まずは基本情報
販売名 | スキリージ皮下注75mgシリンジ0.83mL |
名前の由来 | 特になし |
一般名 | リサンキズマブ(遺伝子組換え) |
製造販売会社 | アッヴィ(同) |
薬効 | 抗IL-23p19抗体製剤 |
効能・効果 | 既存治療で効果不十分な下記疾患 尋常性乾癬,関節症性乾癬,膿疱性乾癬,乾癬性紅皮症 |
用法・用量 | 1回150mg 初回、4週後,以降12週間隔 皮下投与 患者の状態に応じて1回75mg投与可 |
乾癬ってこういう疾患
- 慢性の皮膚疾患
- 外見の変化などでQOLが著しく障害される
- 治療は外用療法、内服療法、光線療法、抗体療法の4つがある
乾癬は、慢性の皮膚疾患です。1)
90%は尋常性乾癬という病型で、鱗屑(りんせつ)という一見フケのように見える白い皮膚の粉や、紅斑(こうはん)という盛り上がった皮膚の赤みを生じます。1), 5)
原因は不明ですが、遺伝的な素因に環境因子(不規則な生活・ストレス・感染症など)が加わると発症すると言われています。5)
ちなみに感染症ではないので、他人に感染することはありません。5)
日本皮膚科学会の皮膚科Q&Aでも「決してうつりません」と、この点を強調しています。5)
ちょっと前に道端アンジェリカさん、最近ですとヒャダインさんが乾癬であることを公表して話題になりましたね。6), 7)
上記のお二人も仰っているように、乾癬は症状が皮膚に現れることが多いため、外見の変化や痒みなどによってQOLが著しく障害されます。8)
その障害の程度は、がんや心疾患、糖尿病と同等以上と言われています。8)
乾癬は未だ根治治療がありません。9)
しかし、治療することで30~70%の患者さんでは発疹が完全に消失しますし、長期にわたって発疹が出ない状態を続けられる人もいます。5)
治療は、外用療法、内服療法、光線療法、抗体療法の4つから、症状にあわせて選択します。5)
外用療法では、主にステロイドとビタミンD3の塗り薬を使います。10)
ステロイド外用薬は皮膚の炎症を抑えるため、ビタミンD3外用薬は皮膚が過剰に作られることを抑えるために用います。10)
一般的には、最初はステロイド外用薬とビタミンD3外用薬を併用し、炎症が治まったらビタミンD3外用薬単独に切替えることが多いかなと思います。10)
内服療法は飲み薬で乾癬の症状を抑える治療法。
光線療法は皮膚に紫外線をあてて過剰な免疫反応を抑える治療法です。10)
上記の治療で効果が不十分な場合は、抗体(生物学的製剤)療法を検討します。
生物学的製剤は点滴や注射で投与される薬剤で、乾癬に対して高い有効性を発揮します。8), 10)
一方で誰でも使えるわけでは無いこと、定期的な検査や重篤な副作用への対応が出来る体制が必要であることから、日本皮膚科学会が認めた病院やクリニックだけで処方可能です。8), 10), 11)
スキリージってこういうくすり
- 乾癬に使う生物学的製剤(抗IL-23p19抗体製剤)
- 12週に1回投与
スキリージは、乾癬に使う生物学的製剤です。
現在乾癬で使える生物学的製剤は下記7成分なので8)、スキリージは8つ目になります。
販売名(成分名) | 標的 | 投与間隔 |
レミケード (インフリキシマブ) *バイオシミラーあり |
TNFα | 0,2,6週、以後8週間隔 静注 |
ヒュミラ (アダリムマブ) |
TNFα | 0週、以後2週間隔 皮下注 (自己注射可) |
ステラーラ (ウステキヌマブ) |
IL-12/23p40 | 0,4週、以後12週間隔 皮下注 |
コセンティクス (セクキヌマブ) |
IL-17A | 0,1,2,3,4週、以後4週間隔 皮下注 (自己注射可) |
トルツ (イキセキズマブ) |
