11月25日、新医薬品が薬価収載されました

11月17日に開催された中医協で、新医薬品の薬価収載が了承されました。
11月24日に告示され、11月25日に薬価収載されました。

2021年11月25日収載の新医薬品

販売名(一般名) 規格単位 薬価
アジルバ顆粒1%
(アジルサルタン)
1%1g 73.60円
エフメノカプセル100mg
(プロゲステロン)
100mg1カプセル 229.70円
サイバインコ錠50mg・100mg・200mg
(アブロシチニブ)
50mg1錠
100mg1錠
200mg1錠
2,678.40円
5,221.40円
7,832.30円
ビンマックカプセル61mg
(タファミジス)
61mg1カプセル 155,464.00円
リンヴォック錠30mg
(ウパダシチニブ水和物)
30mg1錠 7,459.40円
レットヴィモカプセル40mg・80mg
(セルペルカチニブ)
40mg1カプセル
80mg1カプセル
3,680.00円
6,984.50円
コセンティクス皮下注75mgシリンジ
(セクキヌマブ(遺伝子組換え))
75mg0.5mL1筒 40,144円
サフネロー点滴静注300mg
(アニフロルマブ(遺伝子組換え))
300mg2mL1瓶 96,068円
ソグルーヤ皮下注5mg・10mg
(ソマプシタン(遺伝子組換え))
5mg1.5mL1キット
10mg1.5mL1キット
26,107円
52,214円
ネクスビアザイム点滴静注用100mg
(アバルグルコシダーゼ アルファ(遺伝子組換え))
100mg1瓶 196,940円
パドセブ点滴静注用30mg
(エンホルツマブ ベドチン(遺伝子組換え))
30mg1瓶 99,609円
ライアットMIBG-I 131静注
(3-ヨードベンジルグアニジン(131I))
1.85GBq5mL1瓶 1,072,505円

 

薬価の決めかた

アジルバ顆粒1%:アジルバと薬価合わせ【加算あり】

アジルバ顆粒は、アジルバ錠の1日薬価に合わせて算定されました。
算定方式は類似薬効比較方式(I)。

アジルバ顆粒1%1g:73,60円(1日薬価:73.60円)
アジルバ錠20mg:140.20円(1日薬価:140.20円)

小児適応があって、かつアジルバ錠が小児加算の適応を受けていないため、小児加算が5%つきました。

エフメノ:原価計算方式で算定

エフメノは、更年期障害の適応を持つ類薬がないため、原価計算方式で算定されました。

黄体ホルモン製剤はいっぱいあるけど、更年期障害の適応がないんですよねぇ。

ちなみに外国平均価格は24,1円。やっすい(エフメノは229.70円)。
ただ、外国は10年以上前から発売されていますし、エフメノは開発要請品目なので、採算が取れるラインの薬価になるのは致し方ない気もします。
さすがに24円じゃ元取れなそう。

サイバインコ:リンヴォックと薬価合わせ【加算あり】

サイバインコは、同じアトピー性皮膚炎に適応をもつJAK阻害薬のリンヴォックの1日薬価に合わせて算定されました。
算定方式は類似薬効比較方式(I)。

サイバインコ錠100mg:5,221.40円(1日薬価:5,221.40円)
リンヴォック錠15mg:4,972.80円(1日薬価:4,972.80円)

小児に対する適応も有しているため、小児加算が5%つきました。

ビンマック:ビンダケルと薬価合わせ

ビンマックは、同じタファミジス製剤のビンダケルの1日薬価に合わせて算定されました。
算定方式は類似薬効比較方式(I)。

ビンマックカプセル61mg:155,464.00円(1日薬価:155,464.00円)
ビンダケルカプセル20mg:38,866.00円(1日薬価:155,464.00円)

1カプセル15万円かぁ~~。調剤する手が震えますね。

リンヴォック錠30mg:規格間調整

リンヴォックは、リンヴォック錠15mgとの規格間調整で算定されました。
妥当。

レットヴィモ:ザーコリと薬価合わせ【加算あり】

レットヴィモは、肺がんに適応を持つキナーゼ阻害薬のザーコリの1日薬価に合わせて算定されました。
算定方式は類似薬効比較方式(I)。

レットヴィモカプセル80mg;6,984.50円(1日薬価:27,938.00円)
ザーコリカプセル250mg:12,146.90円(1日薬価:24,293.80円)

