新薬雑感:ファセンラ皮下注

まずは基本情報

販売名 ファセンラ皮下注30mgシリンジ
名前の由来 好酸球を直接的に速やか、かつ完全に除去するというベンラリズマブ固有の特性から、「Fast (速い) 」と一般名「Benralizumab (ベンラリズマブ) 」を合わせて「Fasenra」とした。
一般名 ベンラリズマブ(遺伝子組換え)
会社名 アストラゼネカ(株)
薬効 抗IL-5受容体α抗体製剤
効能・効果 気管支喘息(既存治療によっても喘息症状をコントロールできない難治の患者に限る)
用法・用量 1回30mg 初回、4週後、8週後、以降8週間隔 皮下注

気管支喘息の分類って?

気管支喘息は子供のうちに発症したり大人になってから発症したり、きちんと治療していても寛解したりしなかったりと、さまざまな病型がある症候群であることが知られています。5)

そのため、イギリスやアメリカ、日本などで解析が行われ、さまざまな指標をもとにいくつかの病型に分類すること(フェノタイピング)が行われています。5),6)

重症喘息で重要なフェノタイプは、「アレルギー性喘息」と「好酸球性喘息」です。6)
IgEや好酸球数などのバイオマーカーを計測し、その結果によってゾレアやヌーカラなどの生物学的製剤の使用が検討されます。

ファセンラってこういうくすり

  • 国内初の抗IL-5受容体α抗体製剤
  • 通常、8週間に1回投与
  • 高用量吸入ステロイドやLABA等に上乗せして投与
  • 好酸球数が多い重症気管支喘息患者に使用

ファセンラは重症喘息に用いる抗体製剤で、初回導入後は8週間に1回投与します。3)

気管支喘息の治療は1~4の治療ステップに分かれており、ステップ1の低用量吸入ステロイド薬などから開始し、効果不十分な場合はステロイドの量を増やしたり、他の薬剤を足したりします。
ファセンラはステップ4で使用する薬剤で、高用量吸入ステロイドにLABAやロイコトリエン受容体拮抗薬を併用してもコントロールができない場合に、上乗せ投与します。3)

また、血中好酸球数が多いほど良く効く傾向があるため、患者の血中好酸球数を考慮して使用の要否を検討することとされています。3)

既存薬と違う点は?

ヌーカラと違う点は?

ファセンラはヌーカラと比べて…

  • 投与間隔が長い
  • 使いやすいシリンジ製剤
  • [注]小児適応がない

ヌーカラとファセンラは、ともにIL-5に作用する薬剤です。
ヌーカラが抗IL-5抗体で、ファセンラが抗IL-5受容体α抗体です。3),7)
ヌーカラがアバスチンなら、ファセンラがサイラムザって感じ(わかりづらい)。

ヌーカラと比較したファセンラの良い点は、投与間隔が長く、シリンジ製剤であるところです。

ヌーカラが4週間間隔なのに対し、ファセンラは導入が終われば8週間間隔の投与で済みます。3),7)
また、ヌーカラはバイアル製剤ですがファセンラはシリンジ製剤なので、調整の手間が無く医療者側が使いやすい製剤かと思います。

一方、ファセンラは成人の適応しかないため、ヌーカラのように小児(12歳以上)に使用することは、添付文書上できません。3),7)

 

ファセンラとヌーカラの有効性については、直接比較試験は見つけられませんでしたが、ファセンラの方が良く効く可能性があるようです。

ちょっと長いですが、日本アレルギー学会のファセンラ早期認可要望書から引用しますね。

(前略)しかしながら、好酸球の活性化には、IL-5だけではなく、他のサイトカインも関与しており、抗IL-5抗体によるIL-5の中和作用だけでは、気道の好酸球を完全に除去することが困難な症例が存在します。
現在、承認審査を受けておりますベンラリズマブは、抗IL-5受容体α鎖抗体であり、IL-5の中和作用だけではなく、ADCC(抗体依存性細胞傷害)活性も合わせもつことにより好酸球を直接除去する作用を有することから、気道の好酸球をほぼ完全に除去することが示されており、抗IL-5抗体でもコントロールできない重症喘息患者にとって緊急性の高い薬剤になると考えています。実際、当学会に対してベンラリズマブ治験参加医師より、既存治療薬では治療に難渋する症例や、ベンラリズマブでないとコントロールできない症例が存在し、早期の認可を求める要望が寄せられております。

