4月20日、新医薬品が薬価収載されました

4月13日に開催された中医協で、新医薬品の薬価収載が了承されました。
4月19日に告示され、4月20日に薬価収載されました。

2022年4月20日収載の新医薬品

販売名(一般名) 規格単位 薬価
リフヌア錠45mg
(ゲーファピキサントクエン酸塩)
45mg1錠 203.20円
ルマケラス錠120mg
(ソトラシブ)
120mg1錠 4,204.30円
レイボー錠50mg・100mg
(ラスミジタンコハク酸塩)
50mg1錠
100mg1錠
324.70円
570.90円
ラピフォートワイプ2.5%
(グリコピロニウムトシル酸塩水和物)
2.5%2.5g1包 262.00円
ウィフガート点滴静注400mg
(エフガルチギモドアルファ(遺伝子組換え))
400mg20mL1瓶 421,455円
エヌジェンラ皮下注24mg・60mgペン
(ソムアトロゴン(遺伝子組換え))
24mg1.2mL1キット
60mg1.2mL1キット
43,032円
107,580円
ピヴラッツ点滴静注液150mg
(クラゾセンタンナトリウム)
150mg6mL1瓶 80,596円
ビンゼレックス皮下注160mgシリンジ・オートインジェクター
(ビメキズマブ(遺伝子組換え))
160mg1mL1キット
160mg1mL1筒
156,820円
156,587円

留意事項通知が発出

薬価収載の告示と同日付で、留意事項通知が出ています。

レイボー:投与対象患者に留意して使用

3 薬価基準の一部改正に伴う留意事項について
(1)レイボー錠50mg及び同錠100mg
本製剤の効能又は効果に関連する注意において「本剤は国際頭痛学会による片頭痛診断基準により「前兆のない片頭痛」あるいは「前兆のある片頭痛」と確定診断が行われた場合にのみ投与すること。」とされているので、使用に当たっては十分留意すること。

リフヌア:レセプトに難治性の慢性咳嗽であると判断した理由を記載

3 薬価基準の一部改正に伴う留意事項について
(2)リフヌア錠45mg
本製剤の効能又は効果に関連する注意において、「最新のガイドライン等を参考に、慢性咳嗽の原因となる病歴、職業、環境要因、臨床検査結果等を含めた包括的な診断に基づく十分な治療を行っても咳嗽が継続する場合に使用を考慮すること。」とされていることを踏まえ、投与開始に当たっては、難治性の慢性咳嗽であると判断した理由を診療報酬明細書の摘要欄に記載すること。

ルマケラス:レセプトに検査実施日を記載

3 薬価基準の一部改正に伴う留意事項について
(3)ルマケラス錠120mg
本製剤の効能又は効果に関連する注意において、「十分な経験を有する病理医又は検査施設における検査により、KRAS G12C変異陽性が確認された患者に投与すること。」とされているので、KRAS G12C変異陽性を確認した検査の実施年月日を診療報酬明細書の摘要欄に記載すること。
なお、当該検査を実施した月のみ実施年月日を記載すること。ただし、本製剤の初回投与に当たっては、必ず実施年月日を記載すること。

ピヴラッツ:投与対象患者に留意して使用

3 薬価基準の一部改正に伴う留意事項について
(4)ピヴラッツ点滴静注液150mg
本製剤の効能又は効果に関連する注意において、「くも膜下出血の重症度、血腫量、脳梗塞の範囲等の患者の状態を考慮して、本剤投与の要否を判断すること。」及び「破裂脳動脈瘤に対し、外科的治療又は血管内治療等により適切に止血が達成された患者に投与すること。」とされているので、使用に当たっては十分留意すること。

エヌジェンラ:在宅自己投与可能

3 薬価基準の一部改正に伴う留意事項について
(5)エヌジェンラ皮下注24mgペン及び同皮下注60mgペン
1 本製剤は、ヒト成長ホルモン製剤であり、本製剤の自己注射を行っている患者に対して指導管理を行った場合は、診療報酬の算定方法(平成20年厚生労働省告示第59号)別表第一医科診療報酬点数表(以下「医科点数表」という。)区分番号「C101」在宅自己注射指導管理料を算定できるものであること。

2 本製剤は、注入器一体型のキットであるので、医科点数表区分番号「C101」在宅自己注射指導管理料を算定する場合、医科点数表区分番号「C151」注入器加算は算定できないものであること。

ウィフガート:投与対象患者に留意して使用

3 薬価基準の一部改正に伴う留意事項について
(6)ウィフガート点滴静注400mg
本製剤の効能又は効果において、「ステロイド剤又はステロイド剤以外の免疫抑制剤が十分に奏効しない場合に限る」とされているので、使用に当たっては十分留意すること。

ラピフォート:レセプトに多汗症疾患重症度評価尺度(HDSS)を記載

3 薬価基準の一部改正に伴う留意事項について
(7)ラピフォートワイプ2.5%
本製剤の効能・効果は「原発性腋窩多汗症」であることから、原発性腋窩多汗症の確定診断が行われた場合にのみ投与すること。
また、本製剤の投与開始に当たっては、多汗症疾患重症度評価尺度(HDSS)を診療報酬明細書の摘要欄に記載すること。