新規作用機序であり、臨床上の有用性が一定程度評価されていることから、有用性加算(II)が5%。
希少疾病医薬品であることから、市場性加算が10%ついてます。

類似薬ザーコリかぁ!
変異の希少さ(レットヴィモはRET、ザーコリはALKとROS1)が決め手なのかな。
EGFRは市場規模が全然違いますし、ザーコリは妥当な気もする。わからん。

コセンティクス皮下注75mgシリンジ:規格間調整【加算あり】

コセンティクス皮下注75mgシリンジは、コセンティクス皮下注150mgシリンジおよびペンとの規格間調整で算定されました。

小児用剤形ということもあり、小児加算が5%ついてます。
これはアジルバ顆粒と一緒の理屈ですね。

サフネロー:ベンリスタと薬価合わせ

サフネローは、同じ全身性エリテマトーデス治療薬のベンリスタの1日薬価に合わせて算定されました。
算定方式は類似薬効比較方式(I)。

サフネロー点滴静注300mg:96,068円(1日薬価:3,431円)
ベンリスタ点滴静注用400mg:54,609円(1日薬価:3,431円)
※1日薬価は、ベンリスタの点滴静注製剤及び皮下注製剤の年間販売量で加重平均して算出

位置づけが同じような薬剤ですし、順当かなと思います。

ソグルーヤ:ノルディトロピン・ヒューマトロープ・グロウジェクトと薬価合わせ

ソグルーヤは、同じ成長ホルモン分泌不全症に用いる成長ホルモン製剤のノルディトロピン・ヒューマトロープ・グロウジェクトの1日薬価に合わせて算定されました。
算定方式は類似薬効比較方式(I)。

ソグルーヤ皮下注5mg:26,107円(1日薬価:1,865円)
ノルディトロピンフレックスプロ注:75,871円(1日薬価:2,018円)
ヒューマトロープ注射用12mg:60,097円(1日薬価:1,344円)
グロウジェクト皮下注12mg;79,760円(1日薬価:1,784円)
※各比較薬の1日薬価は、MDVデータにおける日本人症例に対するソマトロピン製剤の平均投与量に基づき算出。これらの年間販売量で加重平均して本剤の1日薬価を算出

類似薬多いな!!
順当に行けば同メーカーのノルディトロピンが比較薬だと思いますが、ノルディトロピン高いから他の薬剤も合わせて算定することになったんですかねぇ…。
薬価算定組織の議事録が待ち遠しいですね。

ネクスビアザイム:マイオザイムと薬価合わせ

ネクスビアザイムは、同じポンペ病治療薬のマイオザイムの1日薬価に合わせて算定されました。
算定方式は類似薬効比較方式(I)。

ネクスビアザイム点滴静注用100mg:196,940円(1日薬価:140,671円)
マイオザイム点滴静注用50mg:98,470円(1日薬価:140,671円)

後継品?なのに加算無いのが寂しいけれど、臨床試験の結果的に仕方ないよね~とも思う。

パドセブ:カドサイラと薬価合わせ【加算あり】

バドセブは、抗体薬物複合体製剤のカドサイラの1日薬価に合わせて算定されました。
算定方式は類似薬効比較方式(I)。

パドセブ点滴静注用30mg:99,609円(1日薬価:22,234円)
カドサイラ点滴静注用100mg:235,820円(1日薬価:20,213円)

パドセブの適応は尿路上皮がんで、カドサイラは乳がんなので、全然違うじゃん!と思いますが、これは薬価算定組織で「近傍のがん種で近いADCがございましたら、それを類似薬とすることは可能」と見解が出てましたね。(議事録公開ありがたい)

近傍のがん腫ってなんなんだ…固形がんってくくりなのかなぁ…。
さすがに血液がんは近傍とは言いがたいのから、固形がんのADCを持ってきたのかなと推測しています。

ライアットMIBG-I131:原価計算方式で算定【加算あり】

ライアットは類薬がないため、原価計算方式で算定されました。

ガイドラインで標準的治療として位置づけられていることから、有用性加算(II)が5%。
希少疾病用医薬品なので市場性加算が10%ついています。
加算係数は1.0。エライ!