IL-17A | 0,2,4,6,8,10,12週、以後4週間隔 皮下注 (自己注射可) |
ルミセフ (ブロダルマブ) |
IL-17受容体A | 0,1,2週、以後2週間隔 皮下注 (自己注射可) |
トレムフィア (グセルクマブ) |
IL-23p19 | 0,4週、以後8週間隔 皮下注 |
スキリージはトレムフィアと同じ、IL-23p19に対する抗体製剤です。
IL-23はヘルパーT細胞の活性化などに関わるサイトカインで、乾癬患者の皮膚で過剰発現していることが報告されています。2)
スキリージは、IL-23に結合してその活性を中和し、乾癬に対して効果を発揮すると言われています。3)
投与間隔は0週,4週、以後12週に1回皮下注。3)
ステラーラと並んで、投与間隔が長めの製剤です。
投与間隔が長いので、多分自己注射はならないと思います。
基本的には1回150mg(2シリンジ)投与しますが、国内臨床試験で75mgでも良好な成績が得られたことから、患者の状態に応じて1回75mg投与も可能です。2), 3)
ちなみに75mg投与の方が効果の発現が遅れる傾向があるものの、投与28週以降の有効性は150mg投与と同程度だったようです。
既存薬と違う点は?
トレムフィアと違う点は?
- 投与間隔が長い
- 適応が狭い
スキリージとトレムフィアは、同じ抗IL-23p19抗体製剤です。
スキリージは12週間隔(3ヵ月に1回)、トレムフィアは8週間隔(2ヵ月に1回)で投与する製剤なので、スキリージの方が投与間隔が長いです。3), 12)
あと適応がちょっと狭いですね。
トレムフィアは掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)の適応も持っています。12)
掌蹠膿疱症は乾癬とはちょっと違いますが、膿疱性乾癬と臨床症状が似ており、欧米では局在型膿疱性乾癬に分類されることもあるそうです。13)
いまのところ違いはそれくらいかな…!
スキリージは日本で世界初承認、トレムフィアは2017年にアメリカで初承認だったんで、あんまりデータが出揃ってないです。
販売名 | スキリージ皮下注 | トレムフィア皮下注 |
効能・効果 | 既存治療で効果不十分な下記疾患 尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症 |
既存治療で効果不十分な下記疾患 尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症、掌蹠膿疱症 |
用法・用量 | 1回150mmg 0.4週、以後12週間隔で皮下注 患者の状態に応じて1回75mg投与可 |
1回100mg 0,4週、以後8週間隔で皮下注 |
包装 | 1シリンジ、2シリンジ | 1シリンジ |
参考:ヒュミラとステラーラとの直接比較試験結果を考える
スキリージは、ヒュミラ&ステラーラと実薬対照試験をしています。
で、対ヒュミラは主要評価項目で有意差あり。対ステラーラも副次評価項目ですが有意差ありという結果が出ています。3)
でも正直、位置づけがわからぬ…。
審査報告書には「位置づけは同等」「切替えは可能」位しか書かれてないんですよねぇ。3)
だいぶ慎重な記載。
その割にプレスリリースは「国内外の第Ⅲ相臨床試験において、スキリージ投与群は対照薬群(プラセボ群、ウステキヌマブ群、アダリムマブ群)と比較して、有意に高い皮膚症状(PASI90、 sPGA0/1)の改善率を達成」と強気の記載なのがモニョる。15)
プレスリリースに書くなら、審査報告書でもっと議論しよ!
今のところは一般的な新薬と同様に「既存薬で効果不十分なときの次の一手」という感じなのかなーと思います。
切替えデータがある分、ヒュミラ&ステラーラが効かなかった症例からの切替えはしやすいのかも…?
