禁煙を助けたい薬剤師のための情報収集サイト

本日、5月31日は世界禁煙デーですね。
というわけで薬剤師が禁煙支援をするために、オススメの情報サイトをまとめてみました。

はじめに

5/31は世界禁煙デー!

5月31日は、世界禁煙デーです。
日本では平成元年から取り組みを開始し、今年で32回目。
今年は「2020年、受動喫煙のない社会を目指して~たばこの煙から子ども達をまもろう~」をテーマに、5/31~6/6の一週間を禁煙週間として啓発活動を展開するそうです。1)

2.趣旨
喫煙が健康に与える影響は大きい上、受動喫煙の危険性やニコチンの依存性を踏まえると、喫煙習慣は個人の嗜好にとどまらない健康問題であり、生活習慣病を予防する上で、たばこ対策は重要な課題になっている。
(中略)
今年度は、2019年7月に学校・病院・児童福祉施設等、行政機関が原則敷地内、2020年4月にそれ以外の施設等が原則屋内禁煙となることを控え、「2020年、受動喫煙のない社会を目指して~たばこの煙から子ども達をまもろう~」を禁煙週間のテーマとし、禁煙及び受動喫煙防止の普及啓発を積極的に行うものである。

参考 2019年世界禁煙デーについて厚生労働省

日本の喫煙状況(平成29年国民健康調査)

日本の喫煙者は、全体的に減少しています。
習慣的に喫煙している者は現在17.7%(男性29.4%、女性7.2%)です。2)
個人的には意外と多いな、という印象。
世界の喫煙率が2016年で約20%なので3)、突出して多いわけではないのですが…。

ただ、禁煙の意思は28.9%(男性26.1%、女性39.0%)の人があるそうなので、喫煙者の4人に1人位はタバコを止めたいと思っているようです。2)

 

読んでおくべきオススメマニュアル

病院薬剤師による禁煙支援に関する調査研究(2007年)

2007年の調査なのでちょっと古いんですけど、各マニュアルの記載内容の比較が書いてあるので最初に読むのをオススメします。

自分が知りたいコトがどのマニュアルに載っているかわかりますし、とりあえず表2だけでも見るべし。

参考 病院薬剤師による禁煙支援に関する調査研究(PDF)日本病院薬剤師会

禁煙支援マニュアル(2018年)

厚生労働省作成の公式マニュアル。全145ページ。
医療従事者が禁煙希望者に対してどういう声がけをすれば良いか、がメインかなと思います。
内容は知識編、実践編、資料編に分かれています。

知識編は、P.26-27あたりが講義のツカミや薬局内掲示に使えそうだと思う。

あとはP.39のニコチン離脱症状の持続期間の表も役に立ちそうです。
大体4週間耐えれば、なんとかなりそう…?

実践編は、ありとあらゆるシチュエーション&喫煙者に対する声がけが載っていて、ロールプレイングに便利そうです。
禁煙したい人だけでなく、禁煙を考えていない人への声がけ例もあるので、服薬指導やOTC販売の際にも役立つのでは無いでしょうか。

参考 禁煙支援マニュアル(第二版)増補改訂版厚生労働省

禁煙ガイドライン(2010年)

9学会合同で作成した禁煙ガイドライン。全85ページ。

*日本口腔衛生学会、日本口腔外科学会、日本公衆衛生学会、日本呼吸器学会、日本産科婦人科学会、日本循環器学会、日本小児科学会、日本心臓病学会、日本肺癌学会

見所は34ページから始まる各論。
さすが色々な学会が集まっているだけあって、疾患への影響の記載がとっても詳しいです。

作成日がちょっと古いので、これでサラッと内容を確認して、最新情報を他のガイドラインで補完するのが良さそう。

参考 循環器病ガイドラインシリーズ日本循環器学会

禁煙治療のための標準手順書(2014年)

4学会合同で作成した手順書。全53ページ。
保険診療で禁煙指導をする際に、どういう点に注意すべきかが載ってます。
クリニックでどういう指導が行われているのかを知るために役立ちそう。