参考 重症喘息をターゲットとした抗IL-5受容体α鎖抗体の早期認可に関する要望書[PDF]日本アレルギー学会

ADCCは、標的分子に抗体がくっつくことで、免疫細胞を呼び寄せて標的を直接攻撃してもらう作用のことです。

IL-5受容体は好酸球表面に存在しており、そこにファセンラがくっつくと、ADCC作用で免疫細胞に好酸球を直接攻撃させることができます。3)
この作用機序が、ヌーカラよりも効果が高い、といわれる理由かなと思います。

販売名
(成分名)
ファセンラ皮下注30mgシリンジ
(ベンラリズマブ(遺伝子組換え))
ヌーカラ皮下注用100mg
(メポリズマブ(遺伝子組換え))
薬効 抗IL-5受容体α抗体製剤 抗IL-5抗体製剤
用法(成人) 初回、4週後、8週後、
以降8週間ごと皮下注
4週間ごと皮下注
用法(小児) 適応なし 12歳以上の小児:4週間ごと皮下注
投与部位 上腕部、大腿部、腹部 上腕部、大腿部、腹部

ゾレアと違う点は?

  • 投与間隔が長い
  • 使いやすいシリンジ製剤
  • [注]小児適応がない
  • [注]作用機序が違う

ゾレアも重症喘息に使う薬剤で、ヌーカラと同様の違いがあります。
でも、それ以前に標的が違いますね。

ゾレアは抗IgE抗体なので、好塩基球や肥満細胞の活性化を抑制します。8)
ファセンラやヌーカラはIL-5に作用する薬剤なので、好酸球の活性化を抑制します。3),7)

この違いは、添付文書上では下記のように反映されています。

ファセンラ:
1. 高用量の吸入ステロイド薬とその他の長期管理薬を併用しても、全身性ステロイド薬の投与等が必要な喘息増悪をきたす患者に本剤を追加して投与すること。
2. 投与前の血中好酸球数が多いほど本剤の気管支喘息増悪発現に対する抑制効果が大きい傾向が認められている。また、データは限られているが、投与前の血中好酸球数が少ない患者では、十分な気管支喘息増悪抑制効果が得られない可能性がある。本剤の作用機序及び臨床試験で認められた投与前の血中好酸球数と有効性の関係を十分に理解し、患者の血中好酸球数を考慮した上で、適応患者の選択を行うこと。

ゾレア:
高用量の吸入ステロイド薬及び複数の喘息治療薬を併用しても症状が安定せず、通年性吸入抗原に対して陽性を示し、体重及び初回投与前血清中総IgE濃度が投与量換算表で定義される基準を満たす場合に本剤を追加して投与すること。
症状が安定しないとは、下記の症状のいずれかが改善しないことを示す。
成人の場合
・喘息に起因する明らかな呼吸機能の低下(FEV1.0が予測正常値に対し80%未満)
・毎日喘息症状が観察される
・週1回以上夜間症状が観察される
小児の場合
・毎日喘息症状が観察される
・週1回以上夜間症状が観察される
・週1回以上日常生活が障害される

販売名
(成分名)
ファセンラ皮下注30mgシリンジ
(ベンラリズマブ(遺伝子組換え))
ゾレア皮下注用75mg
(オマリズマブ(遺伝子組換え))
薬効 抗IL-5受容体α抗体製剤 抗IgE抗体
適応 気管支喘息(既存治療によっても喘息症状をコントロールできない難治の患者に限る) 気管支喘息(既存治療によっても喘息症状をコントロールできない難治の患者に限る)
特発性の慢性蕁麻疹(既存治療で効果不十分な患者に限る)
用法(成人)
(気管支喘息)
初回、4週後、8週後、以降8週間ごと皮下注 2週間または4週間ごと皮下注
用法(小児)
(気管支喘息)
適応なし 2週間または4週間ごと皮下注
(6歳未満の幼児に対する安全性は確立していない)

*投与量並びに投与間隔は、初回投与前の血清中総IgE濃度及び体重を基に、投与量換算表により設定し、投与量換算表に該当しない患者への投与は行わないこと

注意しておきたいことは?