スキリージ対ヒュミラ
対ヒュミラの試験は、パートAとパートBに分かれています。
パートAは、スキリージ投与群(301例)とヒュミラ投与群(304例)の評価項目について、投与16週時に評価。
パートBは、パートAの評価時点でヒュミラ投与群を治療効果に基づいて3群に分け、44週時に評価を実施、少なくとも52週まで追跡調査をします。
ちなみに分け方は、
(1)ノンレスポンダー(<PASI 50):ヒュミラからスキリージに切替
(2)効果不十分(PASI 50~<PASI 90):ヒュミラとスキリージに無作為割付
(3)レスポンダー(PASI 90):ヒュミラを継続
です。
スキリージ投与群は、治療効果に関わらずスキリージを継続投与します。
海外第3相試験(M16-010:IMMvent試験) | |
主要評価項目: <パートA> ・投与16週時のPASI90達成率 ・投与16週時のsPGA0/1達成率 <パートB> ・再度無作為化割付されたすべての被験者での投与44週時におけるPASI 90達成率副次評価項目: <パートA> ・投与16週時のPASI75達成率 ・投与16週時のPASI100達成率 ・投与16週時のsPGA0 ・投与16週時のDLQI0/1 <パートB> 再度無作為化割付されたすべての被験者での投与44週時におけるPASI 100達成率 |
|
【主要評価項目】 投与16週時のPASI90達成率 |
有意差あり
スキリージ投与群(301例):72.4% |
【主要評価項目】 投与16週時のsPGA0/1達成率 |
有意差あり
スキリージ投与群(301例):83.7% |
【主要評価項目】 再度無作為化割付されたすべての被験者での投与44週時におけるPASI 90達成率 |
有意差あり
ヒュミラ→スキリージ投与群(53例):66.0% |
スキリージ対ステラーラ
こちらはステラーラとの比較が副次評価項目なんですよね。
なので、個人的には「そういう見解もあるのね~。」位の認識です。
N数もスキリージ:ステラーラ:プラセボが3:1:1だし、いわゆる直接比較試験っぽくはない気がする。
この辺、プロの見解が知りたいです。
国際共同第3相試験(M16-008:UltIMMa-1試験) 海外第3相試験(M15-995:UltIMMa-2試験) |
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主要評価項目: ・投与16週時のPASI90達成率 ・投与16週時のsPGA0/1達成率副次評価項目: プラセボとの比較 ・投与16週時のsPGA0達成率 ・投与16週時のPASI100達成率 ・投与16週時のDLQI0/1達成率 ・PSSの合計スコアが0点を達成した被験者の割合(PSS0達成率) ・投与16週時のPSSの合計スコアのベースライン時からの変化量(PSS change) ウステキヌマブとの比較 ・投与16週時及び52週時のPASI90達成率 ・投与16週時のsPGA0/1達成率 ・投与16週時及び52週時のPASI100達成率 ・投与16週時及び52週時のsPGA0達成率 ・投与12週時のPASI75及びsPGA0/1達成率 ・投与16週時のDLQI0/1達成率 |
|
【副次評価項目】 投与16週時のPASI90達成率 (M16-008:UltIMMa-1試験) |
有意差あり
スキリージ投与群(304例):75.3% |
【副次評価項目】 投与52週時のPASI90達成率 (M16-008:UltIMMa-1試験) |
有意差あり
スキリージ投与群(304例):81.9% |
注意しておきたいことは?