*日本循環器学会、日本肺癌学会、日本癌学会、日本呼吸器学会

個人的にはP.19の「禁煙治療の概要説明資料」が、治療に関する値段がまとまってて説明しやすそうだな~と思いました。
ただ、費用は2014年時点のものなので、実際使う際には見直しが必要かも。

参考 禁煙治療のための標準手順書(第6版)の公開について日本呼吸器学会

禁煙医療のための基礎知識(2008年)

神奈川県内科医学会作成のパワーポイントです。
パワポなので、文章読むのがシンドイ人でも読みやすい。
しかも禁煙推進に使う場合は自由に使ってOKなのだ。ありがたい…!

個人的には、「3.指導用スライド.ppt」スライド24からの「喫煙とストレスの関連を明快に図解したスライドセット」がオススメです。
わかりやすい!しかもノートがあるから説明もしやすい!

なお、こちらも10年以上前の作成資料なので、使う場合は費用等の見直しが必要だと思います。

参考 禁煙医療神奈川県内科医学会

タバコQ&A(2013年)

日本医師会作成のQ&A。全32ページ。
これ個人的にスゴい好きです。
SNSでよく見る言い訳や陰謀論をズバズバ斬ってる感じが素晴らしい。
医師会の静かな怒りを感じる。

サクサク読めるので読んでみて~。

今年のテーマである「受動喫煙の防止」についてなら、「受動喫煙ファクトシート」がお役立ちです。ちょっと作成日が古いけど…。
文章が易しくて講義を聞いている感じで読めるので、固い文章がシンドイときにオススメです。

参考 資料集日本禁煙学会

 

参考サイト

e-ヘルスネット(厚生労働省)

厚生労働省の患者向け健康情報サイト。
基礎知識から知りたい人は、ここが一番信頼性高いサイトだと思います。

国のサイトなので、タバコ史や規制の現状、いまの禁煙目標などもまとまっています。
個人的にはタバコ史と、「禁煙開始からまだ間もない方へ《実行期編》」の「2. よかったこと探しをしよう!」(ポリアンナかな?)が勉強になりました。

参考 e-ヘルスネット 喫煙厚生労働省

日本呼吸器学会

患者さんに紹介するなら、「肺の寿命の延ばしかた ~肺は今が一番元気!~」のPDFがわかりやすくて良き。

参考 禁煙のすすめ日本呼吸器学会

日本肺癌学会

NCCNガイドライン(日本語訳版)とスライド集がオススメ。

NCCNって禁煙のガイドラインもあるんですね~。
アメリカの禁煙指導が気になる人は、読んでみても良いかも。

スライド集は、スライド70「喫煙と非喫煙 双子の皮膚の老化」とスライド102「ニコチン依存症のサル」がビジュアル的に衝撃大きめでした。

参考 喫煙問題に関するスライド集日本肺癌学会

 

禁煙指導に関する薬剤師の資格

ちょっと禁煙指導やってみたい!と思った方は、禁煙指導の資格を取ってみるのはいかがでしょうか。
もちろん資格が無くても指導は出来ますが、資格を持っているとより権威が増しますし、周りからも「禁煙指導なら●●さんが勉強してるから~。」という評価を得られると思います。

というわけで、関連する資格を2つほど紹介します。

禁煙指導薬剤師(各都道府県薬剤師会)

全県調べてはいませんが、大体ありそうでした。
なお名称と認定方法は、都道府県によって微妙に違います。

講義とちょっとした試験で認定されるようなので、ここから始めるのが良いかもです。
県によっては、県内の薬局一覧に「禁煙指導薬剤師のいる薬局」として登録してもらえるみたいです。

禁煙指導に対するやる気の表明のために取る資格、という印象です。

参考 禁煙支援薬剤師の認定東京都薬剤師会

禁煙サポーター/認定指導者/認定専門指導者(日本禁煙学会)

日本禁煙学会が認定している資格です。
禁煙サポーターは講習会等の受講で認定、指導者は試験を受けて認定されます。

お金はかかりますが、薬剤師なら専門・認定指導者を目指したいところ。
サポーターの認定にはお金払いたくないなぁと思ってしまった。

参考 認定制度の概略日本禁煙学会

webサイトにて、専門・認定指導者の一覧が見られます。
医師・看護師が多いですが、薬剤師もそこそこいました。

製薬企業の方もちらほらおりまして、ファイザーさんが多かったです。
さすがチャンピックスの会社。
卸は、四国のアスティスさんとよんやくさんがいらっしゃいました。

あとなんかANAの人も多かった。健保で禁煙プログラムを実施しているらしいので、その関係かしら…?