薬価の決めかた

リフヌア錠:原価計算方式で算定

リフヌアは、難治性慢性咳嗽の適応を持つ類薬がないため、原価計算方式で算定されました。

難治性咳嗽に対する初めての薬剤であること、既存薬効果不十分な患者に有効性が示されていることから、新薬創出等加算品目の対象とするよう不服意見が出されました。
しかし、鎮咳作用を有する医薬品は既に存在すること、既存薬効果不十分な患者に有効性を示したとはいえないことから、当初案どおりとなりました。

確かに、添付文書を見てみると多少微妙な結果…。というか、プラセボが強すぎますね。
難治性なのにプラセボでこんなに効くんだ~とビックリしました。

ルマケラス錠:アルンブリグと薬価合わせ【加算あり】

ルマケラスは、同じ非小細胞肺がんのキナーゼ阻害薬であるアルンブリグ錠の1日薬価に合わせて算定されました。
算定方式は類似薬効比較方式(I)。

ルマケラス錠120mg:4,204.30円(1日薬価:33,634.40円)
アルンブリグ錠90mg:11,598.00円(1日薬価:23,196.00円)

KRAS G12C阻害作用を有する新規作用機序の医薬品であり、国内外のガイドラインで推奨される標準治療に位置付けられる薬剤であることから、有用性加算(I)が35%。
希少疾病医薬品であることから、市場性加算が10%ついてます。

とうとう出たKRAS阻害薬!ということで、承認時に結構ニュースになっていましたね。
45%の加算も納得です。

レイボー錠:レルパックスと薬価合わせ【加算あり】

レイボーは、同じ片頭痛治療薬のレルパックスの1日薬価に合わせて算定されました。
算定方式は類似薬効比較方式(I)。

レイボー錠100mg:570.90円(1日薬価:570.90円)
レルパックス錠20mg:543.70円(1日薬価:543.70円)

新規作用機序の医薬品であり、臨床上の有用性が一定程度評価されていることから、有用性加算(II)が5%つきました。

ちなみに米国の価格は1錠約8,692円。高い。

ラピフォートワイプ:エクロックと薬価合わせ

ラピフォートは、同じ抗コリン外用剤のエクロックの1日薬価に合わせて算定されました。
算定方式は類似薬効比較方式(I)。

ラピフォートワイプ2.5%2.5g1包:262.00円(1日薬価:262.00円)
エクロックゲル5%:242.60円(1日薬価:262.00円)

ウィフガート点滴静注:原価計算方式で算定【加算あり】

ウィフガートは、同様の薬理作用等を有する類薬がないため、原価計算方式で算定されました。

FcRn抗体という新規の標的分子を対象とした医薬品であり、臨床上の有用性を示したことから、有用性加算(I)が5%。
希少疾病医薬品であることから、市場性加算が10%ついてます。

なお、加算係数は0である。

IgGのリサイクルに関与するFc受容体に結合し、IgGの分解を促進するおくすりです。
個人的にはこのコンセプトが結構好きで、重症筋無力症だけでなく、他の(自己抗体が関与する)自己免疫疾患の症状軽減に役立つのでは…!?と期待しています。
類薬も開発されつつあるので、自己免疫疾患の治療向上に繋がると良いですよね。
これからの開発に大注目です。

エヌジェンラ皮下注:ソマトロピン3剤と薬価合わせ【加算あり】

エヌジェンラは、同じ成長ホルモン製剤であるソマトロピン3剤の1日薬価に合わせて算定されました。
算定方式は類似薬効比較方式(I)。

エヌジェンラ皮下注24mg:43,032円(1日薬価:3.381円)
ノルディトロピン フレックスプロ注10mg:70,620円(1日薬価:3,496円)
ヒューマトロープ注射用12mg:53,440円(1日薬価:2,227円)
グロウジェクト皮下注12mg:73,290円(1日薬価:3,054円)
※年間販売量で加重平均し、エヌジェンラの1日薬価を算出

小児の臨床試験を実施したため、小児加算が5%つきました。

ピヴラッツ点滴静注液:原価計算方式で算定【加算あり】

ピヴラッツは、同様の適応を持つ類薬がないため、原価計算方式で算定されました。

脳血管攣縮の適応を持つ薬剤には、エリル(ファスジル)やカタクロット/キサンボン(オザグレル)がありますが、薬価算定に使うにはちょいと昔の収載すぎました。

脳血管攣縮に関連したM/Mイベント(事象(Morbidity)と原因を問わない死亡(Mortality))の発現抑制作用が確認されたことから、有用性加算(II)が5%ついています。
なお、こちらも加算係数は0である。

ビンゼレックス皮下注:コセンティクスと薬価合わせ【加算あり】

ビンゼレックスは、同じ乾癬治療薬であるコセンティクスの1日薬価に合わせて算定されました。
算定方式は類似薬効比較方式(I)。

ビンゼレックス皮下注160mg1mL1キット:156,820円(1日薬価:5,601円)
ビンゼレックス皮下注160mg1mL1筒:156,587円(1日薬価:5,592円)
コセンティクス皮下注150mgペン:74,486円(1日薬価:5,320円)

既存薬との直接比較試験が実施されており、既存治療に対して有効性が示されたと考えられるため、有用性加算(II)が5%つきました。

個人的にはもっと加算つくと思っていたので(10%位?)、意外でした。
直接比較試験を実施してくれたのは、ありがたい限り。

 

1)中央社会保険医療協議会 総会(第519回) 医薬品の新規薬価収載について, 厚生労働省, https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000212500_00143.html.
2)使用薬剤の薬価(薬価基準)の一部改正等について, 保医発0419第1号, 令和4年4月19日.