・重篤な感染症(重要な特定されたリスク)
・重篤な過敏症(重要な特定されたリスク)
・心血管系事象(重要な潜在的リスク)
・悪性腫瘍(重要な潜在的リスク)
・免疫原性(重要な潜在的リスク)
・好中球減少(重要な潜在的リスク)
トレムフィアと一緒ですね~。
乾癬に使う生物学的製剤は作用機序こそ様々ですが、全部免疫系を調節する薬剤なので注意点は大体一緒です。
注意すべき有害事象(RMP)
リスク | リスク最小化活動の内容 | |
重要な特定されたリスク | 重篤な感染症 | 添付文書(警告、禁忌、慎重投与、重要な基本的注意、重大な副作用)で注意喚起 医療関係者向け資材(適正使用ガイド)の作成と提供 納入前の確実な情報提供 |
重篤な過敏症 | 添付文書(重大な副作用)で注意喚起 適正使用ガイドの作成と提供 納入前の確実な情報提供 |
|
重要な潜在的リスク | 心血管系事象 | 適正使用ガイドの作成と提供 納入前の確実な情報提供 |
悪性腫瘍 | 添付文書(警告、重要な基本的注意)で注意喚起 適正使用ガイドの作成と提供 納入前の確実な情報提供 |
|
免疫原性 | 添付文書(その他の注意)で注意喚起 適正使用ガイドの作成と提供 納入前の確実な情報提供 |
|
好中球減少 | 適正使用ガイドの作成と提供 納入前の確実な情報提供 |
|
重要な不足情報 | なし | – |
重篤な感染症
これは乾癬に使う生物学的製剤全部に関わる有害事象ですね。
免疫調節薬は感染症発現リスクを上げることが知られているため4)、重要な特定されたリスクに設定されました。
なお、臨床試験での「因果関係を否定できない重篤な感染症」の発現割合は0.7%でした。4)
添付文書には、以下のように記載。
【添付文書記載事項】
警告(抜粋):
1.本剤は結核等の感染症を含む緊急時に十分に対応できる医療施設において,本剤についての十分な知識と乾癬治療の十分な知識・経験をもつ医師のもとで,本剤による治療の有益性が危険性を上回ると判断される患者のみに使用すること.
本剤は感染症のリスクを増大させる可能性があり,また結核の既往歴を有する患者では結核を活動化させる可能性がある.
また,本剤との関連性は明らかではないが,悪性腫瘍の発現が報告されている.
治療開始に先立ち,本剤が疾病を完治させる薬剤でないことも含め,本剤の有効性及び危険性を患者に十分説明し,患者が理解したことを確認した上で治療を開始すること.2. 重篤な感染症
ウイルス及び細菌等による重篤な感染症が報告されているため,十分な観察を行うなど感染症の発症に注意し,本剤投与後に感染症の徴候又は症状があらわれた場合には,速やかに担当医に連絡するよう患者を指導すること.禁忌(抜粋):
1.重篤な感染症の患者[症状を悪化させるおそれがある.]
2.活動性結核の患者[症状を悪化させるおそれがある.]慎重投与(抜粋):
1.感染症の患者又は感染症が疑われる患者[感染症が悪化するおそれがある.]
2.結核の既往歴を有する患者[結核を活動化させるおそれがあるため,胸部X線検査等を定期的に行うなど,結核症の発現に十分に注意すること.]重要な基本的注意(抜粋):
1.本剤は,感染のリスクを増大させる可能性がある.
そのため,本剤の投与に際しては,十分な観察を行い,感染症の発症や増悪に注意すること.
感染症の徴候又は症状があらわれた場合には,速やかに担当医に連絡するよう患者を指導すること.
また,重篤な感染症が発症した場合には,適切な処置を行い,感染症が消失するまで本剤を投与しないこと.2.本剤投与に先立って結核に関する十分な問診及び胸部X線検査に加えインターフェロンγ遊離試験又はツベルクリン反応検査を行い,適宜胸部CT検査等を行うことにより,結核感染の有無を確認すること.
結核の既往歴を有する場合及び結核感染が疑われる場合には,結核の診療経験がある医師に相談すること.
以下のいずれかの患者には,原則として抗結核薬を投与した上で,本剤を投与すること.
(1)胸部画像検査で陳旧性結核に合致するか推定される陰影を有する患者
(2)結核の治療歴(肺外結核を含む)を有する患者
(3)インターフェロンγ遊離試験やツベルクリン反応検査等の検査により,既感染が強く疑われる患者
(4)結核患者との濃厚接触歴を有する患者また,本剤投与中も,胸部X線検査等の適切な検査を定期的に行うなど結核症の発現には十分に注意し,結核を疑う症状(持続する咳,体重減少,発熱等)が発現した場合には速やかに担当医に連絡するよう患者を指導すること.
