5月19日、新医薬品が薬価収載されました

5月11日に開催された中医協で、新医薬品の薬価収載が了承されました。5月18日に告示され、5月19日に薬価収載されました。

2021年5月19日収載の新医薬品

販売名(一般名) 規格単位 薬価
イスツリサ錠1mg・5mg
(オシロドロスタットリン酸塩)
1mg1錠
5mg1錠
3,335.90円
13,249.00円
ヴァイトラックビカプセル25mg・100mg・内用液20mg/mL
(ラロトレクチニブ硫酸塩)
25mg1カプセル
100mg1カプセル
2%1mL
4,042.50円
14,542.90円
2,908.60円
ペマジール錠4.5mg
(ペミガチニブ)
4.5mg1錠 25,631.20円
アリケイス吸入液590mg
(アミカシン硫酸塩)
590mg8.4mL1瓶 42,408.40円
ジクトルテープ75mg
(ジクロフェナクナトリウム)
75mg1枚 156.50円
イズカーゴ点滴静注用10mg
(パビナフスプ アルファ(遺伝子組換え))
10mg1瓶 251,030円
ケシンプタ皮下注20mgペン
(オファツムマブ(遺伝子組換え))
20mg0.4mL1キット 230,860円
ジョイクル関節注30mg
(ジクロフェナクエタルヒアルロン酸ナトリウム)
30mg3mL1筒 4,394円
ダラキューロ配合皮下注
(ダラツムマブ(遺伝子組換え)/ボルヒアルロニダーゼ アルファ(遺伝子組換え))
15mL1瓶 434,209円
ヌーイック静注用250・500・1000・2000・2500・3000・4000
(シモクトコグ アルファ(遺伝子組換え))
250国際単位1瓶(溶解液付)
500国際単位1瓶(溶解液付)
1,000国際単位1瓶(溶解液付)
2,000国際単位1瓶(溶解液付)
2,500国際単位1瓶(溶解液付)
3,000国際単位1瓶(溶解液付)
4,000国際単位1瓶(溶解液付)
22,543円
41,865円
77,750円
144,395円
176,239円
207,405円
268,164円
ポライビー点滴静注用30mg・140mg
(ポラツズマブ ベドチン(遺伝子組換え))
30mg1瓶
140mg1瓶
298,825円
1,364,330円
ユプリズナ点滴静注100mg
(イネビリズマブ(遺伝子組換え))
100mg10mL1瓶 3,495,304円
レミトロ点滴静注用300μg
(デニロイキン ジフチトクス(遺伝子組換え))
300μg1瓶 85,610円

留意事項通知が発出

薬価収載の告示と同日付で、留意事項通知が出ています。

ヴァイトラックビ:レセプトに検査実施日記載

3 薬価基準の一部改正に伴う留意事項について
(1)ヴァイトラックビカプセル25mg、同カプセル100mg及び同内用液20mg/mL
本製剤の効能又は効果に関連する注意において、「十分な経験を有する病理医又は検査施設における検査により、NTRK融合遺伝子陽性が確認された患者に投与すること。」とされているので、NTRK融合遺伝子陽性を確認した検査の実施年月日を診療報酬明細書に記載すること。
なお、当該検査を実施した月のみ実施年月日を記載すること。ただし、本剤の初回投与に当たっては、必ず実施年月日を記載すること。

ペマジール:レセプトに検査実施日記載

3 薬価基準の一部改正に伴う留意事項について
(2)ペマジール錠4.5mg
本製剤の効能又は効果に関連する注意において、「十分な経験を有する病理医又は検査施設により、FGFR2融合遺伝子が確認された患者に投与すること。」とされているので、FGFR2融合遺伝子を確認した検査の実施年月日を診療報酬明細書に記載すること。
なお、当該検査を実施した月のみ実施年月日を記載すること。ただし、本剤の初回投与に当たっては、必ず実施年月日を記載すること。

アリケイス:投与対象患者に留意して使用

3 薬価基準の一部改正に伴う留意事項について
(7)アリケイス吸入液590mg
本製剤の効能又は効果に関連する注意において、「本剤の適用は、肺MAC症に対する多剤併用療法による前治療において効果不十分な患者に限定すること。」とされ、用法及び用量に関連する注意において、「投与開始後12ヵ月以内に喀痰培養陰性化が得られない場合は、本剤の継続投与の必要性を慎重に再考すること。」とされているので、使用に当たっては十分留意すること。

イズカーゴ:投与対象患者に留意して使用

3 薬価基準の一部改正に伴う留意事項について
(3)イズカーゴ点滴静注用10mg
本製剤の効能又は効果に関連する注意において、「中枢神経系症状の改善又は進行の抑制が必要と考えられる患者に対して投与を検討すること。」とされているので、使用に当たっては十分留意すること。