注意
重篤な過敏症(重要な特定されたリスク)
重篤な感染症(重要な潜在的リスク)
寄生虫感染症(重要な潜在的リスク)
悪性腫瘍(重要な潜在的リスク)
免疫原性(重要な潜在的リスク)

注意すべき有害事象(RMP)

リスク リスク最小化活動の内容
重要な特定されたリスク 重篤な過敏症 添付文書(重要な基本的注意、重大な副作用)に記載して注意喚起
重要な潜在的リスク 重篤な感染症 添付文書(その他の副作用)に記載して注意喚起
寄生虫感染症 添付文書(重要な基本的注意)に記載して注意喚起
悪性腫瘍 なし
免疫原性 添付文書(その他の注意)に記載して注意喚起
重要な不足情報 なし

重篤な過敏症

臨床試験では過敏症による死亡例は発生していませんが、発生した場合に致死的な転帰を辿る可能性があることから、特定されたリスクに設定されています。4)
添付文書には、以下のように記載。3)

重要な基本的注意:
(2) 本剤の投与により過敏症反応(蕁麻疹、発疹、喉頭浮腫等)が発現する可能性がある。また、過敏症反応の発現が遅れて認められる場合がある。観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、直ちに適切な処置を行うこと。(「重大な副作用」の項参照)

臨床試験 重篤な過敏症の発現数2)
第3相試験 本剤8週1回投与群(822例):2例
プラセボ投与群(847例):2例

重篤な感染症

重篤な感染症は臨床試験で発現が確認されていますが、本剤との関連性は否定されています。4)

臨床試験 重篤な感染症の発現数2)
第3相試験 本剤8週1回投与群(822例):18例
プラセボ投与群(847例):19例

しかし、長期的にIL-5シグナル伝達や好酸球を抑制することで、どのように免疫系に影響するかが明確になっていないため、潜在的リスクに設定されています。4)

寄生虫感染症

好酸球は寄生虫感染に対する免疫に関与している可能性があるため、ファセンラの投与によって好酸球数が減少すると、寄生虫に感染しやくなったり、感染症が悪化したりする可能性があります。4)

ですので、既に寄生虫に感染している患者は、ファセンラ投与前に寄生虫の治療をおこなうよう注意喚起がされています。3)

ちなみに、寄生虫感染者は臨床試験からはじかれ(=除外基準に設定され)ていました。

悪性腫瘍

悪性腫瘍も臨床試験で発現が確認されていますが、本剤との関連性は否定されています。4)

臨床試験 悪性腫瘍の発現数2)
第3相試験 本剤8週1回投与群(822例):2例
本剤4週1回投与群(841例):3例
プラセボ投与群(847例):2例

しかし、腫瘍の増殖に好酸球が関与している可能性があることなどから、悪性腫瘍の発現リスク上昇の可能性が否定できないとして、潜在的リスクに挙げられました。4)

免疫原性

これは抗体に関する注意事項です。
第3相試験でファセンラ8週1回投与群の14.9%(122/820例)に抗ベンラリズマブ抗体が、12.0%(98/820例)に中和抗体が認められています。4)
このうち一部の患者では、血清中ベンラリズマブ濃度の低下や、減少した血中好酸球数の増加が認められていることから、潜在的リスクに挙げられています。4)

まとめ

本剤投与が有用な患者像

  • 重症好酸球性喘息(好酸球値が高い)患者
  • 4週に1回の通院がツラい、ヌーカラ投与中の患者
りんご
重症好酸球性喘息にはファセンラ!