なお,結核の活動性が確認された場合は結核の治療を優先し,本剤を投与しないこと.3.本剤投与中は,生ワクチン接種による感染症発現のリスクを否定できないため,生ワクチン接種は行わないこと.
4.本剤と他の生物製剤の併用について安全性及び有効性は確立していないので併用を避けること.
また他の生物製剤から変更する場合は感染症の徴候について患者の状態を十分に観察すること.重大な副作用(抜粋):
1. 重篤な感染症(0.7%)
重篤な感染症(敗血症,骨髄炎,腎盂腎炎,細菌性髄膜炎等)があらわれることがあるので,観察を十分に行い,感染症が疑われた場合には適切な処置を行うこと.
重篤な過敏症
スキリージは抗体製剤のため4)、重篤な過敏症が重要な特定されたリスクに設定されました。
なお、臨床試験での「因果関係を否定できない重篤な過敏症」の発現割合は0.1%(1/1,228例)でした。4)
添付文書には、以下のように記載。
【添付文書記載事項】
重大な副作用(抜粋):
2. 重篤な過敏症(0.1%)
アナフィラキシー等の重篤な過敏症があらわれることがあるので,観察を十分に行い,異常が認められた場合には直ちに投与を中止し,適切な処置を行うこと.
心血管系事象
乾癬患者はもともと心血管系障害のリスク因子*の有病率が高いことが知られています。4)
*肥満、高血圧、糖尿病、高脂血症、喫煙etc
臨床試験での「因果関係を否定できない心血管系事象」の発現割合は0.1%でしたが、心血管系事象の発現には長期の観察が必要であること4)から、重要な潜在的リスクに設定されました。
悪性腫瘍
スキリージは免疫を調節する薬剤なので、悪性腫瘍の発現リスクが増加する可能性があります。
臨床試験での「因果関係を否定できない悪性腫瘍」の発現割合は0.1%であり、「スキリージを投与すると悪性腫瘍の発現リスクが増加する」というデータは得られていません。4)
しかし、悪性腫瘍の発現には長期の観察が必要であることから、スキリージと悪性腫瘍の関連を評価するのは現時点ではデータ不十分であるため4)、重要な潜在的リスクに設定されました。
添付文書には、以下のように記載。
【添付文書記載事項】
警告(抜粋):
1.本剤は結核等の感染症を含む緊急時に十分に対応できる医療施設において,本剤についての十分な知識と乾癬治療の十分な知識・経験をもつ医師のもとで,本剤による治療の有益性が危険性を上回ると判断される患者のみに使用すること.
本剤は感染症のリスクを増大させる可能性があり,また結核の既往歴を有する患者では結核を活動化させる可能性がある.
また,本剤との関連性は明らかではないが,悪性腫瘍の発現が報告されている.
治療開始に先立ち,本剤が疾病を完治させる薬剤でないことも含め,本剤の有効性及び危険性を患者に十分説明し,患者が理解したことを確認した上で治療を開始すること.重要な基本的注意(抜粋):
5.臨床試験において皮膚及び皮膚以外の悪性腫瘍の発現が報告されている.
本剤との因果関係は明確ではないが,悪性腫瘍の発現には注意すること.
免疫原性
臨床試験で、24.4%(263/1,079例)に抗リサンキズマブ抗体、13.9%(150/1,079例)に中和抗体が認められています。4)
臨床試験では抗体発現による有効性や安全性への明確な影響は認められませんでしたが、抗体が免疫反応の原因となる可能性があるため4)、重要な潜在的リスクに設定されました。
添付文書には、以下のように記載。
【添付文書記載事項】
その他の注意(抜粋):
1.日本人尋常性乾癬,膿疱性乾癬又は乾癬性紅皮症患者に本剤75mg又は150mgを0週目,4週目及びそれ以降12週毎に52週まで皮下投与したところ,それぞれ15/67例(22.4%)及び31/100例(31.0%)の患者に抗リサンキズマブ抗体が認められ,10/67例(14.9%)及び12/100例(12.0%)の患者に中和抗体が認められた.