ヌーイック:在宅自己投与可能

3 薬価基準の一部改正に伴う留意事項について
(5)ヌーイック静注用250、同500、同1000、同2000、同2500、同3000及び同4000
1. 本製剤は遺伝子組換え型血液凝固第Ⅷ因子製剤であり、本製剤の自己注射を行っている患者に対して指導管理を行った場合は、医科点数表区分番号「C101」在宅自己注射指導管理料を算定できるものであること。

2. 本製剤は針及び注入器付きの製品であるので、医科点数表区分番号「C101」在宅自己注射指導管理料を算定する場合、医科点数表区分番号「C151」注入器加算及び「C153」注入器用注射針加算は算定できないものであること。

ユプリズナ:確定診断後に投与

3 薬価基準の一部改正に伴う留意事項について
(4)ユプリズナ点滴静注100mg
本製剤の効能又は効果に関連する注意において、「視神経脊髄炎スペクトラム障害(視神経脊髄炎を含む)の患者に使用すること。」及び「抗AQP4抗体陽性の患者に投与すること。」とされているので、抗アクアポリン4抗体陽性で、視神経脊髄炎スペクトラム障害の確定診断が行われた場合にのみ投与すること。

 

薬価の決めかた

イスツリサ:原価計算方式で算定

イスツリサは、類似薬が無いため原価計算方式で算定されました。

オペプリムやメトピロンは類似薬じゃないんですねぇ。
難しい…。

ヴァイトラックビ:ロズリートレクと薬価合わせ【加算あり】

ヴァイトラックビは、同じNTRK阻害薬のロズリートレクの1日薬価に合わせて算定されました。
算定方式は類似薬効比較方式(I)。

ヴァイトラックビカプセル100mg:14,542.90円(1日薬価:29,085.80円)
ロズリートレクカプセル200mg:10,073.00円(1日薬価:30,219.00円)

小児の臨床試験をしていること、小児用製剤(内用液)があること等から、小児加算が5%つきました。
ロズリートレクは小児加算なかったんだね。

ペマジール:原価計算方式で算定【加算あり】

ペマジールは、類似薬が無いため原価計算方式で算定されました。

新規作用機序かつNCCNガイドラインで標準的治療に位置づけられていることから、有用性加算が35%。
希少疾病用医薬品なので市場性加算が10%つきました。
ただ加算係数が0.2なので、実質9%の加算ですね。

ちなみに、国内臨床試験の費用を計上して欲しいという不服意見が出ており、了承されました。
こんな不服意見、初めて見た。外資ならではですね。

アリケイス:原価計算方式で算定【加算あり】

アリケイスは、類似薬が無いため原価計算方式で算定されました。

欧米のガイドラインで標準的治療に位置づけられていることから、有用性加算が10%ついています。

ただ加算係数が0.2なので、実質2%の加算です。

ジクトル:原価計算方式で算定

ジクトルは、類似薬が無いため原価計算方式で算定されました。

…類似薬ないの!?
ボルタレンテープじゃないんだ。

ちなみに薬価算定組織の見解は以下です。
適応が一緒かってところが結構大事なんですね。

本剤と同様の効能、薬理作用を有する薬剤として、フルルビプロフェン、ケトプロフェンが存在しているが、これらは注射剤であり、本剤と同様の投与形態を有する既収載品はないことから、新薬算定最類似薬はないと判断した。

イズカーゴ:エラプレースと薬価合わせ【加算あり】

イズカーゴは、同じムコ多糖症2型に用いる酵素製剤のエラプレースの1日薬価に合わせて算定されました。
算定方式は類似薬効比較方式(I)。

イズカーゴ点滴静注用10mg:251,030円(1日薬価:143,445円)
エラプレース点滴静注液5mg:401,647円(1日薬価:95,630円)

イズカーゴは、中枢神経症状に有効性がある既存の脳室内投与製剤に比べて非常に低い侵襲性であるため、利便性が高いこと、中枢神経症状に対して標準治療法がないことから、有用性加算(I)が40%。
先駆審査指定制度対象品目なので、加算が10%つきました。

ケシンプタ:タイサブリと薬価合わせ

ケシンプタは、多発性硬化症に用いる注射剤であるタイサブリの1日薬価に合わせて算定されました。
算定方式は類似薬効比較方式(I)。

ケシンプタ皮下注20mgペン:230,860円(1日薬価:8,245円)
タイサブリ点滴静注300mg:230,858円(1日薬価:8,245円)

なお、ケシンプタは同一有効成分の注射剤「アーゼラ点滴静注液」が薬価収載されているため、「組成及び投与形態が同一で効能及び効果が異なる既収載品がある新薬の薬価算定の特例」が適用されました。

