)は、新薬情報オンライン(@shinyaku_online)さんと、ぺんぎん薬剤師(@penguin_pharm)さんとのツイートをご参照ください。
(クリックしたら続きが見られるよ!)

 

参考文献
1)各社プレスリリース
2)各製品添付文書
3)医薬品医療機器等法上の効能・効果等の変更に伴う留意事項の一部改正等について, 保医発1122第1号, 令和元年11月22日.
4)エクリズマブ(遺伝子組換え)製剤の使用に当たっての留意事項について, 薬生薬審発1122第5号, 令和元年11月22日.
5)アテゾリズマブ(遺伝子組換え)製剤の最適使用推進ガイドライン(非小細胞肺癌)の一部改正について, 薬生薬審発1122第1号, 令和元年11月22日.
6)抗PD-L1抗体抗悪性腫瘍剤に係る最適使用推進ガイドラインの改訂に伴う留意事項の一部改正について, 保医発1122第2号, 令和元年11月22日.
7)各製品審査報告書