海外及び国際共同臨床試験において尋常性乾癬患者を対象として,本剤150mgを0週目,4週目及びそれ以降12週毎に52週まで皮下投与したところ,263/1,079例(24.4%)の患者に抗リサンキズマブ抗体が認められ,150/1,079例(13.9%)の患者に中和抗体が認められた.
好中球減少
スキリージはIL-23を阻害するため、好中球活性化作用等を有するIL-17シグナル経路の阻害に関連する可能性が否定できないこと4)から、重要な潜在的リスクに設定されました。
なお、臨床試験での「因果関係を否定できない好中球減少」の発現割合は0.2%(2/1,228例)でした。4)
まとめ
現時点で、尋常性乾癬に使う生物学的製剤の世界的に確立された選択基準って無いんですよね。8)
一応、アメリカのガイドラインでは各生物学的製剤がほぼ同列。
欧州のガイドラインではヒュミラとコセンティクスが第一選択で、それ以外が第二選択になっているようです。
日本はほぼ同列なのかな…。
スキリージは、臨床試験結果的にはヒュミラやステラーラより良さそうですが、使用年数とエビデンスは断然少ないですからね。
当面はいまの生物学的製剤で効果不十分のときに使われるのかなぁ~と思っています。
といっても生物学的製剤は、皮膚科学会お墨付きの施設でしか使われないので、専門医の先生が症状や希望に沿って、しっかり考えて処方してくれるはずです。
一般薬剤師としては、早めにコンセンサスが得られて、ガイドラインが出ると良いなぁ~と思います。
乾癬、比較的新薬が多いメジャーな疾患な気がするのに、なぜガイドラインが無いのだ…。
2)審査報告書, PMDA, http://www.pmda.go.jp/drugs/2019/P20190329001/112130000_23100AMX00299_A100_1.pdf.
3)スキリージ皮下注75mgシリンジ0.83mL, 添付文書, インタビューフォーム, 新医薬品の使用上の注意の解説.
4)RMP, PMDA, http://www.pmda.go.jp/RMP/www/112130/f4f1ec12-358c-4011-929f-2c19df297d5d/112130_39994C9G1021_001RMP.pdf.
5)皮膚科Q&A 乾癬, 日本皮膚科学会, https://www.dermatol.or.jp/qa/qa14/q01.html.
6)[モデル 道端アンジェリカさん]乾癬(1)インスタ すっぴんの告白, 読みドクター, 2017年8月9日, https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20170804-OYTET50011/.
7)ヒャダインさん、乾癬の苦しみを告白 応援ソング配信, 朝日新聞デジタル, 2019年4月9日, https://www.asahi.com/articles/ASM453SDNM45UBQU006.html.
8)乾癬における生物学的製剤の使用ガイダンス(2018年版), 日本皮膚科学会, https://www.dermatol.or.jp/modules/news/index.php?content_id=593.
9)世界乾癬レポート2016, 日本乾癬患患者連合会, http://jpa1029.com/GlobalReportOnPsoriasis/GlobalReportOnPsoriasis.pdf.
10)乾癬.com, マルホ(株), https://www.maruho.co.jp/kanja/kansen/diagnosis/plan/plan01.html.
11)承認施設, 日本皮膚科学会, https://www.dermatol.or.jp/modules/biologics/index.php?content_id=4.
12)トレムフィア皮下注100mgシリンジ, 添付文書, インタビューフォーム, 新医薬品の使用上の注意の解説.
13)膿疱性乾癬(汎発型)(指定難病37), 難病情報センター, http://www.nanbyou.or.jp/entry/455.
14)ステラーラ皮下注45mgシリンジ, 添付文書, インタビューフォーム, 新医薬品の使用上の注意の解説.
15)アッヴィ、尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症の治療薬として、 「スキリージ」(リサンキズマブ)を新発売, アッヴィ(同), https://www.abbvie.co.jp/content/dam/abbvie-dotcom/jp/documents/press-release/2019_0524.pdf.