安全性上色々考えなければいけない点はありますが、個人的には経口ステロイドとヌーカラとファセンラの3択だったら、最初にファセンラを選ぶかなーと思いました。
経口ステロイドの長期投与は副作用が悩ましいですし、抗体製剤の方が原因療法に近い気がします。

実際、吸入剤で症状が治まらず、経口ステロイドを使っている患者の場合は、先に生物学的製剤を使用することが推奨されています。6)

ファセンラの対象患者は、今現在経口ステロイドかヌーカラを使っていると思われます。
もし経口ステロイドを使っている場合は、好酸球数によってはファセンラの使用を検討しても良いかと考えました。

いまヌーカラを使っている人は、症状が安定しているなら、あえてファセンラに変更する必要はなさそうです。
ただヌーカラは4週1回投与なので、通院が大変な成人患者さんは、ファセンラに変える手もあるかと思います。
切り替え方法は良く分からなかったので、メーカーさんに聞いてください~。

類薬の投与を検討すべき患者像

  • 軽度~中等度気管支喘息患者
  • 吸入剤がきちんと吸えていない患者
  • 重症アレルギー性喘息(IgE値が高い)患者
みかん
重症アレルギー性喘息にはゾレア!

そもそも抗体製剤は、吸入剤じゃコントロールできないー!という場合に使う薬剤です。注射だしね。
よって、吸入剤の併用でコントロールができる患者や、コントロールできてないと思ったら実は全然くすり使ってなかったような患者の場合は、まず吸入剤をしっかり使ってもらうべきです。

吸入剤の吸い方は、こちらの記事にまとめたサイトをご参照ください。

吸入剤マスターになるためのオススメサイト3選

また、ファセンラは血中好酸球数のベースラインが300/μL未満の患者には、あまり効かないかもしれないという懸念が示されています。2)

ですので、血中のIgE濃度、好中球数、好酸球数などを測ってみて、結果(フェノタイプ)によってはゾレアや経口ステロイドを選択すべき場合もあるかと思います。

フェノタイプの特定については、GSKさんのWebサイトに「やってみよう!」のコーナーがあります。
そんなに難しくないので、ご興味ある方はぜひやってみてください。

参考 フェノタイプを特定するGSK(医療従事者向け)

他の薬剤師さんは、ファセンラのことどう思ってるの?

ファセンラについて、他の薬剤師さんが書かれているブログを紹介させていただきます。
全然見つけきれていない気がするので、もし記事書いてるよ!という方がいらっしゃいましたら、教えていただけると嬉しいです。
読みに行きます!

ファセンラ(ベンラリズマブ)の作用機序【気管支喘息】

 

参考文献
1)アストラゼネカ初の呼吸器領域の生物学的製剤「ファセンラ皮下注30mgシリンジ」が日本国内における製造販売承認を取得, アストラゼネカ(株), https://www.astrazeneca.co.jp/media/press-releases1/2018/2018011902.html.
2)審査報告書, PMDA, http://www.pmda.go.jp/drugs/2018/P20180216003/670227000_23000AMX00016_A100_1.pdf.
3)ファセンラ皮下注30mgシリンジ, 添付文書, インタビューフォーム.
4)RMP, PMDA, http://www.pmda.go.jp/files/000222660.pdf.
5)気管支喘息フェノタイプ, 日本内科学会雑誌 第102巻 第6号, 平成25年6月10日, https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/102/6/102_1404/_pdf.
6)重症喘息, GSK(株), https://www.healthgsk.jp/disease-info/asthma/isasa.html.

7)ヌーカラ皮下注用100mg, 添付文書, インタビューフォーム.
8)ゾレア皮下注用75mg・150mg, 添付文書, インタビューフォーム.
9)重症喘息をターゲットとした抗IL-5受容体α鎖抗体の早期認可に関する要望書, 日本アレルギー学会,
http://www.jsaweb.jp/common/fckeditor/editor/filemanager/connectors/php/transfer.php?file=/uid000009_796F75626F7573796F313030332E706466.