雑感

薬価算定組織の議事録が公開されるようになりました!

今年度から薬価算定組織の議事録が公開されるようになりましたね。
わーいわーい。
ブログで勝手に妄想していた算定の経緯が白日の下に!

現時点で、5月収載と8月収載の2つの議事録が出ています。
(4月収載分はなし。薬価算定組織の開催日が3月以前だったのかしら…。)
新薬の算定だけでなく、市場拡大再算定の話も載っているので、薬価の付け方が気になる人はゼヒご一読を。

参考 中央社会保険医療協議会(中央社会保険医療協議会薬価算定組織)厚生労働省

抗体薬物複合体製剤の薬価算定

パドセブの項で言及していた類似薬の件ですが、ポライビーの薬価算定時に議論されていました。
以下、議事録を引用します。

ポライビー点滴静注用30mg、同140mg
(前略)
○薬価算定組織委員長
原価計算にするとちょっと高くなるからという感じなのでしょうか。事務局としてはいかがでしょう。
○事務局
事務局としては原価計算で、特に開示度が低いものについて、その妥当性はいかがなものかというところが強い指摘が今までもかなりございまして、できるだけ類似薬効比較方式でできるものは類似薬効比較方式でやるべきと考えておりまして、今回は類似薬効比較方式を採用した次第でございます。
○委員
これからADCの時代とは思っていて、今までは開発等はかなり大変だったと思うのですけれども、たくさん出てくるという中からすると、ADCをより類似薬と考えていくというのがいいのかなと思ったりして、自分としてはそういう意見だったのですけれども、どうなのでしょうね。皆さんの考えを知りたいなと思うのです。つまり、もうたくさん出てくるのだろうと思っていて、例えば、標的が違うとか、薬剤もいろいろなものが容易に開発されてくるのかなと思ったりするのですけれども、教えていただきたいなと思って。
○薬価算定組織委員長
何か方針みたいなものは、現時点ではあるのでしょうか。何か御意見あったらどうぞ。
○委員
私も□□□先生の御意見とすごく近くて、患者さんに説明するときには、基本的には小包爆弾みたいに、住所が分かっているところに抗がん剤を届ける医薬品が、抗体薬物複合体というところがありますので、抗体部分による免疫応答、ADCC活性がすごく期待されているというよりは、抗がん剤を届けるという要素がすごく強いと思うのですね。そういった意味では、ついている分子が変わることで、どんどん新しく原価計算方式、新規の薬というふうにするよりは、類似薬効方式のほうがすごくなじむなというのは実感でございます。
○薬価算定組織委員長
ありがとうございます。事務局、いかがでしょう。
○事務局
先生方、御意見、いろいろとありがとうございます。今はいろいろなADCを比較薬にできるような状態になってきておりますので、近傍のがん種で近いADCがございましたら、それを類似薬とすることは可能と考えています。原価計算方式というのは、開示度が低い場合に、金額の正確性、信頼性というものはなかなか難しい算定方式でございますので、それであれば、できるだけ類似薬効比較方式で進めさせていただければと、方針としては考えているところでございます。
以上です。

というわけで、今後は出来るだけ類似薬効比較方式で算定するようです。
確かに作用機序は違うけれど、作用の原理は一緒ですものね。
原価計算方式よりは類似薬効の方がなじむ気はします。

一方で、「近傍」の考え方は難しいなぁと思いました。
がんの性質だけでなく、患者数も加味してくれるのかなぁ…今後の議事録に期待。

参考文献
1)中央社会保険医療協議会 総会(第497回) 医薬品の新規薬価収載について, 厚生労働省, https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000212500_00120.html.
2)薬価算定の基準について, 保医発0210第3号, 2021年2月10日.
3)令和3年度第1回、第2回中央社会保険医療協議会薬価算定組織議事録, 厚生労働省, https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/newpage_21109.html.