 

薬剤師の禁煙指導に対する医師の考えは?

そうは言っても、勝手に禁煙指導したらかかりつけ医に何か言われるのでは?と躊躇してしまう薬剤師さんもいらっしゃるのではないでしょうか。

そんな方の背中を押してくれるのが、こちらの日本禁煙学会の専門医&認定医200名(回答102名)へのアンケート調査です。

参考 禁煙支援における薬局薬剤師の役割に関する医師へのアンケート調査日本禁煙学会

これによると、薬局薬剤師は「喫煙者全員に禁煙を勧めるべき」と69.6%が回答。
「禁煙を勧めるべきでは無い」は0%でした。
よって、少なくとも禁煙専門医は、薬剤師も禁煙指導をすべきと考えていらっしゃる方が多いようです。

以下のとおり結構細部にわたってアンケートしてくださっているので、「具体的に何すれば良いかわからん。」という方は参考になるかと。
そうでなくとも「医師は薬剤師にこういう対応をして欲しいんだなぁ。」と思えるので、一読の価値ありです。

個人的には、受診勧奨と治療中の精神的フォローを期待されているように感じました。

表2 薬局薬剤師による禁煙の勧め
・どのような方に禁煙を勧めたらよいと思いますか?
・禁煙を勧める場合にどのようなメリットを説明すればよいと思いますか?

表3 市販の禁煙補助薬販売時に薬局薬剤師がすべき対応
・市販の禁煙補助薬での禁煙治療は、薬剤師はどのような患者に勧めるべきですか?
・市販の禁煙補助薬を販売する際に、薬剤師が確認すべき項目はどれですか?
・市販の禁煙補助薬による禁煙治療で、薬剤師はどのように治療効果を確認すべきですか?
・市販の禁煙補助薬による治療が失敗した方に対して、薬剤師はどのように対応すべきですか?

表4 禁煙治療において薬局薬剤師が行うべき受診勧奨
・どのような喫煙者に受診勧奨を行うべきだと思いますか?
・薬剤師が病院・診療所に紹介する場合、患者情報の提供方法はどのようにすべきですか?
・医師に情報提供をすべき項目は次のうちどれですか?

表5 禁煙治療において薬局薬剤師が行うべき継続的フォロー
・禁煙外来で治療中の患者のうち、禁煙を継続することができている患者に対して、薬剤師が行うべき継続的フォローとはどのようなものだと思いますか?
・禁煙外来で治療中の患者のうち、禁煙できていない患者に対して、薬剤師が行うべき継続的なフォローとはどのようなものだと思いますか?
・禁煙外来での12週間の治療を終え、禁煙を達成した患者に対して、薬剤師が行うべき継続的なフォローとはどのようなものだと思いますか?

表6 薬局薬剤師がより良い禁煙支援を行うための学習
・より良い禁煙支援を行うためには、どのような学習の機会があるべきですか?
・より良い禁煙支援を行うためには、何を学ぶべきですか?
・より良い禁煙支援を行うために、学会や薬剤師会などの認定を取得すべきですか?