7 組成及び投与形態が同一で効能及び効果が異なる既収載品がある新薬の薬価算定
イ 算定の特例
第1部及び前部の規定に関わらず、組成及び投与形態が同一で効能及び効果が異なる既収載品がある新薬(主たる効能及び効果又は当該効能及び効果に係る用法及び用量に小児に係るものが明示的に含まれているものを除く。)については、類似薬がある場合であっても、原価計算方式によって算定される額を当該新薬の薬価とする。

ただし、当該原価計算方式によって算定される額が、新薬算定最類似薬を比較薬として、類似薬効比較方式(I)によって算定される額(共同開発その他の理由により、組成及び剤形が同一の新薬算定最類似薬が複数となる場合には、それぞれについて類似薬効比較方式(I)によって算定される額を当該新薬算定最類似薬の年間販売量で加重平均した額。また、補正加算の対象となる場合には当該額に補正加算を行った額)又は類似薬効比較方式(II)によって算定される額を超える場合には、当該類似薬効比較方式(I)又は類似薬効比較方式(II)によって算定される額を当該新薬の薬価とする。

おそらく原価計算方式での算定額が高額だったため、類似薬効比較方式で算定されたと思われます。

ジョイクル:原価計算方式で算定

ジョイクルは、類似薬が無いため原価計算方式で算定されました。

類薬候補にアルツがいたのですが、すでに後発品がある品目(G1/G2品目)なので、薬価算定の類似薬には選べませんでした。

ダラキューロ:ダラザレックスと薬価合わせ【加算あり】

ダラキューロは、同一有効成分のダラザレックスの1日薬価に合わせて算定されました。
算定方式は類似薬効比較方式(I)。

ダラキューロ配合皮下注:434,209円(1日薬価:15,507円)
ダラザレックス点滴静注400mg:187,970円(1日薬価:14,769円)

点滴静注から皮下注になって投与時間がかなり減ったため(3~7時間から3~5分へ短縮)、利便性が高い製品として、有用性加算(II)が5%つきました。
点滴全部これにしてくれ。

ヌーイック:類似薬の最低1日薬価と薬価合わせ

ヌーイックは、類薬がたくさんあるので、過去6年間の薬理作用類似薬の最低一日薬価に合わせて算定されました。
算定方式は類似薬効比較方式(II)。

ヌーイック静注用4000:268,164円(1日薬価:67,041円)
過去6年間の薬理作用類似薬の最低一日薬価:(1日薬価:67,041円)

収載1回スキップしたのはなんだったのか。

ポライビー:アドセトリスと薬価合わせ【加算あり】

ポライビーは、同じ悪性リンパ腫に用いる抗体薬物複合体(ADC)であるアドセトリスの1日薬価に合わせて算定されました。
算定方式は類似薬効比較方式(I)。

ポライビー点滴静注用30mg:298,825円(1日薬価:42,689円)
アドセトリス点滴静注用50mg:474,325円(1日薬価:40,656円)

同じ悪性リンパ腫ってもポライビーはB細胞リンパ腫でアドセトリスはホジキンリンパ腫&T細胞リンパ腫なので、全然違うだろって気がしますけどね。
そこはザックリなのか…類薬選定わからん…。

ユプリズナ:エンスプリングと薬価合わせ【加算あり】

ユプリズナは、同じ視神経脊髄炎スペクトラム障害治療薬のエンスプリングの1日薬価に合わせて算定されました。
算定方式は類似薬効比較方式(I)。

ユプリズナ点滴静注100mg:3,495,304円(1日薬価:57,457円)
エンスプリング皮下注120mgシリンジ:1,532,660円(1日薬価:54,721円)

エンスプリングが4週1回皮下注なのに対し、ユプリズナは6ヵ月1回静注なので、投与間隔が延びて注射回数も1/6に減って良いね!ってことで、有用性加算(Ⅱ)が5%ついてます。
個人的には10%あげたい。注射少ないのは正義…!

レミトロ:ポテリジオと薬価合わせ

レミトロは、同じT細胞性リンパ腫治療薬であるポテリジオ1日薬価に合わせて算定されました。
算定方式は類似薬効比較方式(I)。

レミトロ点滴静注用300μg:85,610円(1日薬価:30,575円)
ポテリジオ点滴静注20mg:171,219円(1日薬価:30,575円)

参考文献
1)中央社会保険医療協議会 総会(第479回) 医薬品の新規薬価収載について, 厚生労働省, https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000212500_00094.html.
2)薬価算定の基準について, 保医発0210第3号, 2021年2月10日.
3)使用薬剤の薬価(薬価基準)の一部改正等について, 保医発0518第3号, 2021年5月18日.