 

結語:薬剤師が禁煙支援に取り組むべき理由

薬剤師法第1条

そもそも薬剤師は、薬剤師法第1条で「公衆衛生の向上・増進に寄与し、国民の健康な生活を確保する」のが職務です。
よって、多種多様な化学物質を含むタバコの害から国民を守るのは、薬剤師の務めだと考えています。

(薬剤師の任務)
第一条 薬剤師は、調剤、医薬品の供給その他薬事衛生をつかさどることによつて、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保するものとする。

日本薬剤師会の「禁煙運動宣言」

また、日本薬剤師会は平成15年に「禁煙運動宣言」、平成18年に「新・禁煙運動宣言」を行い、薬剤師が国民の健康を守る専門職として、喫煙防止に積極的に貢献するよう求めています。4)

禁煙運動宣言
1. 国民の禁煙支援に積極的に取り組みます。
2. 特に妊婦・未成年者への禁煙啓発活動を行います。
3. 薬剤師の禁煙を徹底します。
4. 薬局・薬店内の禁煙を徹底します。
5. 薬剤師会館の全館禁煙を徹底します。
6. 薬局・薬店ではたばこの販売を行いません。

6番…みんな守ってますかしら…?

日本病院薬剤師会の「禁煙運動宣言」

日本薬剤師会に続いて(?)、日本病院薬剤師会も平成19年に禁煙宣言をしております。5)

1. 薬剤師の禁煙を推進する。
2. 喫煙の健康に及ぼす悪影響について、正しい知識を国民に普及啓発する。
3. 受動喫煙による健康被害から非喫煙者を守る。
4. 禁煙希望者に対する禁煙の助言と支援をより一層充実させる。
5. 保健医療専門職として禁煙推進活動に積極的に参加し、主導的に行動する。
6. 病院・診療所における禁煙を推進する。
7. 薬学生に対して喫煙と健康及び禁煙支援についての教育を行う。

国際薬剤師・薬学連合の勧告

薬剤師が禁煙支援に取り組むというのは、何も日本だけではありません。
薬剤師の国際的な組織である「国際薬剤師・薬学連合」からは、「喫煙のない将来へ向けての薬剤師の役割」として、各薬剤師会と個々の薬剤師が取り組むべきことが勧告されています。6)

個々の薬剤師は:
* 確かな生涯教育に参加して喫煙、それに伴う危険性、禁煙に至る過程を習得し、禁煙に導くことができるよう知識と技術を習得する。
* 禁煙を希望する、あるいは喫煙による病気に悩んでいる個人やグループに対して積極的に禁煙に対しての行動を行うべきであり、地域社会で、あらゆる職種の人たちよる禁煙運動に参加するだけではなく、主導的に行動しなければならない。
* 喫煙の危険性を強調し、禁煙を呼びかけるマスコミのキャンペーンに参加するべきである。
* 自ら禁煙することにより範を示し、経験を披瀝することによって主導的に行動するべきである。また喫煙が薬剤の効果に影響することがあるので、喫煙者は薬歴に喫煙習慣のあることを明記するべきである。

来年に向けて、禁煙をオススメしてみては?

2020年から屋内禁煙が始まりますし、この機会に禁煙するのは悪くないと思うんですよね。
大きなお世話って思われるかもしれませんけど…。
禁煙したい人に方法を案内するのは、悪いことでは無いはず!

まずは地域の薬剤師会で講義を受けてみて、かかりつけの患者さんから禁煙をオススメしてみてはいかがでしょうか。

薬剤師の関わりで、一人でも多くの人が禁煙できると嬉しいです。

 

参考文献
1)2019年世界禁煙デーについて, 厚生労働省, https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000202210_00003.html.
2)平成29年「国民健康・栄養調査」の結果, 厚生労働省, https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000177189_00001.html.
3)世界でなお2割喫煙 年700万人死亡とWHO, 日本経済新聞, 2018年5月31日, https://www.nikkei.com/article/DGXMZO31215800R30C18A5CR8000/.
4)禁煙運動宣言, 日本薬剤師会, https://www.nichiyaku.or.jp/activities/non-smoking-movement/sengen.html.
5)日本病院薬剤師会の禁煙推進宣言について, 日本病院薬剤師会, https://www.jshp.or.jp/banner/kinen.html.
6)国際薬剤師・薬学連合(FIP)声明「喫煙のない将来へ向けての薬剤師の役割」, 日本薬剤師会, https://www.nichiyaku.or.jp/activities/non-smoking-movement/statement.html.

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